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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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オジサン、迷子になる ⑩

「うごががががっ!!!」

 バキバキと破砕音が響き渡る中で、浮遊感とともに、俺の視界も緑色に塗り潰された。

 袋叩きの私刑(リンチ)にでも遭わされたかのように、四方八方からの痛打で揉みくちゃにされる。


 (いて)え!! めっちゃ痛え!!

 トカゲェッ!! やっぱり、お前は、ぶん殴る!!

 そんな呪詛を撒き散らしているうちに、俺の意識はブラックアウトした。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・。


「・・・痛え」

 全身がバラバラに分解しそうな痛みに、顔を顰め、目を開ける。

 ・・・・・生きてる・・・らしい。


 黒味を帯びた茶色と深緑色の間に、白が見える。

 何だ、こりゃ?

 ずきずきと痛む腕を動かしてみれば、頭の上へと引っ張られる。


 足は・・・? と、痺れた感覚が有る、鈍い痛みを感じる足を伸ばしてみれば、上への落下感とともに、脳天を何かにゴツンと、ぶつけた。

 ああ・・・、なるほど。

 俺は、逆立ちした格好で、木か何かに貼り付いて気絶していたワケね。


 痛ってェ。

 のそり、と身を起こして、大木の根元に痛む背中を預ける。

 頭に上っていたらしい血が下がるにつれて、思考力が戻ってくる。

 どのぐらい意識を失ってたのか分かんねえけど、まだ脳天がグルグル回ってる気がする。


 十数メートルの頭上に、立派に張り出した太い枝々と、さらに、その枝の向こう。

 数十メートルは上空に、木々に遮られた狭い空が見える。

 あそこから落ちてきたわけか。

 ビバ!! トカゲの不思議パワー!! だな。


 旅客機が飛ぶような高高度からパラシュートも無しに生還したんだ。

 こうして、まだ生きてるだけで、ラッキーだと考えることにしておこう。

 何メートルぐらいかなあ、と、見上げた樹の高さを目測で測る。

 無意識に大きさを測るのは、もう、職業病だな。


「デッケェ、樹だ・・・」

 樹高は、50メートルを、優に超えていると思う。

 今の日本に樹高50メートルを超える木なんて残って無いんじゃねえの?


 米国の木材で伐採されるベイマツで、そのぐらいの樹高だっけか?

 幹周りは、大人が3人で手を繋いでも足りないぐらいに、太い。

 日本の植生で考えれば、樹齢は300年から400年ぐらいには、なるだろう。


 この樹、一本で、日本の木造家屋が10棟は建つんじゃないだろうか。

 茫洋と、視線を泳がせれば、周囲の樹木も、同等の巨木ばかりであることに気付く。

 樹木の間隔は、20メートルほども離れているのに、全体的に薄暗く、日照量が少ない。


「原生林って感じか」

 少なくとも、100年やそこいらは森に人間の手が入っていない印象を受ける。

 あの程度に墜落で死ぬようなトカゲだとは思わないが、当然のごとく、その姿はおろか、あの巨大な生物が放っていた、圧倒的な強さを感じさせる気配も、どこにもない。


 どうやら、俺はトカゲ野郎を逃してしまったらしい。

 胸ポケットを探って、スマホを取り出す。

 よくも無くさなかったもんだし、よくも壊れなかったもんだ。

 まあ、スマホが無事だったからって意味が有るのかって言えば、そうでも無いんだろうけどな。


「―――だと、思ったよ」

 壊れた様子はなく動作はするが、立っている“棒”はゼロで、圏外表示。

 念のため、ヒナに持たせている子供用スマホや会社をコールしてみるが、プップップッと接続先を探すサーチ音が続くだけで、どこにも繋がらない。


 バッテリー残量は8割ぐらいあるが、充電器を持ち歩いたりしないので、数日もすれば、漬物石にすら、ならなくなることだろう。

 一応、暫くは時計代わりに使いたいから、バッテリー消耗を抑えるために、電源を切っておく。


 落ち着こう・・・。

 慌てたり泣き叫んだりしたところで、事態が好転したりは、しない。

 手足を伸ばしてみたり、縮めてみたり、上体を捻ってみたり、してみる。


 あちこち、痛みはするが、体は動く。

 酷い目に遭ったが、幸いにも、感覚的に、骨折や重度の負傷はしていない模様。

 どうしようもないクソ親父だったが、頑丈な体に生んでくれたことだけは、感謝だ。


 クソ親父に愛想を尽かして、蒸発したって母親の顔は、知らない。

 知りたくもない。

 ごそごそと作業ジャケットのポケットを探り、ぺしゃんこに潰れた煙草のパッケージを取り出す。


「落っことしていなくて良かったぜ・・・」

 じきに無くなるのは見えていても、落ち着いて状況判断をしなきゃならない今は、タバコの存在を有り難く感じる。

 くの字に曲がった国産紙巻き煙草を、指先で伸ばして咥える。


 ささくれ立つ気分を宥めるように、深く吸い込んで、紫煙を吐く。

 「やめたら?」って、カナにも言われてたし、ヒナにも言われるが、なかなか、やめられないんだよなあ。

 酒は滅多に飲まないが、タバコだけは止められなかった。

 ま。今度ばかりは成功するだろうし、禁煙する良い機会なんだろう。


オジサン迷子になる⑩です。


二度目のタッチダウン!

次回、現場検証!?

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