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第1章 6話

ひと段落し、今後のための準備、いわば荷造りをするために僕は部屋に戻った。

 部屋を改めて見てみると僕の部屋には無造作に置かれている魔法の本しかない。引きこもっては魔法のことばっかり考えていたんだなと思わず失笑する。


「?」


 魔法についてがむしゃらになっていた時を懐かしんでいるとドアがノックされた。


「どうぞ?」


 家族ならノックしたと同時に入ってくるし、他の従事者だと必ずノックと同時に名前を呼んでくる。ノックだけ響かせる来訪者に疑問を抱きながら部屋に招くと、扉から現れたのは甲冑を見にまとった屈強な男だった。


「ウィル様であられますか?」


「そうですが、誰でしょうか?」


 そう答えると同時にがしゃんと片膝を地面につき、首を垂れた。


「図が高いところから失礼いたしました!私、ヴァルヴィデア王直属近衛兵総隊長のヴァレッドと申します」


 いや、すんごい礼儀正しい人って言うのはわかったけどむちゃくちゃ屈強だしがしゃんがしゃん言うし怖いよ・・・


「そ、そんな謙らないでください。頭をあげてくださいませんか?僕はもう王族でもなんでないんですから」


「やはり、あの噂は本当なのですね・・・」


 そう、僕はもうほぼ王族ではないのだ。ただのウィルだ。こんな僕に首を垂れる必要なんてない。


ヴァレッドさんは姿勢はそのままで頭を上げ僕を見る。


「私に、いえ、この王国の騎士たちはみなあなたが命の恩人です。先の龍はあの場にいたもので討伐はできたかもしれません。しかし、その被害は想定はできませんでした。あなたは私たちを救ってくださいました。その恩を言いたく、代表して仕りました」


 か


 か、か、か、かっこいい・・・

 この人はみんなを導く力がある。みんなを奮い立たせる心がある。そして、みんなを見守る優しさがある。そんなことを一瞬でわかるカリスマがある。


「ヴァレッドさん。僕は、引き篭もりでした。

みんなにたくさんの迷惑をかけました。でもここまで立ち直れたのは見捨てなかったみなさんのおかげです。ヴァレッドさんたちが僕を命の恩人だというのなら、僕にとってみなさんが僕の命の恩人です」


 だからおあいこですよ、と僕は言った。

 そう、僕は僕のやれることをしただけだ。それまでに僕はなにもしてなかった。屍だった。血の披露会のときだって近衛兵がすぐにうごいてくれたと聞く。もしかしたら僕はあの一瞬で死ぬかも知れなかったのだ。なのにここにこうして立っているのはやっぱりみんなのおかげに他ならない。そして僕は全員を無傷でどうにかしたわけではない。

 死にはしなかったが重症な人はたくさんいる。決して全員が助かったわけではないのだ。


「ウィル様・・・ウィル様が才能の塊だということはよく耳に聞きました。ロード様とは別の才があると国王様はおっしゃられてました。魔法に関しては先のことで十分に身に染みました。あのような魔力濃度を浴びたのは私が加わったどんな戦の中でも初めてでございます。魔力濃度の濃さから魔力酔いを起こしたのはひさしぶりでございます。しかし、こうして話してみるとあなたは、人間として傑物だ。すでに人として超えた領域を感じさせられます。ウィル様の苦労が、自問自答の末の苦悩が、身に染みます」


 ヴァレッド大絶賛である。

 僕は急な褒め言葉にどう対応していいか分からず苦笑いを浮かべてしまう。

 ていうか自己因子の魔力濃度だけでなく、他人の魔力による格差で魔力酔いなんて起こすのはなんとなく知っていたけど、確かにこれを意図的にできたら猫騙しには使えるかもしれない。

 魔法って奥が深いなあ、おっと、ついつい魔法脳になってしまうのは僕の悪いところだ。


「だからこそ、あなたにはこの国のこと、そして国王様のことについて知ってもらいたいのです」


 そう言ってヴァレッドさんは揺るぎない眼差しを僕に向けてきた。

 父様と、この国のこと・・・。

 僕は魔法のことしか知らないと思う。この国のことなんて中央国家の周りにあるちっぽけな国くらいの認識しかない。


「ヴァルヴィデア王国と父様についてですか?」


「はい、そうでございます。ウィル様からみた国王様は嫁の尻に敷かれているなよなよ国王に見えると思います」


 いや、でも実際その通りなんだけど、、


「ですが、国王様は剣の道を極めし者です。剣聖を超え、かつては戦場で剣の鬼、剣鬼と恐れられたお方なのです」


「!?」


 まじ?


「驚かれるのは無理もありません。国王様はもともと猪突猛進タイプ、いわば脳筋タイプなのです。考える前に動けが信条のような力がパワーだと言わんばかりのお方です。しかし、その強さとこの国の王族の長男ということから現王に選ばれました。国政はあまり国王様の領分ではないのです」


「父様、、」


「なので今回の件から国王様が政治から外れるのは、昔を知っている私たちからしたら案外にも良いことだったのだと思います。」


 そう言われると父様も気分が軽くなるだろう。父様は慕われているのだなと実感する。


「そしてヴァルヴィデア王国のことですが、ウィル様はどこまでご認識なされていますか?」


 それが正直、本当に中央王国の周りにあるちっさい王国にしか思っていないんだよなあ。


「お恥ずかしい話なんですが、僕の知識は魔法ばかりに偏ってまして、あまりこの国について知らないんです・・・。正直に言いますと中央王国の周りにあるちっさい王国にしか思ってないです」


「ウィル様・・・仕方ありません。あの”血の披露会”のせいでウィル様の時間は妨げられたのですから恥じる必要はどこにもありません!しかし、ウィル様のご認識はだいたい正しいです。ですがその小さい国に、大きな機能があるのです」


「機能?」


「左様です。まず中央王国の周りには6つの小王国があります。そしてその1つがこのヴァルヴィデア王国です」


 6つの王国?辺縁小王国でなく6つの王国ってことは、規則的な何かがあるってことなのか?


「そしてこの6つの小王国には先ほど言った機能が各々あります。それぞれを対角線に対称として中央王国の経済を担う”商業”の国、中央王国の技術を魔法を用いて発展させていく”魔法”の国、そして中央王国の戦略の要となり防衛線となる”武”の国であります」


 じゃあ僕らの国は、


「そうです。もう勘づかれてるとは思いますが私たちヴァルヴィデア王国は中央王国にとって1対をなす武の国の1つなのです。戦場で剣鬼と恐れられた現国王様がこのヴァルヴィデア王国の王に選ばれている理由はそう言う意味もあります」


 え、父様すごくない?

 中央王国にとって武の国なら王国にとってナンバーワンの強さの1人ってことだよね?


「父様ってそんな強かったんですね、、」


「はい、国王様だけでなく、私たちも最高戦力でなければならないのです」


 いや、カッコ良すぎか?

 歴戦の戦士の覚悟を目の前に惚気ていると、気になったことがある。


「ひとつ疑問なんだけど、そんな最高戦力である武の国の人たちは今さっきから言う戦場って何と戦っているの?」


「私たちが戦っているのは”魔物”と”人”であります」


「魔物と人?」


「そうでございます。中央王国はなぜ一対の小王国のシステムを築いてるといいますと、魔物が出る魔の森とその魔の森を超えた魔族の世界からの侵略、そして逆には自分の領域を広げんとせん帝国に挟まれているからなのです」


 うんうん、と僕は頷いていく。


「魔の森からは腹を空かせた魔物の群れや紛れ込んだ超凶悪化した魔物によるスタンピードなどが起きたり、魔族の侵略もたびたびあります。また、帝国からは毎日のように牽制されその境界線が戦場と化してます。私たちが担っているのは帝国からの牽制の防衛です」


 魔族、魔物、人、、か。

 種族が違っても争いは生まれるし、種族が同じでも争いが生まれている。

 わかってはいるけど、どうしてもみんなが笑顔で居られる世界であってほしいともどかしい気持ちになる。


「わかりました、、。僕たちの国は大切なことを担っていたのですね。そして父様は立派にこの中央王国を守っていたのですね。僕は、もっと力になれたと思います。あの腐った日々の悔しさは忘れません。僕はもっと父様から教わらなければならないことがたくさんありそうです」


 僕は父様から強さを学ばなければならない。一国を追放されたとは言えこの国を、中央王国を守り切ったその強さを。


「そうなのです。そしてだからこそ、私たちは1番の戦力でならないのにこの前のようなことが起きてしまいました・・・あれは、屈辱でした。ウィル様、ウィル様の力を持っていれば、そしてその力をより昇華させていけば私たちはいずれ出会うと思います。そのときに恥じないように、あのときのことにはならないくらいあなた様に頼られるくらいに!私たちは日々精進していきたいと思います。ですからどうか、これからもお変わりなくご自身の道を進んでください」


 それでは失礼しました、とまっすぐに熱く、礼儀正しくヴァレッドさんは部屋を出て行く。

 僕は熱い信念に奮い上がった。

 生きるのに技術と知識はいる。しかし人をつくるのは信念なんだと、ヴァレッドさんから学んだ気がする。


「ヴァレッドさん、僕も恥じないように会うために頑張ります」


 そしてそれから幾つ日か経ち、僕と母様と父様は城から旅立つのであった。

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