世界が終わると思ったら 前
世界が終わるらしい。
恐竜を絶滅させたのと同じ大きさの隕石が来年降って世界が終わるらしい。
一年前にそんな話が自分を含めた一般人の耳に入る頃にはすでになどうにもならないところまで来ていた。
電気が使えなくなり、暴動が起き、病気がちな自分が頼りにしていた病院や薬局が閉じる頃には、いつのまにかその世界最後の日が差し迫っていた。
目が覚めた。なんだか苦しくない。薬を飲まないでこんなに気分良く目が覚めたのは初めてのことだった。昨日は息をするのも苦しかったのに今日は気分がいい。
窓の外を見るとまだ日の出前だ。壁にかけられたカレンダーを見る。あー、今日で世界が終わるのか。となんとなく思っていたそんな時だった。
『おい。』
誰かに声をかけられた。その声はよく知っているものだった。
振り向くとそこには会いたかった幼馴染のショウがいた。
なんで自分の部屋にショウがいるんだ。
驚いて固まっていると、
『一緒に来て欲しい。』
そう言ったショウは自分の手を引いて外に連れ出した。
どこに行くのだろうか。
ショウに手を引かれながら思った。
ショウは無言でグイグイと自分を引っ張る。
手を引くショウの背中を見てあることを思い出した。
世界が終わる前にお前に会いたい。
それは携帯端末のメールボックスにショウから最後に送られてきたメールだった。
自分もショウに会いたかった。
それは世界が終わる前にショウのことが好きだと伝えたかったから。
しかし、それからショウからなんの連絡も来なかった。そうこうしているうちに、自分の携帯端末の電池が切れて使えなくなった。完全にショウと連絡を取りあえるものがなくなってしまったのだ。
しかし、世界が終わる前に会いたいって言っていたのに、、
一年近くほったらかしにするなんて、それも世界が終わるその日に帰ってくるなんてルーズすぎる。
あまりにも黙っているのにだんだん腹が立ってきた。
『元気だったの。』
『まあまあ。』
『どうやって町に帰ってきたの。』
『歩いて帰ってきた。』
自分が質問する、ショウが回答すると歩いている間繰り返した。
そんなやりとりをしているうちに目的の場所についたらしくショウは立ち止まる。
そこはショウと初めて会った町の高台にある公園だった。見晴らしが良くて天気がいい日は町全体が見渡せた。
夜明け前なせいか、町が良く見えなかった。
錆びついたベンチにショウと腰掛け、ぼんやりと景色を見る。
自分とショウしかいない早朝の公園は静かで、地面や草木に降りた朝露が時間を止めているようだった。
枯れ草が絡まったジャングルジム
滑るところは錆びて滑れなさそうな滑り台
子どもの頃に遊んだそれらの変化に長い時間の流れを感じざるをえなかった。
どうしてショウはここへ連れてきたのだろう。横に座っているショウは黙って自分の手をなぜかずっと握っている。別に嫌ではなかったしなぜか握っていて欲しかった。
どのくらい時間が経ったのだろう。
不意に辺りが明るくなる。日が昇ったのか。そう思っていたらショウは急に口を開いた。
『世界が終わる前に言いたかった。
好きだ。』
ショウは顔をじっと見つめてくる。
自分は驚き固まった。
まさかショウが告白してくるなんて思ってもいなかった。そんな自分を見たショウは話し始めた。
『カナにずっと言いたかった。今日で世界が終わるからその前にカナに伝えたかった』
いつもの落ち着いたショウと違うその様子に呆然としつつも、自分は言った。
『自分も好きだったよ。』
なぜか自分の体がふわっと軽くなった気がした。




