キノコを取るか、タケノコはどこだ ①
「うーむ・・・」
わからん。
手にした物体を、角度を色々と変えて、穴が空くほど観察する。
かれこれ、20分以上、こうやっている。
俺が、手にしているモノは、キノコだ。
思案しつつ、頭上の木々を見上げる。
比較的、歩きやすかった巨木の森の中から、十数キロメートルは、歩いた、と思う。
今は、少しだけ背丈が低く、幹が細くなった樹木の森で、木々の合間に、所々、中木と低木の小さな茂みが混じってきている。
細くなった、と言っても、空に向かって真っ直ぐに背を伸ばしている高木の幹周りは、俺が一抱えしても、手が回りきらない太さがある。
樹高は、30メートルぐらいかな。
俺の顔よりも大きな“パー”の形の人間の掌みたいな広葉で、やっぱり、見たことのない種類の木だと思う。
この木は倒れやすい理由でもあるのか、時折、行く手を阻むように倒木があって、その倒木に、ひょっこりとキノコが生えているのだ。
俺はキノコの種類なんて椎茸とエノキ茸と平茸と松茸とエリンギぐらいしか知らないし、しっかりと傘が開いたキノコらしいキノコともなれば、椎茸しか知らない。
松茸も傘は大きく開くんだっけか?
それが本当に椎茸だとしても、森の中に自生している椎茸を見て、椎茸だと確信できるほど俺は椎茸に詳しくない。
椎茸の見分けも付かないのに、他のキノコの見分けが付くわけも無いし、それ以前にキノコの種類自体を殆ど知らない。
一応、見つけたキノコは採取して、拾った木の枝に刺しながら歩いてきたから、傘の直径が20センチメートルもある大きなキノコが30本ほども刺さった棒っ切れを肩に担いでいるわけだ。
食える、・・・んだろうか?
キノコは毒を持つ種類があるから素人は手を出すな、と、“山持ち”の左官工職人から、聞いたことがある。
そして、俺はキノコビギナーだ。
いまだ、水場を発見できておらず、食あたりの薬も手持ちが無い、今、腹は減ってもキノコに手を出すのがハイリスクなのは変わらない。
タケノコだったら俺みたいなビギナーでも見分けが付くけど、残念ながらタケノコは見当たらない。
キノコタケノコ戦争でもタケノコ派の俺としては、キノコしか手元にない現状は忸怩たる状況といえるだろう。
ヒナもタケノコ派なので、正義は絶対的に我が軍にある。
「どうすっかな・・・」
ヤバいか。
薄暗い森の中が、さらに暗さを増したように思うから、もうすぐ、日が暮れるのかもしれない。
明かりもない状態で未知の森の中を歩くのが危険なことぐらい、サバイバル素人の俺でも分かる。
「仕方ねえな」
できるだけ開けた場所の木の根元に、湿っていなさそうな地面を探して、がさがさと枯れ葉をどけて、キノコ棒を木の幹に立て掛ける。
毒虫が、いないとも限らないからな。
ほら、でっかいムカデとか、居そうじゃん。
枯れ葉を退けたのは、地面の地肌が見えているほうが虫の接近を察知しやすいだろう、という、素人考えだ。
地面に直接寝る危険性は毒虫だけじゃないんだっけな。
日雇いで現場に来ていた作業員のオッサンから聞いた話では、地べたに直接寝ると体温を奪われて動けなくなるらしい。
ホームレスをしていたこともあるオッサンが言うには、体温を奪われると同時に起き上がる気力も奪われて働けなくなるんだと。
恐らく、低体温による倦怠感が気力も奪う、って意味だったんだろうな。
靴の内側を使って足で枯れ葉を一カ所に集め、小さな山を作る。
その辺をウロウロして手頃な枯れ枝を集め、木の根元の傍に積んでいく。
焦る気持ちはあるが、割り切って、ここで野宿を決め込もう。
枯れ枝を力任せに圧し折って、井桁に組む。
イメージは、キャンプファイヤーのアレだ。
効果的な焚き火の組み方なんて知らん。
井桁の中に、蹴り退けた山から取ってきた枯れ葉を突っ込んで、使い捨てライターで、下のほうの枯れ葉に着火する。
着火した途端に、ブオッと前髪が煽られるほどの炎が上がった。
顔面の直ぐ目の前を熱が舐め上げていく。
「うおっ!」
「火」じゃなく「炎」な。
点いた、と思ったら、想定よりも一気に炎が大きくなって仰け反った。
マジでビビって、ちょっと鼓動が早くなってる。
「こ、この木、油分が多いのか?」
警戒しつつも追加の棒っ切れを炎に放り込んでみる。
が、追加の小枝は爆発的に炎が大きくなることは無かった。
さっきは何に引火したのか分からないが、迂闊に小枝も燃やせねえじゃねえか。
小枝ってのは、存外、燃えつきるのが早いな。
集めた枯れ枝では一晩もたないかも? と、思い至ったので、立ち上がって焚き火を見失わない範囲で枯れ枝拾いを続行する。
小脇に枯れ枝を抱え、がさ、がさ、と枯れ葉を踏んで歩いていたら、首―――、というか、肩の辺りに、何か、重たいものがドスンと落ちてきた。
キノコタケノコ①です。
触角ヘビ急襲!
次回、死闘!




