チームメイトの顔ぶれ
全国各地から集まったという設定は、大変な苦労を背負う結果となってしまいました。方言、難しいよお!
俺達は、他の奴らに構うことなく、さっさとドームを出ると、校内案内図に従ってD組の教室に向かった。全11クラスの教室は、全て初めに入った校舎にある。ところで、俺もいい加減ちびだが、前を歩くこの鬼島って奴も俺と同じくらいか、それよりもちびに見えた。だが、そんな外見とは裏腹に、この男かなり自信家で頭が切れそうだ。それは、案内図をまだ見足らなそうにしてる俺に、奴の自信に満ちた言葉で分かった。
「心配すんな。全部頭に入ったからよ。分からなかったことは、後でちゃんと教えてやっから。寮の部屋も隣だし、仲良くしようぜ。」 それだけ云うと、さっさと先導して教室に向かったのだ。
教室に入ると、そこはごく普通の教室の様だが、その普通の広さに僅かに机は5つで、俺達2人が1番乗りのせいか、随分殺風景に見えた、
「さあ、どんな女子が来るか楽しみだな。」 部屋の中ほどに集中した席に着かずに、窓際に来ていた。
「全然知らないのか?」 俺達は、自分たちが入って来た扉の方を見ていた。
「1番近い女川も離れてたし、濁音はかなり遠かったからな。お、誰か来たようだぜ。」 リズミカルな足音と共に現れたのは、やや大き目の女子だ。彼女は、まん丸の個性的な顔に満面の笑みを浮かべて、
「あたいは、和歌山出身の堂上ドレミ云うんよ。仲良うしてよ。」といきなり馴れ馴れしい関西弁で握手を求めて来た。顔ははっきり言って今一だが、本人はそんなこと全然気にしていない様な人懐っこい満面の笑みで、凄く明るい愛嬌のある女子に見えた。鬼島も同様に思っているのか、
「あー、こちらこそよろしくな。」と、早速それに応えて握手を交わしていた。だから俺も、
「こちらこそ、よろしく。」と、努めて笑顔で、彼に続いてその手を握った。多少肉付きはいいが、如何にも女子らしい柔らかい手の感触に、正直少し照れ臭かった。それに対して、彼女はとても満足そうにより一層口元を緩ませ、白い歯を見せて笑うと、
「早速やけど、あたい音楽大好きなんよ。皆にも聴いて欲しいし、ピアノ弾いてええ?」って、ピアノなんてどこにもないしなと思っていると、教室の横を通り過ぎる幾つかの足音に交じり、のしのしと歩いて近付く足音が聞こえた。そんで、鬼島と2人して教室の入口の方を気にしていると、戸をガラガラと開き、ジャージ姿のあの女子プロレスラー?が左肩に何か大きな物を背負って現れた。それには、俺はもちろん、鬼島も目を丸くしていた。
「ん様、ありがとう。」 戸の上に物をぶつけない様に少しだけ屈んで入って来た彼女に、ドレミは大きな声で云うと、
「お安い御用さ。で、どこへ置いたらいい?」と、怖い顔を少しだけ緩ませたくらいのぶっきらぼうな顔で訊いていた。ドレミに、教室の前の窓際の隅を指定されると、荷物を肩から下ろし、折りたたみ式の脚を立ててその場所に置くと、さっさと出て行った。物は、電子ピアノの様だ。ドレミは、予め用意していたアダプターで教室の隅っこのコンセントと繋ぐと、机用の椅子をその前に持って行き、こっちを振り返ると、
「何かリクエストある?」と、関西弁独特のイントネーションで訊いて来た。鬼島がさっと何かあるかと俺に向いて来たので、
「堂上さんの得意な曲が聴きたいよな。」と返すと、
「そうだな、俺も同じく。」
「ほな、これな。」と弾き始めたのは、聴き憶えのある様なクラシックだ。
「ビバルディの四季、春か。」 すぐに、ドレミにも聞こえるくらいの声で奴が云うと、
「鬼島君、めちゃ詳しいやん。」 え!こっち振り向いて云いながら、鍵盤にはしっかり対応していて、曲が一切乱れていない。余裕なのか?見事な演奏だ。その後は、彼女もすぐ向き直り、俺達も彼女の演奏にしばらく聞き惚れていた。そのせいか、いつの間にか来ていた2人目の女子に気付かなかった。
「何て素敵な演奏なん。」 ドレミとは少し違った柔らかい関西弁に振り向くと、そこには大柄で大人しそうな女子と、ドアの方から歩み寄って来る今来たばかりの様な、小柄で明るい笑顔の女子がいた。彼女らは、タイプは違ったが2人共かなり可愛い顔をしていた。そして、間もなく演奏が終わり、4人で拍手すると、ドレミが立ち上がってこちらへ来て、
「ありがとう、みんな。」と、満面の笑顔で応えた。
「みんな揃ったところで、改めて自己紹介するが、俺は千葉の船橋から来た鬼島金太。よろしくな。」 自然と5人輪になっていた。
「あたいは、音楽大好きの和歌山出身、堂上ドレミな。みんな、よろしゅう。」 時計周りになって、
「うちは、京都から来た、ごとうごー云います。御礼の御に藤の花の藤でごとう、行く帰るの行くに予報の予で英語読みして、ごーて読みます。よろしくお願いします。」 小柄で明るい感じの御藤さんに続いて、大柄のおっとりした彼女が、
「おら、宮城の田舎から来た女川めろでぃーでがす。御藤さんと同ずで、旋律と書いて、めろでぃーでがす。よろしくしてくない。」 かなり訛りのある話し方の彼女に、ドレミが笑顔で頷いていた。名前から言って、この2人は気が合いそうだなと思いながら、俺の番だ。
「山口から来た国長君主です。君主と書いて、くんどです。よろしくお願いします。」
第1節のメンバーが、ここに揃った。まずは、いい顔ぶれだ。
御覧頂きまして、ありがとうございます。<(_ _)> これからも、全国各地から来たというキャラクターを、それぞれの口調で登場させて参ります。




