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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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盟友 ⑧

「キミたちの世界では、どういった伝達手段が有るんだい?」

「そうだな―――」

 “ムセン”とか、“デンワ”とか、“ネット”とか、チキュウ世界の“ツウシン”手段というものを、色々と聞いた。


 兎に角、遠く離れた、居場所(・・・)も(・)分からない(・・・・・)相手(・・)に(・)も(・)、直接、自分の声を届けることが出来るもの。

 建物内のように壁で遮られていても通り抜けて、早馬で数ヶ月、ドラゴンが飛んでも数日は掛かるような情報伝達を、一瞬で伝えることが出来るらしい。

 特に、ムセンが欲しいと、僕らの意見は一致した。


 ”デンキ”を用いた“デンパ”の原理や作り方については、“エンジン”よりも、さらに難解で、当たり前に存在していた便利な道具として当たり前に利用していた彼自身が、ほぼ原理を理解していないらしいので、彼が持っているムセンやデンワの一種である“スマホ”という実物の道具を見せて貰ったのだけど、僕も、さっぱり理解できなかった。


 彼のスマホはデンキが無くなって、もうじき使えなくなる、と、死にそうな顔で言う。

 デンキというものは、強さを調整しないと何にでも使えるわけではなく、どのみち、こちらの世界には、“キチキョク”というものが無いので使えないそうだ。

 さて、どうしたものかな。


 「居場所も分からない相手にも」という、これが特に難しいように思う。

 声なら、相手の居場所が分からなくても届くだろう。

 具体的な方法は横に置いておいて、声を「届ける」という目的だけに絞って、指針を考えたほうが良さそうだ。


 声を「運ぶ」と考えるなら、風術式でも良さそうに思えるけど、風術式は土術式の障壁で防御できるように、物質的障害物を越えられない。

 相手の居場所と障壁の位置が分かるなら、障壁を避けることは可能だろうけど、相手の居場所が分からない前提なのだから、使用条件が合わない。

 だとしたら、闇術式に絞って考えた方が良いかな?


 物質的な壁を越えるのが難しいなら「跳んで」しまえ、と編み出されたとされているのが、魔素的な目印と目印の間を繋いで跳ぶ空間跳躍術式だ。

 考え方としては、こちらのほうがムセンに近いのかもね。

 効果として「物質的境界を曖昧にさせる」と考えられている空間系術式は、一応、性質的に闇属性と似ている部分がある光属性でも発現はできるようだけど、本来、「空間に作用する」とされているのは闇術式なんだから。


 実際のところ、空間系術式は、その原理が解明されているとは言い難く、空間拡張術式も、空間接続術式も、偶然の産物だと言われている。

 だけど、現実として空間跳躍術式も空間拡張術式も闇属性だ。

 空間接続術式もまた闇属性だと考えるのが妥当だろう。


 事実、神教会が空間跳躍術式や空間拡張術式の構築に成功したと聞いたことはない。

 何の偶然か、神教会は光属性で「空間接続術式のようなもの」に至ってしまったと考えるのが自然だ。

 恐らくだけど、黒龍王がチキュウ世界に現れたときに使った術式が「正しい空間接続術式」なんだろうね。

 古くから有る概念で、「世界」とは、数え切れないほど存在するものだとされている。

 黒龍王は「世界」と「世界」を隔てる”壁”を繋いだんだと思う。


 僕も黒龍王と話してみたいな。

 数ある「世界」の中からチキュウ世界を特定した方法も知りたい。

 どうやって術式を構築したのかは分からないけど、黒龍王は数千年を生きている龍種だからね。

 闇属性に長けているとも聞くし、かの龍王だからこそ構築できたと考えた方が説得力がある。

 数千年の昔に神教会が構築に成功した召喚術式は「欠陥のある空間接続術式の出来損ない」だと僕らは考えているけど、情報の出所が定かではないし、術式の詳細も秘匿されていて分からない。


 ただ、神教会の術式は黒龍王が使った術式のように双方向のものではないのは確かだ。

 また、特定の狙った人間をこちら側へ引き込んでくるような精密なものでもないのだろう。

 無理やり開いた落とし穴に、たまたま落ちてしまった不運な人間が「勇者」だと教えると、テツは「ふーん」と、興味無さそうな返事をした。

 まあ、勇者の話はムセンには繋がらないから、彼が興味を示さないのも当然か。

 彼が目指しているように、黒龍王の「完成された空間接続術式」で帰るのが最も確実だしね。


 試作品棚へと視線を遣る。

 前に作った魔法道具は、空間系の効果を期待した術式には、しなかったな。

 そうしなかった理由は、空間系術式の魔素効率の悪さだった。

 容易に入手できる弱い魔石しか入手できなかったから、使用者の自前の魔素を使って少ない負担で術式を作動させるように工夫したんだけど、ふんだんに強い魔石を使える状況なら、僕は、どう術式を組む?

 空間系術式なら、声を「届ける」ことが出来ないかな。


 あのときは、光術式を使ったんだったね。

 狼煙は火を使うから、森に隠れ住んでいる僕らは森への延焼を恐れて使うのを躊躇(ためら)うし、木々に遮られて煙が見えなかったりするので、光術式を使って合図する魔法道具なら、と、以前に作ったんだけど、思ったよりも使えなかった。

 試作品棚へ魔法道具を取りに椅子から腰を上げる。


盟友⑧です。


空間系!!

次回、苦手分野!?

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