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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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クラン ㉝

「南へ逃げたイエーティが居るらしい」

「逃げた、というと、私たちの追い込み猟が原因で、でしょうか」

 案の定、ケイナが表情を曇らせる。

 話し辛かったのは、そこだ。


「いやぁ。分かんねえよ? 分かんねえんだが、他人の目から見ても俺たちと無関係に見えるのかが問題だな」

「実際の原因が何かは問題じゃないと?」

 ケイナは理解が早いな。


「そういうこった。誰かが俺たちのせいだと言えば、世間がそう認識する恐れが有る」

「実際には無関係でも、私たちのせいにされるんですね」

「あくまで可能性の1つに過ぎねえんだがな」

 誤解なく理解したケイナの飛行帽頭をポンポンと撫でる。


 こんなもんはヒト族だろうがエルフ族だろうが関係ねえ。

 何かが起こったときに犯人捜しが始まるのは世の常だし、因果関係が有ろうが無かろうが、その場の空気や先入観で誰かに原因を押し付けることなんて往々にして起こり得る。


 理性的に論理で思考できねえ連中ってのは、どこにでも一定数が居るもんだ。

 火事を大きくして日頃の個人的な鬱憤を晴らそうとする連中だって居る。

 問題は、社会的に立場の弱い者が責任を押し付けられやすいってことだな。

 立場の弱いエルフ族にとっては非常に拙い状況が生まれやすい。


「どうするんですか?」

「原因そのものを取り除くのが一番だな」

「原因をですか」

 理屈の通じねえ連中を黙らせるには問題を解決しちまうのが特効薬になる。

 事が起こる前に先回りしておければ、なお良い。

 何せ、騒いで問題を大きくしようにも騒ぐネタが無いんだからな。


「問題の本質は、“俺たちの追い込み猟が原因か”じゃねえんだよ。北の魔獣が南へ逃げてるのが問題なんだ。なら、被害が出る前に逃げたイエーティを始末しちまえば、問題そのものが消えて無くなる」

 納得した様子のケイナが大きく頷く。


「具体的には、どうします?」

「荷馬車の移動はクァタルたちに任せて、俺たちは森の中でイエーティを追う」

「その方が早く片付けられそうですね。分かりました」

 危なげない身のこなしで御者台から荷台へケイナが戻って行く。


 よく気が付くこった。

 事前情報が有れば話し合いも早く終わるからな。

 ケイナはみんなに状況を説明しに行ったんだろう。

 小一時間ほど街道を南下して休憩を取る。


「イエーティは強い魔獣だし、ケイナの術式から逃走したとは言い切れないとは思うんだけどね。テツが言う通り、被害が出た際に原因の押し付けが起こる可能性は高いだろうね。例えば、神教会が利用している信仰心がそれだ」

「そうなのですか?」

 鋼毛熊を追跡する判断にレイクスが理解を示し、仇敵の名前が出てケイナが驚く。


「死への恐怖や未知への畏れだな。実在するかも分からねえ死後の安寧や救いを説いたり、もっともらしく屁理屈を付けて不安を煽ったり、分かりやすい敵を作って民衆を誘導するんだよ」

「死や未知への恐れ・・・。民の不安を利用するのですか」

 俺の説明にケイナが眉を顰める。


 天国やら死後の世界なんてものが“有る”と証明されていねえのと同じで“無い”とも証明されていねえから、詐欺だと決め付けるのは早計なんだがな。

 俺自身は死後の世界なんてものの存在を信じていねえ。


 幸福な死後なんて夢に夢を見るぐれえなら、生きてる今が幸福になるように全力で足掻けってのが俺の信念だ。

 信じているヤツに「信じるな」と押し付けるつもりはねえが、素直で純粋な連中を煽って騙す宗教家が多いのは事実だからな。


「そういうこった。宗教が勢力を拡大するための常套手段なんだが、人間ってヤツは分かりやすい構図に流されやすいもんだし、他人に責任を押し付けちまえば自分は悪くねえって免責になる。煽動に流された連中が集まって同調すると気持ち良くなって過激化するんだ」

「そういうものなんですね」

 世の中ってのは悪人ばかりじゃねえんだが、本人は善人のつもりでも行いが悪人のそれになることは往々にして有るもんだ。


「良くも悪くも世論の支持ってヤツは道理をねじ曲げる大義名分になる。政治でも使われる手法だから覚えておくと良いぞ。相手の手管が分かっていれば身動きが出来なくなる前に先手を打つことも逃げ出すことも出来る」

「先読みできる・・・。それは重要ですね」


 相手の権力が大きければ大きいほど、相手の行動を先読みする技術は重要になる。

 一足跳びに身に付けられるもんじゃねえが、学んで欲しい。

 そうすることがケイナたちの身を守ることになるのだから、出来るだけ噛み砕いて伝えようと試みる。


「だから、多くの人と仲良くなって、誰が何を言ってるか、何をしようとしてるか、耳を澄ませて情報を集めるんだ」

「それでテツさんは末端の兵士に謙ったり、初対面の人と話し込んだりするんですね」

 むー、と眉根を寄せて唸るケイナに苦笑が漏れる。

 ケイナは俺が関所の兵士や門番に謙るのを快く思ってねえからなぁ。


「真面目な話や交渉はドネルクみてえな大物とすれば良い。小物と敵対しても何の得もねえんだ。持ち上げて気持ち良くさせてやれば小物はペラペラ喋ってくれるが、大物はそう簡単に喋ってくれねえ。その辺が、大物が大物である理由だな」

「交渉相手の選択、ということですね」

 噛み砕いたつもりなんだが、堅苦しく返ってきたな。

 こういうところも真面目なケイナらしい。



クラン㉝です。


問題の本質!

次回、アレの噂!?

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