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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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郷の掟 ①

「どうか、付いて来ていただけますかな」

「お、お待ちください!」

 爺さんは俺に付いて来いと言うが、周りの連中は反対だの危険だのと言い募る。

 見ず知らずの相手に、事情も聞かずに弓矢を向ける奴らと、どっちが危険なんだ? と、言いたいところだが、日本の常識を押し付けるもんじゃねえな。


 こっちの世界には、こっちの世界の常識が有るんだろう。

 俺の方が異邦人である以上、俺の方がこっちの世界の常識に馴染むべきだ。

 異邦人どころか異世界人だけどな。

 無意味に敵を増やしたところでプラス要素なんて何も無い。


「お恥ずかしいところお見せしましたな」

「いいや。構わねえよ。気にしないでくれ」

 若造どもとの論戦を制した爺さんが、丁寧に頭を下げる。

 ジャパニーズサラリーマン的な習性で頭を下げ返す。


 顎を引いて、スッと背筋が伸びた、綺麗なお辞儀だ。

 昔の仲間に自衛隊員が居るけど、爺さんの礼も同じぐらい綺麗で、しかも自然体だった。

 仲間の礼はピシッとした軍人の礼だが、爺さんの礼は軍人と言うよりも武道をやっている人のような礼だな。


「参りましょうか」

「ああ。分かった」

 いきなり乱暴を働こうとした連中に対して俺は警戒を解いていないので、引き続き女の子を俺の傍に置き、怪我人も布団団子ごと俺が背負う。

 爺さんは大丈夫そうでも、他の連中が女の子と怪我人に暴力的手段で害を及ぼす危険が有ると疑ったからだ。


 敵意を向けてきている連中は、怪我人よりも年上か同じぐらいの年齢に見える。

 相変わらず、俺だけじゃなく女の子にも敵意を向けている。

 表面上を取り繕っても危険物センサーは騙せねえぞ?

 コイツら。この子も怪我人も身内じゃねえのかよ。

 俺に対してだけ攻撃的に当たるなら理解できるが、何で身内に攻撃的な態度を取るんだ?


 警戒する様子も無く、さっさと俺に背を向けた爺さんの後に付いて、俺たちを遠巻きに警戒し続けるエルフっぽい連中を引き連れ、しばらく森の中を歩く。

 林立する巨大な木々の幹が間引かれたように、いくらか疎らに見える辺りが見えてきたと思えば、その木々の足元を丸太組みの防壁が囲んでいるようだった。


「おお・・・」

 現代日本の町並みを見慣れている俺からすれば原始的に見えるが、それでも人の営みだ。

 1週間以上、原生林を彷徨った末に、人類文明に生還すれば、それなりに感動は有る。

 防壁の上から弓を手に覗く連中が俺の姿を見て驚いている様子が見えて、それでも爺さんの合図で門扉が開き始める。


 外から見ると、どこに門扉が有るのか分かり辛かったが、よくよく見ると、門扉の足元に僅かな隙間が有った。

 やっぱり俺の観察力不足だな。

 ギギギと重いものが擦れ合う軋みを上げて内開きに観音開きの門扉が開いていく。

 数人が擦れ違えるほどの隙間が開いたところで爺さんが歩みを再開し、小さな集落に入った。


「珍しいですかな?」

「え? ああ。うん」

 失礼かと思って、あんまりキョロキョロと見回さないように気を付けていたつもりだったんだが、爺さんに指摘された。

 気付かれていたと思うと、小っ恥ずかしいな。

 もしかすると,俺の遠慮を取り除くために、爺さんは指摘してくれたのか。


 折角の気遣いを有り難く受け取らせて貰って、集落を見回す。

 先ず最初に目を引くのは、森の中と同じように集落の中まで巨木の幹が林立しているのに、巨木そのものや20メートルぐらいの高さまでの枝葉が間引かれていることで、木陰程度の明るさを確保していることだ。

 恐らくだが、上空から見下ろしても、この場所に集落が存在することに気付かないだろう。


 つまり、人目を憚っている、あるいは、ドラゴンなんかの生物の目に留まらないようにしているってことだ。

 結界なんてものを張ってまで他者の目に留まらないようにしているのだから、何らかの事情が有るのだろう。

 俺に対する過剰とも言える警戒と敵意は、・・・関係してるんだろうなあ。


 地上へと視線を下ろせば、それなりに広い集落の中には木々の間に畑も耕されて、何らかの作物が植えられている。

 そして、なんとも不思議な感じの建築様式だな。

 手作り感に溢れる平屋の木造家屋が、広大な森の中で身を寄せ合うように、30~40軒ほど建っているように見える。


 ただし、家屋の特徴としては、凝った彫刻が施されている板壁の掘っ立て小屋の屋根を巨木の太い根が跨いでいて、半ば樹木と一体化している。

 よくよく目を凝らせば、一体化しすぎて幹に飲み込まれている小屋が、他にも結構有るようにも見える。

 人が住まなくなって自然に飲み込まれた家屋が点在する、限界集落みたいな雰囲気だな。


 なんか、ちぐはぐなんだよなあ。

 樹木の根が建物の補強材の役目を果たしているようで、頑丈そうではあるんだが、頑丈そうに見えるのは木の根のほうだけで、平屋家屋それ自体は造りが粗く、建築技術? 建材加工技術? が拙いように思う。

 でも、繊細で緻密な彫刻の技術は、俺みたいな芸術方面に疎い門外漢の目にも優れているように見える。


 そんでな。

 板壁の板の隙間から、こっちを覗いている目がたまに見えるんだよ。

 その隙間だらけの家、隙間風で寒くね?

 住宅も手がけることの有る建設会社の社員としては、すごく気になる。



郷の掟①です。


始まりの村!?

次回、文明人!!

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