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乙女ゲーの主人公にTS転生した私、シナリオを放棄して推しの悪役令嬢と2人で学園ダンジョンに挑む!  作者: 真嶋 青
第一部

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第38話 新たな依頼

 昔から思っていたことがある。

 どうして、面倒事というのはたて続けに、それも複雑に絡まりあって急に起こるものなのかと。


「リゼット君、リーナ君。連日呼び出してすまない。だが、緊急の案件なのだ」

「何があったのでしょう?」

「実は、あれからシャルル殿下たち一行の消息が絶たれている」


 ゾンビ事件から二日。

 再び私たちを呼び出した学園長が衝撃の言葉を告げた。


(あんな啖呵切っておいてヘマしてんじゃねぇよ!?)


 一緒に来ないことを後悔するだのなんだの言っていたのに、早速当人たちが行方不明になっている。

 シャルルは立場が立場だけに滑稽だと笑う事も出来ない。

 

(あの日、帰りの道中でシャルルたちと顔を合わせなかったことを幸いと思っていたんだけど。もしかすると、あの時点で何かが起こっていたのかもしれない)


 学園長が小さく唸り、重々しく口を開いた。

 

「それで、だな。大変言いにくいことなのだが、君たちにはある容疑がかかっている」


 聞き捨てならない言葉に、私は間髪入れずに聞き返す。

 

「はい? 容疑ですか?」


 学園長は、息を吐き、眉間に皺を寄せる。

 それから、苦々しい顔で、ゆっくりと口を開いた。

 

「ああ、本当に馬鹿げたことなのだがね。一部から、君たちが何か企てた結果、殿下たちの身に危険が迫ったのではないかと……」


 何かと悪評がつきまとうリゼットのことだ。

 都合悪くシャルルたちが行方を(くら)ます寸前に行動を共にしていたことも相まって、良からぬ噂が流れたのだろう。


「学園長、言っておきますがわたくしは……」

「わかっているとも。君が王族の命を狙って、何の得があるというのか、本当に馬鹿げた話だ」


 学園長はやれやれと頭を振る。


「しかし噂というのは業腹なもので、一度流れてしまえば勝手に膨らんでいく」


 人の口に戸は立てられぬ。

 昔の人はうまいことを言ったのものだ。


「君たちから報告のあった未知の存在、仮称を『アンデッド』とするが、本来は殿下たちとその調査をしてもらう予定であった。だが、こうなってしまっては悠長なことも言っていられん」

「要するに、わたくしたち二人で殿下たちを救出して来くるようにと、そう仰りたいのですね?」

「うむ。他ならぬ君たちが救出したとなれば、余計な噂も早々に絶ち消えるであろう。頼まれてくれまいか?」


 どの道、私たちが先を目指す上で、また十五層には潜ることになる。

 断る理由はない話だ。


 リゼットは、チラリと私を見た。

 一応、私の意思も確認してくれているのだろうか。

 

(なんだか半年前と比べて随分と丸くなったな)


 そんな思いが顔に出てしまったようで、リゼットは私の裏腿を蹴り飛ばす。

 

「いだっ」

「不敬罪よ」


 そんなやり取りの末、私たちは第一王子パーティーの救出作戦を決行することとなった。


 ◆


「どう思いますかご主人様?」

「どうもこうも、明らかに異常でしょう」


 再び十五層に突入した私たちを待っていたのは、三日前とは明らかに異様な空気に包まれた空間だった。

 水晶宮とでも言うべき、美しい様相が広がっていたはずの回廊は、黒い瘴気のようなものが漂う醜悪な空間に変貌している。


 その上、どことなく、臭い。

 それは、あのゾンビが纏っていた悪臭を想起させる。


「長居すると鼻が曲がってしまいそうね」

「何か臭いを誤魔化せるものがあれば良いんですけどね」

 

(臭い対策なら、ペストマスクくらいだったら作れるかもなぁ。鼻先が尖ったお面に香料を詰めるだけだし。その内、現代知識でなんちゃって新製品を開発してみるのも面白いかもしれない)


 上手くすれば、それなりの富を得られる可能性を秘めているのではなかろうか。

 

「……ワンチャンあるか? 憧れの現代知識無双」


 意味不明な私の言葉に、リゼットは不思議そうに首をかしげている。

 基本的には表情が乏しい彼女だけれど、実のところ感情表現はわかりやすい子なのだと最近では思うようになった。

 何かわからないことがあると首をかしげるその姿は、やたら可愛くて、いつもニヤケてしまいそうになる。

 本当にニヤケ面になると足が飛んでくるから必死に隠すのだが。


「よくわからない事を考えているみたいだけれど、あとになさい。出番よ、平民」


 固い声になったリゼットの視線の先には、例のゾンビ――アンデッドがいた。


「ご主人様も攻撃してみたりしません?」

「……襲ってくるなら迎撃はするわよ」

「まあ、たまには、私が先陣を切らせてもらいますか」

 

 やはりアンデッド係は私になるらしい。

 蠢きながらゆっくりと近づくそれに、私は突撃した。


「《ヒール》!」


 そして、蒼炎が上がる――。



 ダンジョンに潜り始めてから、私は既に十体のアンデッドを荼毘(だび)に付した。


「前回の個体を合わせたら、これで十一体……いえ、十一人と言った方が良いですかね?」

「知らないわよ」

 

 ダンジョンに入ってから立て続けに出会うアンデッドが不服なようで、リゼットはご機嫌斜めになっている。


「それにしても意外ですね。ご主人様にも苦手なものがあるとは」


 リゼットが苦手なものというと、これまではバルタザール教官くらいしか思いつかないものだった。

 殺しても死ななそうな人間という意味では、あの人もアンデッドみたいなものだろうか。

 

「死者が動き出すなんて、口にするだけでも悍ましいわ」


 リゼットは自身の肩を抱きながら、忌々しそうに語る。

 

「死は、生を全うした人間に与えられる、安らかな眠りであるべきよ。死したあとまで苦しみ続けるなんて、救われないじゃない……」

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