大名行列と、おじいちゃんとおばあちゃん ⑤
「本人は、自宅で父親の帰りを待ちたいと、言っています」
しかしですねぇ、と、おじさんが、困った子を見る目でわたしを見ました。
ハルおじさんの目が、ちょっとだけ細くなりましたが、おじさんは気づいていないようです。
「父子家庭の父親が、子供を残して失踪。よくある話でして、自殺するケースも―――」
おじさんが、そう言ったしゅんかん、おじさんがうきました。
ひゅっ、と、わたしは息をのんで、目をまあるくしました。
び、びっくりした。
「テメエはぁッ・・・!! 今、何つった!?」
ハルおじさんが、おじさんのシャツのむねのあたりをつかんで、わたしのうしろのかべに押しつけています。
テーブルを飛びこして、おじさんが片手で持ち上げられたのです。
よく見ると、おじさんの足が、くうちゅうにういたまんまです。
ハルおじさん、すっごい力もちだねえ。
「こんな小さな子の前で、お前の親は死んだんじゃねえか? そう言ったんだよな」
「―――ぼ、暴力は・・・!」
「ウルセエよ。この野郎」
「ヒッ・・・!!」
ハルおじさんのこめかみに、血管がういています。
ものすごく低い声で、ものすごく冷たい声です。
「おい。コレが、何だか分かるか?」
「ぼ、ボイスレコーダー・・・ですか」
スーツのむねポケットから、短いめのペンみたいな小さなきかいを取り出して、おじさんの目の前に見せつけます。
止めたほうが、よさそう、と、思ったので、わたしが椅子から立とうとしたら、ガチャっとドアが開いた音がしました。
「止めねえか!! ハル!!」
ビリビリと、空気がふるえるような大きな声でした。
おやっさんさんです。
ものすごく、はくりょくがある目で、ハルおじさんをにらみつけています。
ばつが悪そうな顔で、ハルおじさんが目をそらしました。
いつの間にか、おじさんから手をはなしています。
「警察の者です。この子の両親とも古くから縁が有りましてね」
おやっさんさんが、内ポケットから、金色の金具? が付いた定期入れみたいなものを、おじさんに見せたら、おじさんの顔がぱっと明るくなりました。
「こ、この人が暴力を!」
「はあ・・・? 私は警官ですが、現認したわけでは有りませんからねえ」
「そ、そんな・・・!」
「この男は、今は、それなりの立場にある人間でしてね。そうそう人様に手を挙げる男では無いんですよ」
おやっさんさんが見ると、ハルおじさんが横を向いてます。
「貴方、何か、やらかしたんじゃないですか?」
おやっさんさんがおじさんを見たら、今度は、おじさんが目をそらしました。
「ま。コイツらとは揉めないことをお勧めしますよ。反社も目を逸らして逃げ出す連中ですからね」
「け、警察は―――」
「はい。警察官ですよ?」
おやっさんさんが、にっこりと笑います。
「そ、そんな馬鹿な・・・!」
「私も立ち会わせて貰いますよ。顛末を国に報告する義務が有りますんで」
「国・・・、ですか?」
おじさんが、ものすごく汗をかいています。
「そ。国です。知りたいですか? 貴方や貴方のご家族も監視対象リスト入りすることになりますが。コイツらも、この子の父親も、そういう連中なんですよ。国の意向としては、この連中を刺激したくないんです。出来るだけ穏便に、且つ、円満に事を収めたい。お分かりいただけましたかね?」
おやっさんさんが、ハルおじさんに「座れ」と手で合図して、ハルおじさんが大人しく座りました。
ぱちん、と、テーブルの上へ、ぼいすれこーだー? をハルおじさんが置きます。
おやっさんさんが「消しとけよ?」と言うと、ハルおじさんは、だまってうなずきました。
おやっさんさん、すごい。
なぐってないのに、きれてる? ハルおじさんが、大人しくなっちゃった。
大名行列⑤です。
おやっさんさん!(敬承つき
次回、お姉ちゃん(強者感




