クラン ㊿
「でも、名所ならレティアの町には慰霊碑が有るわよ!」
こっちは歳相応って感じだな。
見事なドヤ顔で金髪頭が推してきた「名所」に俺の頭が傾ぐ。
「慰霊碑?」
「高さが50メテルも有る、ものすごくデッカい慰霊碑よ!」
ほう? 元々、“名所”は2つ有ったわけか。
耳から入ってきた情報を頭の中で精査する。
「50メートル・・・。17階建てぐれえか。そりゃあデケエな」
慰霊碑ってのは、遺体が入っていない墓石みたいなもんだろ。
こっちの世界はあらゆるもののサイズが全般的にデカくて感覚がバグって来るんだが、慰霊碑も桁違いらしい。
そんなものを建てられるほど土地が余ってるんだろうし、石材も豊富ってことかも知れねえが、現代日本人的には理解しがたいというか―――、いや。北関東にも地上100メートル超えの巨大大仏が有ったっけな。
死体の現物が入ってねえんだから、ピラミッドや前方後円墳みたいな墳墓よりも巨大大仏の方に近いのか。
金髪頭が誇らしげに平たい胸を張る。
「どんなに遠くからでも精霊様の下へ帰れるようにって建てたのよ!」
「へぇ? 精霊信仰ってヤツか。そういや、精霊が姿を現したとかって噂も有ったんだっけな」
”新年のご祈祷”とかいう年越しイベントでの超常現象や巨大慰霊碑を建てたときの苦労話を金髪頭が話してくれる。
精霊については、ミャウラたちが集めてきた情報と大きな食い違いはねえな。
空を埋め尽くすほどの幻想的な光の粒が現れて、森の奥へ向かって帰っていったんだと。
どうやら、精霊を呼び寄せたのも、その巨大慰霊碑を建てた主犯も銀髪頭らしい。
今、馬鹿デケエ熊と鹿を浮かせて運んでるのも銀髪頭だしな。
こっちの世界には魔法ってもんが有って、魔法の上手い下手には大人も子供も関係ないらしいから、不思議はねえのか。
魔法が上手くて常識外れなのは銀髪頭の方らしいってことも理解した。
へぇー。なるほど、なるほど。
話が通じるのは銀髪頭の方なんだろうが、この金髪頭の方が歳相応の子供らしくてホッとするなあ。
金髪頭が喋っているのに任せて何やら考え込んでいた銀髪頭が、不意に大きく頷いて俺に顔を振り向けてくる。
「・・・やっぱり伝令を出すよ。仲間の人たちって、どんな人たち?」
そういや、さっきも言ってたな。
考え込んでいたのは、その件か。
申し出を断って要らぬ疑いを掛けられるのも面倒か・・・。
しゃーねえ。
外堀を埋められて深みに嵌まって行ってる気もするが、ドネルクの手前も有るし今さら断るわけにも行かねえ。
前伯爵の態度から予想するに、下手に断ると何かの容疑をでっち上げられて緊急手配され兼ねねえしな。
「荷馬車が1台に、馬を7頭連れた獣人族3人とドワーフ族2人だ」
「「ドワーフ族!?」」
「お、おう」
金銀揃って身を乗り出して来て、思わず仰け反る。
ロブウッドの話じゃあ、元々、この国にドワーフ族は少なかったそうなんだがな。
エルフ族ほどじゃねえが、ドワーフ族もかなりの数が神教会に送られて見掛けることが珍しくなったとは聞いたが、そこまで食い付くのかよ。
鼻息も荒く銀髪頭がグッと拳を握る。
「・・・保護しなきゃ! ドワーフ族に何か有ったら人類の損失だよ!」
「大袈裟だな!? まあ、方向性には同意するが」
俺にとっても、エルフ族の未来のためにも、あの飲んべえ父娘の鍛冶技術に期待するところは大きい。
そうは言っても、食い付きすぎだろ。
勝手に盛り上がっている銀髪頭の背中で金髪頭がスッと右腕を上げた。
5本の指を揃えてピンと伸ばしたチョップを振りかぶる。
「・・・急ぐよ! 獲物の血抜きなんて後で良いから一刻も早く―――、あ痛っ!」
「もう! 落ち着きなさい!」
「・・・むー」
ズビシッと振り下ろされたチョップを後頭部に食らって、銀髪頭が両手で頭を抱えて不満そうにむくれる。
何で金髪頭が銀髪頭の背中に負ぶられてるのかと不思議に思っていたが、ブレーキ役っぽいな。
やり取りから想像するに、加減を知らなくて常識外れな銀髪頭が暴走しそうになると金髪頭が止めてコントロールしてるんだろう。
公爵と伯爵で肩書きも金髪頭が上位だが、仲が良いのは間違いなさそうだ。
「私たちの領地に入れば悪い奴は居ないから、安心して良いわよ!」
「そりゃあ頼もしいな」
金髪頭の宣言に笑みが漏れる。
大人ぶって反り返っているが、銀髪頭の背中に負ぶられた状態じゃあ、お馬さんゴッコでもしているようにしか見えなくて威厳も何もねえぞ?
「フィオレも! 領境の関所に伝言を伝えさせれば良いだけでしょうが!」
「・・・関所を通り過ぎてたらどうするの?」
金髪頭のお叱りに銀髪頭が反論する。
「その人たちも待ってる間、レティアの町に入るんでしょ? 城門の守備兵に伝えて領主館で待たせておけば良いじゃない」
「・・・あー。それでも良っか? 領主館だと怖がって萎縮しちゃいそうだけど」
金髪頭の言い分に銀髪頭が靡きそうになってやがる。
ちょっと待て。「待たせておく」ってのは、連行するってことじゃねえのか?
頑張れ、銀髪頭! “うっちゃり”でひっくり返せ!
ちなみに、“うっちゃり”とは相撲82手の1つで、土俵際に追い込まれた状態から体を捻って相手を投げ出す特殊技のことだ!
「悪いことをしていないなら堂々としていれば良いのよ!」
「・・・それもそっか」
銀髪頭が土俵の外へ押し出されて、ダメだったかと天を仰ぐ。
金髪頭の言ってることは、どうしようもなくド正論で、俺も止めに入れなくなっちまった。
行き違いが有って拘束されたとしても、どうせ今日明日のことだしな。
大人しく世話になっとけ、と伝言を頼むとするか。
諦めの心境で銀髪頭の視線を戻せば、じっと後ろを振り返っている。
釣られて俺も振り返れば、レイクスが文字通り目を輝かせて銀髪頭と睨み合っていた。
クラン㊿です。
メンバー収監!?
このお話で本章は最終話です!
次話より、新章、第17章が始まります!
なお、本章の話数が大きくなり過ぎたので、そのうち整理し直すかも知れません!
次回、魔法談義!?
※今日も遅刻です!
申しわけありません!




