クラン ㊴
一夜明けて、追跡2日目だ。
昨日の夕方4時から野営に取り掛かって、メシを食い終わって夕方6時。
起床時間を朝6時にしたから12時間の就寝時間となった。
12時間と言っても、交代制で3時間ずつの見張り番に就くから、1人あたり9時間の休息時間になる。
実のところ、危険物センサーが有るから、魔獣や野生動物の接近を警戒して見張り番を立てる必要はねえんだけどな。
俺が居ねえときの野営に慣れさせる意味で見張り番を立てることにした。
途中で3時間の中断が入っても、9時間も有れば十分な休息は取れる。
朝飯を食い終わって朝7時。
日の出の時間ともなれば、薄暗い森の中でも日照の恩恵が届いて視界は確保できる。
「さて。行こうか」
「おう。サッサと終わらせちまおう」
昨日と同じく、このメンバーだと移動速度が速え。
エルフ族は軽やかな足取りで、俺はドスドスと駆けるように森を歩く。
1時間に1度ぐらいの小休憩を挟んで、3度目の移動を始めて直ぐのことだった。
「待ってください!」
「っと。どうした?」
不意に足を止めたタレースが落ち葉に覆われた地面にしゃがみ込む。
「足跡です。これは・・・バイコーンでしょうか」
「ええ。恐らくは」
タレースの肩越しに覗き込んだケイナが頷く。
馬鹿デカい鹿ならクローゼリス領での依頼で何度も狩ったからな。
俺も見慣れちまったから蹄のサイズで大体は鹿のサイズを予想できる。
「そこそこデケエな」
「南下してきているのはイエーティだけじゃなかったんだね」
俺たちの見解にレイクスが思案顔になる。
熊だけじゃなく鹿も南下してきているのなら、全体的に棲息域が南へズレたと考えるのが妥当か?
「だとしたら、ケイナの魔法が原因じゃねえのかもな」
「どうします?」
タレースがレイクスを見上げて、レイクスが肩を竦める。
「郷を襲ったショージョーと同じ異変かも知れないけど、ここまでイエーティを追ってきたんだ。僕は狩っておくべきだと思うよ」
「レイクス様がそう仰るなら」
コクリと頷いたタレースが立ち上がり、レイクスが俺へ顔を振り向けてくる。
「テツはどう思う?」
「おかしな疑いを掛けられるのは面白くねえな」
俺の意見は変わらねえよ。
俺たちの狩り方は少しばかり特殊だと思うしな。
後で難癖を付けられるぐらいなら、熊も鹿も始末しちまった方が憂いがなくなるってもんだ。
俺の意見にケイナも頷く。
「不安の芽は早めに摘んでおくべきでしょう」
「ケイナは政治をさせても才能が有るかもね」
時代劇の悪代官みてえなセリフを口にしたケイナに、レイクスが苦笑する。
うんうん。何が、とは言わねえが俺も同感だなあ。
頼もしいこった。誰の影響だろうな?
痕跡を探しながら再び移動を開始すれば、100メートルも行かねえ内に鹿の足跡と熊の足跡が重なった。
「バイコーンをイエーティが追っているのかも知れませんね」
「ずっと追ってきたんだと思うか?」
鹿も熊も同じエリアで獲れた魔獣なんだし、熊が居るってことは鹿を追ってきた可能性もゼロじゃねえだろう。
そう思ってフィティオスとアルケマイオスを見れば、2人揃って首を振る。
「それは無いでしょう」
「今、初めて痕跡が重なったのですから、バイコーンの痕跡を偶然見付けて追い始めたと考えるのが自然かと」
ほーん? そういうもんか。
でもまあ、ずっと熊が鹿を追ってきたのなら、もっと早くに足跡が重なって然るべきか?
狩人兄弟の意見の方が理屈は通ってるな。アルケマイオスが小さく笑う。
「魔獣同士で潰し合ってくれれば、我々は楽が出来るのですが」
「そうだねぇ」
アルケマイオスに同意してレイクスも笑う。
1歩引いて兄たちの意見を聞いていたケイナが俺を見上げてくる。
「テツさん。居そうですか?」
「チョイ待ち。―――、あ~・・・。まだ少し遠いが居そうな気はするな」
かなり離れた辺りに触角ヘビの反応があって、それよりもさらに離れた辺りから何か居そうな気配を感じなくもねえ。
だが、ちょっと遠すぎてハッキリしねえな。
「急ぎましょう。追いつけるかも知れません」
「だなー」
少なくとも、それっぽい反応をキャッチできれば、痕跡を探さなくても追跡できるようになる。
ケイナの魔法の射程内にまで追いつければ爆裂魔法で追い出すんだし、それ以上追う必要もなくなるからな。
クラン㊴です。
獲物の気配!?
次回、違和感!?




