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Endless Vampire  作者: わっし
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一章二話・負祓部隊、"不滅(エンドレス)"

いたい。


くるしい。


こわい。


なんで。


どうしてこうなった。


なにも見えない。


めのまえがまっくらだ。


なにもきこえない。


でもみみがきーんってなる。


『ほう、まだ息があるか』


きこえた。


だれ。


『よかろう、褒美だ』




「うあああああああああああああッッッッッッ!!!!??」


いたい。


なんだこれ。


かみつかれてる?


いたい。


くるしい。


いたい。

くるしい。

いたいくるしい

いたいくるしいいたい

いたくるしたいしいくるいくたいしいいくるいたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


『フン』


『せいぜい我を楽しませろ』






















「はぁっはぁっ…はっ!!!」

閉じていた目が急に開き、ゆっくり瞬きを始める。朝だ。体を起こし、カーテンを見つめる。

「まだ若干早いか…」

微妙な差ながらも明るさがいつもと違ったので、側にあったスマホを手に取り虚無感のままにティッ◯トッ◯の動画をしばらくスライドしていた。すると本来の起床時間に鳴る目覚ましが鳴り響く。俺は顔をしかめて「うるさっ…」と呟きながらそれを止め、ゆっくり体を起こした。


「チーン」

という音が鳴ったのを確認し、俺はトースターからトーストを取り出す。トーストをケチャップ、ハム、ケチャップの順でトッピングする。チーズものせるべきだっただろうかと思ったが、すぐにどうでもよくなった。冷蔵庫から鉄分ドリンクを取り出し、ストローを差し込む。これは半分吸血鬼である俺の必需品だ。それを30ミリほど飲み、食卓に持っていく。

今日の朝食はハムトーストに鉄分ドリンク。うん、素晴らしい朝食だ。鉄分ドリンクのせいでコスパは微妙っちゃ微妙だが、そう思う事にしよう。


朝食を食べた後、制服に袖を通す。右袖を見ると、昨日破れたところは修復されていた。あの後、その日の間はそこを負力で補い、帰って繕ったためである。意外とこういう作業は得意なのである。

持ち物の確認は面倒なので、俺は置かれていたバッグをそのまま持ち、昨日の自分に運命を委ねて家を出た。


自転車で約30分という、面白みの無い距離を経て俺は自身の通う高校に着く。学校生活自体もなんの面白みも無く、特別感の無いものだ。

だが、今日は違う。今日は特別な日なのだ。そして特別とは、別にいい意味だけではなく、憂鬱な事がある日でもそう言うのだ。これを言うということは、もちろん今日は後者の特別、憂鬱な日。

理由は明解だろう。あの負祓師としての俺の教育係、白柳アリアにより、俺は勝手に部隊を組まされ、今日は早速その部隊で集まる日なのだ。はぁっとため息を着きながら、校門をくぐる。

俺は訳あって部隊を組みたくない。何とかしてアリアさんに抗議するつもりだ。…つまり、俺にとっての憂鬱とは、部隊を組まされた事ではなく…いや、それもあるのだが、どちらかといえば断る度胸を出さなければならないのが憂鬱なのだ。

だが、そこは割り切るしかないだろう。一瞬勇気を出すだけで俺のこれからが安泰となるのだ。いやー優しい世界。なんだかこの憂鬱な一日も、乗り切れる気がしてきた…気のせいか。俺はさっきまでの甘い考えに、再びはぁっとため息を吐く。

自転車置き場にさっきまで道を共にした相棒を置き去りにし、俺は校舎までの道を1人で歩く。

すると前方にきらめく銀髪の長い髪を見つけた。今日の憂鬱の原点であるその存在は、チラとこちらを見るとニコリと微笑んでひらひらと手を振ってきた。こっちはあんたのせいで沈んでいるというのに。

その後彼女はすぐに友達との談笑に戻った。こっちはあんたのせいでもないが1人だというのに。

さらに機嫌が悪くなってしまったが、俺はすかさずその気持ちを鎮める事に努める。彼女と関わるなら、この程度で怒りを見せてはやっていけないのだ。大丈夫。俺は何年もあの人とやって来ている。彼女との付き合い方は、俺が一番分かっている。…慣れたというわけではないが。

そんなこんなでいつの間にか校舎に入っていた。下駄箱から靴を取り出し、履き替える。そして、のそのそと廊下を歩き、教室を目指す。

人生は、一瞬と言われている。気づけば約束の時になっているだろう。


…昼休み。占領されている自分の席を尻目に、俺は廊下に出る。…時が思っているよりも進まない。怨体が絡んでいたりもせず、普通にそう感じるだけなのだが。意識している時の時間とは、ここまで遅く感じるものなのか…。

とりあえず昨日と同じ、カ◯リーメ◯トのある自販機へと向かう。必然的に昨日と同じ道を通るわけで、しかし昨日とは違い何の変哲も無い廊下を見て少し安心する。

…昨日の、あの怨体はすぐに討伐出来たからよかった。

だが、あれがもう少し大きかったり、強力な個体だったなら…被害はあったかもしれない。まあ、討伐自体はアリアさんがいたから余裕なのだが。

そうやって昨日のことを考えていると、前に人影が見えた。まさに昨日見た、いじめ被害者その人である。向こうもこちらに気づき、手を振りながら駆け寄り、話かけてきた。

「こんにちは!」

「昨日ぶりだな」

「昨日はありがとうございました…で、その…体は…大丈夫ですか?」

「問題無いな。痛みも残ってない」

少し腕を回して頑丈アピールをする。本当は吸血鬼パワーですぐに治ったからなのだが。

「そう…ですか」

よかったぁ〜と彼は安堵の彼は安堵のため息をした。俺の憂鬱のため息とは似ても似つかないな。

「そっちは大丈夫なのか?」

「え?僕…ですか?まだちょっと痛みますが…いつものことなので。」

「それは…大丈夫なのか?」

本当は怨体の影響が残ってないか、というニュアンスだったのだが、彼はそのことについては全く知らないので体の方の心配をしておいた。

それにいつものこととなると、何度も何度も繰り返されるいじめに対してさらに大きな負の感情からさらに強力な怨体が生まれてもおかしくはない。負祓師としては、抑制もしておきたいからな。

「大丈夫ですよ。ほら、もう少しで治ります!」

彼は両腕を大きく回した。俺の頑丈アピールのオマージュなのだろうか。

「必要なら俺から教師に報告しておくが」

「いえいえ、ただでさえ昨日助けてもらったばかりなのに…悪いですよ」

「…そうか。分かった」

彼の言う事を無視してこの後報告に行こうかとも思ったが、やめておく事にした。こういう性格の奴は、たいてい話を大事にしなくないと考えるものだ。なら尊重してやろうと思ったのだ。

だが、ここで何もしないというのもどうかと思うので、一応いつでも味方になるということを言っておくぐらいはしておくか。

「やばいと思ったら相談してくれ。何かあった時に後味が悪い」

「…はい!お気遣い感謝します!」

…そこまで敬語を使われる言われはないのだが。そういうのは直せと言って直るものではない。それに、これから関わる事があるかもわからないしな。

「それでは!」

彼は手を大きく振りながら去っていった。俺もポケットに突っ込んでいた左手を出して手を振った。天皇陛下の如く。

校舎に付いている時計を見ると、まだあまり時間は経っていない。良くも悪くも、まだ食事(カ◯リーメ◯ト)にありつける。例の自販機の前に立ち、ポケットに入れていた小銭を探る。取り出した小銭はギリギリの額だった。補充しないとな、と思いながら小銭を投入する。小銭が切れている事は明日まで覚えていることを願っておこう。

ゴトン、という音と共に落ちてきた箱を開け、バーを一本取り出す。それを先から少しずつ口から喉へと通してゆく。何度食べても変わらない、水分を必要とする味。だが、しっかり中身というものが存在している、実に興味深い味だ。この味は、移動しながら噛みしめるとしよう。

俺は歩きながら再び時計を見る。昨日とは違い、随分余裕がある。昨日のようにならなさそうなことを確認し、今日初の安堵のため息を漏らす。なんだ、できるじゃないか安堵のため息。

だが、憂鬱であることには変わりない。遅かれ、時は刻一刻と近づいてきている。


俺は今、この学校の裏門にいる。そう、なんやかんやで約束の時がきたのだ。…まあまだ少しあるのだが。昨日学校では『放課後』としか言われなかったが、ラインでその後詳細が発表された。『詳細発表〜』と芸人の画像付きで。それで判明した時刻は、俺が終業後、家に帰って着替えてから徒歩でもう一度来ても全然間に合う時間だった。だからまさにその通りにして来たのだが…誰一人としてまだ到着しておらず、俺はこうしてスマホをいじっている状態である。その状態でしばらく経っているのだが。

まだ誰も来ないのかと思い、横を見ると、男が1人、こちらに歩いてくるのが見えた。白い髪をシールスマッシュにした男だ。おそらく高校生、身長は平均ぐらいか。男はあくびをしながらこちらに向かってきた。そして俺の隣…というより掲示板を挟んだ隣に立った。俺はその男を観察してみる事にした。バチバチのピアス、キラキラのネックレスと、見るからにチャラ男…陽の人間といった感じだ。もしやこいつだろうか。…いやまて。こいつ、全然俺の方を見ない。もしや気づいてないのか…?俺はさらに観察してみる。人は近くに何かがいると、そっちを見てしまうものだし、負祓師ならなおさら、持つ負力の大きさでこちらを負祓師とし、話かけてくるはずだ。

だが、こいつはそういう素振りを一切見せない。…うん、こいつ絶対気づいてないだろ。

そうしてしばらく観察していると、ようやく彼はこちらを認識した。どうやら気づかれていないことに動揺して、ぴょこぴょこ動いてしまっていたらしい。…自分で言っといてなのだが、ぴょこぴょこというのはいささか可愛い表現だったか。

「や。君もここで待ち合わせしてるカンジ?」

「…まあ…そうですね」

一応敬語を使ってみたが、すぐに「かしこまんなくていいって」と言われたので、わかったと軽く頷いて、タメ語で「それにしてもすごい偶然だな」と話を戻す。

「同じ場所、同じ時間に待ち合わせ場所被るなんてことがあるのか」

「世界って広いねぇ」

どういうコメントだ。使い方合ってるか?それ。狭いな、世界。

「…でもあんまし良さげな案件じゃなさそ?」

「…そんなとこだが…よくわかったな」

表情をうかがっているあたり、おそらく表情から察したんだろうが。

「…そんな分かりやすい顔してたか?俺」

「死んだウミウシよりもひどい顔だ」

ウミウシの顔わかんねえよ。というか初対面の人にズバズバいくなこいつ。

なんてツッコミ、初対面の人に言えるはずもなく、「まじか」とだけ返した。俺はこいつほどデリカシーが無い奴ではないのだ。

「な〜んでそんな顔してんの?ざっくりわけ聞かせて」

やっぱズバズバいくなこいつ…と思ったが、話すのはざっくりな理由だけで、内容は話さなくていいらしい。デリカシーもそこそこ備えてはいるようだ。

それにこれは、こいつが負祓者であるか真に確かめるチャンス。

「これから顔も名前も知らない人たちに会うんだ。それこそお前みたいなのだ。だが…」

俺はふと目を閉じる。浮かんできた昔の景色と声に一瞬顔をしかめつつも、いつものように平常心に戻す。そしてその景色を、出来るだけ抽象的に言葉にする。

「…俺はそういうのに何度も失敗した。だから同じ轍を踏まないように、最初から関わらないことを選ぶつもりだ。今はどう突き離すかで悩んでる」

ありのままを話した。俺は今、意外と真剣に悩んでいるのだ。

「そういうコミュニケーション的なやつ得意だろ?多分。なんかいいやり方とかないか?」

彼はう〜んと数秒考えてから言った。

「わからないかな。そういう考え方をしたことがないからさ。むしろ君の『過去から逃げる』やり方に少し嫌悪感を抱いてるよ」

「『過去から逃げる』って…俺は『過去から学んだ』だけだ。そもそも初対面の人相手に言う事じゃねえだろ」

「どーだか。とりあえずまだ誰も来なさそうだし、僕はコンビニでも行って時間つぶしてくるよ」

「俺といたくないだけだろ」

「…あんましそういうことは、人に言わない方がいいかもね。怒りまかせだとしても。じゃね〜」

「…」

俺はしばらく少し早い足取りで離れていく奴の背を見ていた。

橙色の夕日と共に吹きつけてくる風が、夜を呼んでくる。とても涼しい。そう思えるほどに、俺の身体は熱を帯びていた。

怒っていた?俺が?事実を述べるだけなのにか?むしろ心の底に怒りを見せて失礼な事を言ったのは、あっちじゃないのか。…何を考えているんだか、俺は。

誰かが来る前にあいつのことは忘れよう。あいつの負力を感じ取るのは忘れていたが、あんなチャラチャラした奴が、負祓師なわけがない。

一般人が、何をもって負祓師になるのか。前にアリアさんが言っていた。

『もとより人には、負力を蓄える見えない器官があります。その器官には小さい穴がありまして、そこから少しず〜つ負力を放出するのです。負力は負の感情から無限に生まれるものですから』

『蓄える量には限界があるんですか?』

『そこです。素晴らしい質問をしましたね弟切くん。30点あげましょう』

『あんまり高くないですね』

『私がそう簡単に点をあげるとでも?というか、今の質問マイナス20点です』

『…続きをどうぞ』

『はい。先程言っていた負力を蓄える器官にも当然限度はあります。一度に溢れる程の負力が生まれれば、もちろん小さな穴では放出しきれません。ここからは二択です』

『二択?』

『負力を無理に放出しようとするには、穴を広げる他ありません。ですが、負力に押されながら開こうとすると、それは歪な形をします。それに負の感情そのものが乗る事で、負力は実態を成す。それが怨体です。』

『怨体はそうやって生まれてたんですね。で、それが負祓師の誕生とどう関係が?』

『こっちのパターンはそれに関係はありません。重要なのは、もう一パターンの方です。

大きな負力が生まれた時、稀にこういう事が起こるのです。器官が、既にある穴を広げるのではなく、もっと万能な穴を作ろうとするのです。』

『万能な穴?』

『はい。通称[負祓師ゲート]。怨体関係だと開く確率は上がります』

その名称はいつ生まれたのだろうか。ゲートなんて言葉を使うあたり、結構最近なのかもしれない。

『そのゲートは放出だけでなく、身体の隅々に負力を行き渡せることができたり、任意での放出や感情の制御が少し上手になったりします。結果、怨体を視認したり、身体能力が向上したり、怨体が生まれる可能性が限りなくゼロに近くなります。

そう、その2つ目のゲートが開いたものこそが、私たち負祓師なのです』

はい、アリアさんの負祓師講座はこれにて終了。パチパチ。

とまあつまりは、

負祓師は、何らかの怨体関係の良くない過去がある、ということだ。

だから、あんなチャラ男が負祓師なわけがないのだ。と、少々物思いにふけってしまったな。…って、まだ誰も来てないのか。

「…ちょっと」

目を閉じていると、ふと、声がした。

「どきなさいよ、そこ」

紫色の髪の毛をツインテールにした女。年は同じぐらいか。

というか、こいつも初対面に対してすごいこと言うな。一応聞いてみた

「お前は負祓師か?」

「だったら何よ。…ってあんたがそうなの?嫌なんだけど…てか、早くそこどきなさいよ」

「なんでだ?」

というか、しれっと傷つくことを言うな。

「もたれたいからに決まってるじゃない。あたしは疲れたの。」

「俺の横が空いてるだろ」

もしくは、掲示板を挟んだところにいてさっきの奴の居場所をなくしてくれても構わないが。

「え絶対嫌。なんであたしがそんなことしなきゃならないのよ」

「オイコラ…」

というか、それなら俺がいた場所に立つのはいいのだろうか…。

「あ、あの…」

ツインテール女の後ろから、また別の声がした。少し弱々しい声だ。声の主は金髪で、後ろに少し大きめのリボンを付けている。見た目も全体的に弱々しく、小動物を彷彿させるとはこういう時に使うものだろう。

「何よ」

「あっ…いえ…なんでも…」

弱いって。いくらなんでも押し負けるのが早すぎるだろうが。その分の負担が俺の方に飛んできそうなのだが…。

よし。こいつの攻撃を食らう前に俺がフォローに入るとしよう。

「何か言いたいことがあったのか?」

「あ、いえ…大した事じゃ…」

「何よ」

「ひぃっ…すみませぇん…」

だから弱いって。俺のせっかくのフォローを…いやまだだ。まだ終わっちゃいねぇぜ、俺の助け舟物語は…。

「とりあえず言ってみろよ」

「は、はぃ…そ、その…」

少し間が空く。暫くもじもじした後、意を決したように彼女は口を開いた。

「その…自己紹介…とか。あ、私は優莉乃ゆりの 善瑠えるって言います…その…よろしく…お願いします…ハィ…」

最後まで弱々しいな。

「自己紹介…ね。んまあ、先にやったあんたに免じてしてやらなくもないわ。…そうね。尖原とがらはら 紫亜しあよ。はい次あんた」

「えこれ俺もする流れか?」

「当たり前じゃない。もうみんなしたんだから。それとも何よ。あんただけしないつもり?そしたらディストピアへと誘ってあげるけど」

「聞いたこと無い脅しだがなるほどとても怖い」

個人的にはこれから組むのを断るつもりなので、そういうのはできるだけしない方が好都合ではあるのだが…ディストピアに行くのは嫌だな。仕方ない。

「…弟切 阨火だ。これでいいか」

「血の池地獄ぐらいにまけてやらなくもないわ」

「変わんねぇじゃねぇか」

した意味ねぇじゃねえか、自己紹介。え、ディストピアより血の池地獄の方が軽いの?ディストピアがやばいだけだったりする?

そんなどうでもいいツッコミを頭に巡らせていると、聞きなじみのある声が話に割り込んで来た。

「おやおや、中々楽しそうですねぇ。素晴らしいコミュ力です」

「どこが楽しそうなんですか…」

「やっと来たわね」

輝く銀髪。輝く四芒星の瞳。輝くネックレス。輝く…かは微妙な笑顔。輝きに輝く少女…ここでは上司の白柳 アリア。

「とても憂鬱という顔をしていますね弟切くん。」

誰のせいだよ。

「そしてとても軽蔑という顔をしていますね尖原さん」

「誰のせいよ」

言うんかい。俺は自粛したのに。

「そろいましたか…と、言いたいところですが、あと1人がまだですね」

「げ。まだいんの?」

それは俺も思った。霊祓部隊…部隊といっても最小2人から組め、基本3人か4人で組むからだ。ガチの部隊という感じがするのは、数ある負祓部隊の中でも1部隊だけである。つまり、アリアさんを含めるとすればこの人数でちょうどぐらいだからだ。

…そして、とても嫌な予感がする。あと一人…やめてくれ本当に。あいつだけは…

「ヘーイヤッフゥ!帰還なうだぜ〜ぃ!!」

…本当にやめてくれ。

「げ。お前ま〜だいたの?…って…」

コンビニから帰還したチャラ男は、俺と…奥にいたアリアさんを目に留めた。

「お、全員来ましたね」

「あえ?あんたがいるってことは…お前かよちくしょォォォォッッッ!!!」

お互い負力を感じ取るのを忘れた2人の男は、同じことを思って、1人は頭の中で、1人は大声で叫んだ。


「嫌ですよ、俺は」

「こいつとは嫌なんですけど〜」

「フン、こっちから願い下げよ」

「あ、あの…」

集められた4名のうち3名が口々にわめいた。

「…そこまで言わなくても…」

「あんたは黙ってなさい」

「ひぅ…」

内1名は可哀想だった。

「う〜んこれは困りましたねぇ〜」

にも関わらず、元凶である少女は、言葉とは裏腹に全く困った様子のないいつもの笑みで、指を口元に当てて少し首を傾けた。

「拒否権を用意した覚えはないんですけどねぇ〜」

どこにその権限があるんだよ。とは言えない。少々古い考え方にはなるが、この少女は一応上司であるため、命令には逆らわない方がいいのだ。それに…

「それでも嫌だというのなら…」

「な、何よ…」


   ピュン


俺の首筋の側を何かが通った。通ったとはまた違う感覚だったかもしれないが。一瞬。俺の首に小さな切傷ができ、横にあった掲示板のチラシが、一瞬現れた青い光と共に真っ二つとなった。銀髪の少女はニコリと笑い、

「…こうなりますよ」

犯罪レベルの脅迫で、全員を従わせた。


「はぁ…憂鬱なんですケド」

「こっちのセリフだ」

俺とチャラ男…猫羽ねこま 猪磊斗いらとはバチバチに睨み合っていた。それはそうと、俺達はある場所に来ていた。廃校である。都市部には数少ない場所だが…アリアさんいわく、『他生物の負力は弱く、故に人のいないところに負力は集まりにくい。さらに弱い怨体たちは、より強い負力を避けようとします。だから、こういう負力のたまらない、人のいないところには弱い怨体が集まります』らしい。定期的に駆除しないと、それらが集まって強い個体が生まれる可能性があるため、その駆除を任されたというわけだ。それに、弱い怨体ばかりだから、力を見せ合うのにちょうどいいとのことだ。

ちなみに、侵入の許可は取っていないらしい。負祓師は政府公認の組織だが、その存在はほんの一握りの人間しか知らない。だから色々面倒だったのだろう。

なんて考えながら朽ちかけた廊下を歩く。ザリ、ザリ、と砂だか埃だかの気持ち悪い音が響く。

「いましたね」

その言葉に反応するように、足音が止まる。変わりに、

「キュルルルル…」

「キィィィィィ…」

「デュルル…」

などという、この世のものとは思えない、気持ちの悪い声があちこちから聞こえた。声の主たちが次々と姿を見せる。こちらも、戦闘準備という形で応答する。


「「「「祓剣解放」」」」


濃い紺色の髪の小柄な男、白い髪のキラキラした男、紫色の髪をツインテールにした女、金髪のか弱そうな女は、同時にそう唱えた。それぞれの手元から、それぞれの武器が錬成される。さらに、服も、色とりどりの私服から、黒い隊服の上に黒いローブを羽織ったスタイルへと変わる。

「そういえば、部隊名とかは決めているんですか?」

1人戦闘準備をしない(おそらくは俺達にやらせるため)アリアさんはそう聞いた。その問いを聞いて、そんなわけがないだろう、と他の3人も含め思ったことだろう。あの空気感でそんなもの、決められるわけがない。少なくとも、俺は組む気は無いので、事前に決めたって意味が無い。

そんな全員の思考を沈黙の様子から読み取ったかのように、少女は言った。これから始まる戦いの、始まりを告げるように。

「それでは私から、負祓部隊"不滅エンドレス"の名を与えます。誰一人欠けること無く、速やかに任務を遂行してください。では―」


「―負祓…開始」

読んでいただき、ありがとうございます。

次回は新しい単語がかなり出ると思います。できるだけわかりやすい説明を心がけますので、どうぞよろしくお願いします。

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