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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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クラン ㊵

 気配を追って森を進む。

 まだハッキリと目的とする危険物の存在を捕捉したわけじゃねえから当てずっぽうになるんだが、追っている痕跡の方角とは大まかに一致しているはずだ。


 獲物の痕跡を探すフィティオスとアルケマイオスの狩人兄弟が先行して、俺が後ろから危険物の存在を報せる。

 目的外の触角ヘビなんかは、飛んでこられない距離を取って回避してしまえば居ないのと同じだからな。

 1時間に1度ぐらいの小休憩を取る以外は、ジョギングどころじゃねえ移動ペースでガンガン進む。


 獲物の血を飲んで体力が付いてるもんだから、あんまり疲れも感じねえんだよ。

 熟練の技というか、ハイペースな移動速度でも痕跡を見付け続ける狩人兄弟も、もちろん凄えんだぜ?

 凄えんだが、ほとんど足を止めずに移動し続けられることが何よりの強みなんだろうな。


 二本足で走る人間は、四つ足で駆ける動物に移動速度では勝てねえんだが、持久力では四つ足の動物よりも二本足の人間が優れるとかって話を聞いたことが有る。

 どこまでが本当のことなのか研究者でもねえ俺には分かんねえんだが、徐々に目的とする危険物の反応が近付いて来てるんじゃねえかって予感は有る。


 慢心を戒める“ウサギとカメ”の寓話だってバカにしたもんじゃねえんだよなあ。

 車の運転をするヤツなら体感したことが有ると思うんだが、高速道路の渋滞でも進んで止まってを繰り返すよりも、低速でブレーキを踏まずダラダラ進む方が最終的には早く目的地に着いたりたりするんだよ。


 あの現象って科学的なシミュレーションでも証明されてたんだっけか。

 今、この森の中でも同じ現象が起こっている感覚が有る。

 順調に進み続けていると、フィティオスが不意に片手を挙げて速度を落とした。


「どうした?」

「獣道です」

 地面に目を凝らしてしゃがみ込んだフィティオスの傍に全員が集まる。

 一面が落ち葉に覆われちゃあ居るが、指摘されてみれば薄く1本の道が有るようにも見える。

 あの移動ペースで、よくこんなの見付けたな。


「何の動物だ?」

「これは・・・、バンダースナッチですね。足跡もまだ新しい」

 丁寧に落ち葉を払ったフィティオスが腐葉土の上に残された僅かな傷痕を指し示す。

 鋭い爪を立てて抉ったような短く細い4本の線だ。

 よく目を凝らしてみれば左右対称に近い形状の肉球の跡も見て取れる。


「アイツら、どこにでも居やがるな」

「すでに、かなり南下していますから、バンダースナッチの棲息域からは外れているはずなのですが」

「そうなのか?」

 俺の感想にアルケマイオスが首を振る。

 俺にとって犬っコロは触角ヘビに続いて遭遇した獲物で、結構どこででも獲れる印象だったんだが、普通のことじゃあ無かったらしい。


「郷の周辺でも、本来のバンダースナッチの棲息域で言えば南端のはずなんだよ。そうでもなければ、あの場所に住み続けて居られなかった」

「奴らは鼻が利きますからね。侵入避けの結界で防ぐにも限界が有ります」

「そういうもんか」

 レイクスの説明にフィティオスも同意する。


 郷の周りに張り巡らされていたのは、気付かせない内に方向感覚を狂わせて避けさせる魔法だったはずだ。

 臭いはどうしようもねえもんな。

 犬の嗅覚は人間の数十倍だっけか。

 避けさせるにも「限界が有る」ってのも道理だな。


「群れの生き物だから、目を付けられて周りを彷徨かれると郷から狩りに出ることも出来なくなるんだよ」

「ショージョーのときも、そうでしたからね」

「ああ~。なるほどなあ」

 それも有ったか。


 大猿も群れで行動する習性を持っていて、郷の中への進入は防いだが結界の周りを彷徨かれて外へ出られなくなってたんだったな。

 大猿のせいで怪我人が続出してキノコ薬が枯渇した結果、決死隊みてえな覚悟でレイクスたちが郷から出て、犬っコロの群れに鉢合わせしたせいで俺と遭遇した。


 結果論で言えば、レイクスたちにとっても俺にとっても幸運な出会いだったと信じてえが、ほんの数秒間ほど出会いが遅れていればケイナもレイクスも助けられなかった可能性が高かった。

 逆に、もっと出会いが早ければ、今のように友好関係を築けなかった可能性も高い。


 あの出会いを「幸運」とするには数人の命が失われた事実を無視することになるし、どう出会うのが最善だったのか考えても答えが出ねえ。

 答えが出ねえなら目の前の現実を現実として受け入れるしかねえんだ。

 そして今、俺たちは新たな現実を突き付けられているらしい。

 犬っコロの足跡を囲んでレイクスたちが表情を難しくする。


「これは問題だね・・・」

「はい。獣道が出来上がっているということは、定着してしまっている証拠です」

「獲物になる魔獣が多いのでしょうね。ここまで来ると、特殊な個体や異常行動ではなく、棲息域を広げたと考えるしか有りません」

 南下してきた犬っコロがそのまま定着して、ギリギリ棲息域の外縁部に有った郷の位置が外縁部じゃなくなった?


「そうすると、郷は棲息域のド真ん中ってことになるのか?」

「そういうこと。もしかすると全体的に棲息域の分布が南へズレたのかも知れないけど、どのみち、今の場所に郷を置いておくのは危険だね」

 俺の総括にレイクスが明確に頷いた。

 ヤベエな・・・。そいつはメチャクチャ問題じゃねえか。



クラン㊵です。


郷の危機!?

次回、察知!?

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