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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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ディール ③

「・・・ミセラさん。怪我人の様子は?」

「2人とも意識を取り戻しました。全員、手当は施しておきましたので、問題は無いかと」

 銀髪頭の確認に、ミセラと呼ばれたメイドが澄まし顔で答える。

 コイツの気配の無さはエルフ兄弟が使う隠形術とかいう技術と同じものだろう。


 怪我人? と周囲を見回せば、憔悴した様子で隅っこに固まって座り込んでいるオッサンたちが居る。

 ありゃあ、農民だな。

 王都で衣服を買い直すまで俺が着ていたものと似た感じの農民スタイルだ。

 肘、膝、尻と継ぎ接ぎを施された、ただでさえボロっちい粗末な衣服が、犬っコロにでも襲われたのかズタボロに破れて血塗れになっているヤツまで居る。


 結構な大怪我だった様子に見えるが、あの出血量で助かったのかよ。

 口出しはしねえが、これも情報収集だと黙って銀髪頭たちの会話に聞き耳を立てておく。

 じっと農民たちを見ていた銀髪頭が首を傾げる。


「・・・回復薬は飲ませなかったんだ?」

「怪我を完全に治してしまっては証拠が残りません」

 淡々とメイドが告げ、銀髪頭が納得顔で頷く。


「・・・それもそっか。―――、で。あの人たちは、やっぱり?」

「はい。フィッツベルン領の領民でした」

 銀髪頭の確認にメイドが頷き返す。


 ほう? コイツら、他所の農民まで助けてたのか。

 なぜ子供2人で熊と鹿を相手取っていたのかと思えば、救助と犬っコロの駆除を平行して行っていたわけか。

 銀髪頭の、あの索敵能力だからな。

 犬っコロとの戦闘現場へ鹿を近付けないように離れた場所で足止めしていたところへ、熊が乱入したと考えれば腑に落ちる。


 日本的な常識に照らせば、危険な野生動物の駆除作業に幼い子供たちだけで当たらせるなんて考えられねえ暴挙なんだが、こっちの世界には魔法ってもんが存在するせいで年齢と戦闘力が比例しねえ。

 親の気持ちになれば、戦闘力がどれだけ高かろうが子供は子供だ。

 子供たちだけで行かせるなんて心配だっただろうし、駆けつけた前伯爵が、到着早々、金銀娘を抱きしめたのも頷ける。


 日本人的には有り得ねえんだが、それは特権的身分制度がない場合の話なんだろう。

 理解し難い部分は有るが、たぶん、“高い地位には(ノブレス・)義務が伴う(オブリージュ)”とか、そんなヤツだろうな。

 ご苦労なこったぜ。

 銀髪頭がメイドを見上げる。


「・・・どんな状況だったかは?」

「領主から“岩塩鉱脈を探せ”と命じられて森に入ったそうです」

 メイドが返した答えに、眉根を寄せた銀髪頭が首を傾げる。


「・・・開拓ではなく、鉱脈ねぇ? あの人たち、開拓民でしょ」

「ただの農民ですね」

 頷き返したメイドの顔にも隠しきれない嫌悪感が滲み出てやがる。


 無茶苦茶だな。

 同じ貴族でも、片や、戦闘能力を持たない自領の住民を危険な場所へ追いやり、片や、他領の住民でも危険を冒して助け出す。


 俺とケイナを囲い込もうとする動きを見せたヘイレンヤードだか何だかいう貴族を思えば、フィッツベルンとかいう貴族の在り方は前者で俺のイメージ通りの貴族だな。

 道徳的規範を示そうとするこの金銀娘たちと前伯爵が特殊なんじゃねえの?

 難しい顔になった銀髪頭が記憶を探るような仕草を見せる。


「・・・フィッツベルン家って、先代の隠居で処分を免れたんだっけ」

「親が親なら、子も子です。王家に睨まれていますから、焦りが有るのかも知れません」

 人形みたいに表情が乏しい銀髪頭の顔にも、いよいよ嫌悪感が表れた。


「・・・足元も疎かなのに一発逆転の手柄が欲しいって? ほんと、迷惑な人たちだな」

「これでもまだ、旧コーニッツや旧ムーアに較べればマシなのですが」

 嘆息しながらメイドが首を振る。


 ええっと? ちょっと待て。

 また違う名前が出来てきたぞ?

 しかも、訊いたことのねえ名前だな。


 コーニッツにムーア? その前がフィッツベルンだったな。

 「旧」ってことは、また違う名前が出て来かねねえ。

 どれもこれも横書きの名前だから覚えにくいんだよ。

 メモれる状況なら続けてくれて良いんだが、メモれねえからな。


 事件の背後関係は聞けたし、状況も大体は把握した。

 このまま続くと、ややこしくなって重要部分の記憶が抜け落ちちまいそうだ。

 話について行けなくなる前に介入しておくか。


「揉め事か?」

「・・・ああ、うん。あの人たち、フィッツベルン領の領民なんだよ」

 声を掛ければ、銀髪頭が農民たちに目を向ける。


「・・・あのシカと戦う前にバンダースナッチの群れに襲われているところを救出したんだけど、領主から森へ入るように強要されたみたい」

「普通の農民を魔獣だらけの魔の森へ? そりゃあ無茶ってもんだろ」

「・・・そうなんだよね」

 どう考えているのか確認する意味で感想を投げ掛ければ、銀髪頭も同意する。


「何でまた、そんなことを?」

「・・・岩塩を探せ、だって」

「ほーん・・・。塩ねぇ?」

 まあ、聞いてたけどな。


 金髪頭の家が内戦中に岩塩を供給してたんだっけな。

 エンツェンス領の市場で肉屋のオバチャンがそんな話をしていたはずだ。

 話に割り込んだ俺にメイドが目を向けてくる。

 このメイドが意図的に俺へ視線を向けないようにしていたことには気付いていたが、無視するのは止めたらしい。



ディール③です。


ノブレスオブリージュ!

次回、人質!?

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