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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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奴隷 ⑤

 一方的、どころではありませんでした。

 ほんの数分間で、幌馬車の荷台で隠れて震えていた小太りの醜い中年男性に至るまで、護衛の男たち20人近くと同様に、地面に転がって動かなくなっていました。

 胸が上下していて呼吸は有る様子なので生きてはいますね。


 私も御者台から降りて馬車列の近付いてみると、荷台が屋根と壁で囲んだ箱状になっている荷馬車は扉で出入りが阻まれていて、扉の表面に貼り付いている補強材の金属板に小さな金属の箱がぶら下がっています。

 森の外に詳しくない私でも、その小箱が錠前であろうことが予想できました。


 私たちエルフ族なら刻印術式で扉を塞ぐことが出来るのですが、頻繁に開け閉めする場合には刻印術式よりも錠前の方が適しているのだと兄様が教えてくれたことが有ります。

 私が見つけた錠前に目を奪われていると、白目を剥いた男の背中を踏ん付けているテツさんが声を掛けてくれました。


「どしたー?」

「テツさん。これ・・・」

「ほう? 鍵掛けてやがんのか」

 私が錠前を指し示すと、僅かに眉間を寄せたテツさんは荷台の壁に近付いてドンドンと叩きました。


「おーい。中に誰か居るかー?」

「い、居ます! 助けてください!」

「おう。分かった。ちっと待ってろ」

 壁の小窓の中から若い女性らしい声が返り、テツさんが返事を返してひっくり返っている男の一人のところへ歩いて行きます。


「ぐはぁっ!?」

「起きろ。んで、荷馬車の鍵を開けろ」

 徐に脇腹を蹴り上げられた男の呻き声を綺麗に聞き流してテツさんが命じました。

 仲間の全員が倒されている現状を認識した男は、傷むので有ろう脇腹を両手で庇って顔色を真っ青にして震え上がっています。

 あの男は御者をしていた男の1人ですね。


「鍵を開けろつってんだ。サッサとしろ」

「ヒィッ!」

 尻を再び蹴り上げられた御者が転げるようにして別の倒れている男の体に取り付き、腰の小物入れから小さな金属片を抜き取りました。


 あれは恐らくテツさんが言った「かぎ」というものでしょうね。

 錠前のところで金属片を何やらすると、錠前が扉から外れました。

 男の手から金属片を奪い取ったテツさんが扉に手を掛けて引き開けます。


「自分で出て来な。自分で動けねえなら、しばらくそのまま待ってろ」

「は、はい!」

 荷台の内側から返ってきた返事を待つこともなく、テツさんは再び御者を蹴り上げます。


「仲間の靴を脱がせ」

「えっ? く、靴? ―――、ぐはぁっ!」

「サッサとしろ! 蹴り上げられてえか!」

 三度(みたび)蹴り上げられた御者が仲間の男たちに取り付いて、1人ずつ靴を脱がせ始めました。


 グズグズした御者が悪いのですが、「蹴り上げるぞ」という脅し文句というものは蹴り上げてから言うものでは無いと思いますよ?

 テツさんが扉を開けた荷馬車の荷台からは、十数人もの男女が降りてきました。


 疲れの見える表情で眩しそうにお日様を見上げて目を細めた彼ら彼女らは、気絶している男たちの姿を見付け、ブルッと肩を震わせて座り込んでしまいました。

 テツさんたちは、というと、親玉だと思われる小太りの男に至るまで、御者の手で全員が靴を脱がされて臭そうな素足が顕わにされています。


「お前も脱げ」

「ええっ? ―――、ぐぼぉっ!」

「サッサと脱げ! 蹴り上げるぞ!」

 脅し文句というものは・・・。いいえ。もういいです。


 最後に自分も靴を脱がさせられた御者は、テツさんが高く上げた足の踵を脳天に食らって這いつくばりました。

 地面に顔から倒れ込んで動かなくなったところを見ると気絶したのでしょう。

 悪い男たち全員が再び伸びてしまってから、テツさんは幌馬車の荷台に上がって荷物を放り出し始めました。

 荷台の荷物を放り出すのが目的ではなく、何かを探して物色しているようです。


 ガシャン! と大きな音をさせて何かの道具が入っているらしい木箱が放り出されました。

 荷台から下りてきたテツさんが、ガチャガチャと金属同士がぶつかる音をさせて木箱の中身を物色し始めます。

 テツさんの傍に近付いて横合いから手元を覗き込むと、木箱の中身はやはり何かの道具だったようです。


「殺さなかったんですね」

「値段が下がるじゃん。勿体ねえ」

 男たちを1人も殺さなかったことを不思議に思って訊いてみれば、実にテツさんらしい答えが返ってきました。


「もったいない、ですか?」

「日本が誇る資源節約の精神だな」

「”もったいない”に”せつやく”・・・。覚えておきます」

 伸ばしてきた大きな手で私の頭をポンポンと軽く叩くように撫でてから、テツさんは物色作業に戻ります。


 ”もったいない”は無駄を悔いる心の在り方で、”せつやく”は無駄を無くす行為だそうです。

 もう一つ、「塵も積もれば山となる」という言葉も教えて貰いました。

 そちらは、”もったいない”と”せつやく”を積み重ねると”砂粒のように小さなものでも山のように貯まる”という蓄財の心得だそうです。


 盗賊や人攫いを捕まえた報奨金は魔獣素材の売却益よりも遙かに小さいですが、たくさん捕まえれば大金になります。

 ニホンの考え方は素晴らしいですね。

 治安の維持と蓄財が同時に成し遂げられるんですよ。

 私も見習いたいと思います。



奴隷⑤です。


そうなんだけど、違う! そうじゃない!

次回、魔法道具!?

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