犬祭りとファンタジー ④
取りあえず、子供の頭をもう一度ポンポンして、布団団子と蛇キノコ棒さんを拾いに行く。
止血帯を作るのに、毛布さんをドラゴン包丁で裂いてみようかと考えたんだよ。
戦争映画でよく見るように、グッと圧迫して止血を試みるしか打てる手がねえ。
1枚の布団を広げ、怪我人を寝かせる。
子供―――、男の子かな? が、心配そうに怪我人の枕元に座る。
7~8歳ぐらい? ヒナよりも少しだけ年少かもな。
あちこち、泥や小さな傷に滲んだ血で汚れているが、この子も綺麗な顔立ちをしている。
怪我人の顔を覗き込む宝石のように透き通った緑色の瞳が、不安そうに揺れている。
偉いなあ。敷物に上がるのに俺が靴を脱いでいたら、ちゃんと見よう見まねで編み上げブーツっぽい靴を脱いで揃えている。
しっかりとした躾教育を受けていることが察せられる。
別の毛布さんを広げて、ドラゴン包丁で5センチメートル幅の帯状に裂いてゆく。
上腕部の応急止血は、腕の付け根をギュッとキツめに縛る。
傷口の部分は、止血部分とは別に少しだけ強めに縛っておく。
感染症を起こさないことを祈るばかりだ。
脇腹のほうが難しいな。
サラシみたいにキツく巻くしか処置のしようが無いんだが、出血が酷くてマシにならないようなら、縫うか、傷口を焼くか・・・。
衛生面にも問題があり過ぎるし、手持ちの材料じゃあ、マジでどうしようもないぞ。
仕方ない。サラシ方式だ。
20センチメートル幅ほどで裂いた毛布さんで、ぎゅっ、ぎゅっ、と腹を締める。
意識は戻らないが、小さく呻き声を上げるってことは生きてる証拠だ。がんばれ。
お前さんが死んだら、きっと、この子が泣く。
死ぬんじゃねえぞ。
不思議ちゃんパワーで強壮剤の代わりにならないかな? と、怪我人の口に犬血を流し込んだら、子供がギョッとした顔をしていた。
血を飲ませた怪我人は、飲ませた瞬間に、一度、ビクリと身体を震わせたが、少し浅いながらも呼吸は安定しているように思う。
子供のほうには、疲労はしている様子だが目立った怪我は無さそうだったので、焚き火を熾して血生臭い犬肉―――、は、さすがにどうかと思ったので蛇肉ロースト串を与えておく。
ちょっと生臭いだけだから、蛇肉で大丈夫だろ。
ドラゴン棒を探しついでに、飛んで行った犬っコロの死骸も回収しておいた。
他の犬っコロと併せて、いつもの通り血を啜って、皮を剥いで心臓を摘出。
毛布の枚数が、半端ない量になってきたな。
7匹分の犬石を抜いていたら、ふと視線を感じたので、そっちを見ると子供が真っ青な顔で俺を見てドン引きしていた。
うーん。やっぱり子供にはショッキングな光景だったか。
仕方ないよなあ。
必要に迫られていなかったら、俺だって近付きたくないわー。
スプラッタな死体から1匹ずつ、犬っコロの血ィ飲んでるんだもんなー。
犬っコロ葬の儀式は終わったので、怪我人のところへと戻った。
露骨に怯えられると、ちょっと傷付くんだけど。
腕の付け根の止血帯を、一旦、緩める。
20~30分間に数分間ほど緩めてやらないと、血は止まっても細胞が壊死する。
長時間、正座すると、足が痺れるだろ? アレが進むと足が壊死して腐り落ちるんだよ。
緩めれば出血するが分かっていても、たまに細胞組織に呼吸をさせてやる必要がある。
さて、コミュニケーションに挑んでみるか。
共通で意味が通じる単語が無いのでは、ボディランゲージだけで意思疎通するしかない。
ポンと一拍、手を打って、子供の視線を俺へと向けさせる。
「この人〔怪我人を指さす〕」
子供が、俺の顔と怪我人の顔を見比べる。
「このままじゃあ〔両手で脇腹を押さえる〕」
ぐぐっと、子供の首が20度ぐらい傾く。
この世界でも、意味が分からんときには首を傾げるらしい。
「死ぬ〔自分の首を絞めて白目を剥く〕」
ぐぐぐっと、子供の首がさらに30度ぐらい傾く。
いや! 分かるだろう!?
分かんね? そう・・・。
「きみの家、どこ? 〔子供を指さして、屋根のポーズ〕」
ぐぐぐぐっと、子供の首がさらに40度ぐらい傾く。
何とかマンのナハっナハっナハっ、じゃないぞ!?
いつの時代だよ!
「家だよ! キミらの家! このままだと、この人、危ないから! 〔屋根のポーズを連打〕」
キミ、首の関節、柔らかいねえ。
1時間ぐらい頑張ったが、無理だった。
伝わんねえ・・・。
犬祭り④です。
伝言ゲーム!?
次回、同行者!




