一章一話・血の音
終わりとは、なんだろうか。
生の終着点だろうか。物語の終わりと言う観点で行くと、結末、〆といった感じだろうか。
終わり…死を幸福だと思うものもいれば、ハッピーエンドが一番というものもいる。
だが誰しも、最後には幸せでいたいと思わないだろうか?
では、幸せとは、なんだろうか。
誰かと居る日々、だとかそのあたりだろうか?
とりとめのない事を言ってしまったから、結論を言おう。終わりは、幸せであれ、と。終わりなき幸せであれ、と。
「ひぃっ!?やっ…やめ…ぐぁっ!!」
…どうやら俺、弟切 阨火は気持ちの悪いものに出くわしてしまったようだ。
ここは東京のどこかの高校。自分が通っている学校にも関わらず、名前は覚えていない。
今は昼休憩の時間なので、カ◯リーメ◯トでも買いに行こうかなと思い、歩いていたら階段周辺で立ち止まる。踊り場でいじめの現場らしきものを見つけてしまったのだ。わざわざ使う人がほとんどいないような階段を使ったのが失敗だった。
いや、幸いまだこっちは見つかっていない。今すぐこの場を立ち去り、別ルートでカ◯リーメ◯トを迎えに行こう。そう思った。
だがそう思った頃には、もう遅かった。見つかったというわけではない。
何を思ったのか、彼らにスマホを向け、俺は写真を撮ったのだ。誰も使わない階段、もちろんパシャリという音は響くわけで。連中はすぐにこちらを認識し、何か怒鳴りながらズカズカとこちらに歩いててきた。
何を言っているのかはあまり聞いていなかったが、まあ当然お怒りのようで。「聞いてんのかゴラァ!!」と勢いよくいい音でぶん殴られ、その後はそいつらに蹴ったり殴られたりでボコボコにされた。元々顔に絆創膏やらつけているので、しばらくは跡が目立たないのは幸いだが。でも汚れるのはちょっと嫌だな。
奥を見ると、被害者が申し訳なさそうにして…いや、どうしていいかわからずにオドオドしているみたいだった。とりあえず俺はバレないように被害者に逃げるよう合図をしておく。被害者はそれに気づき、一瞬戸惑ったものの、意を決してそそくさと逃げていった。
いじめっ子のほうも気が済んだらしく、ちぇっと舌打ちし、奴らは去っていった。いじめっ子的に恐怖の刻み込みは完了したということなのだろう。別に何も恐くはなかったのだが。
「…痛え」
…というか、本当に何を思ったのだろうか。俺は何も考えずに人を助けるような人間ではない。むしろ見捨てるようなタイプだと思う。そんな俺が無条件で人を助けたのだ。何かを思ってそうしたはずである。昔の自分でも見たのだろうか…だがそんな光景、過去にあっても覚えていない。
おっとそろそろカ◯リーメ◯トを買う時間が無くなるではないか、さっきのことは忘れて急ぐとしよう。
廊下の上を、とても急いでいるとは思えないような速度で進む。やっと自販機が見えた。俺の昼休憩は目前だ…そう思い、ポケットの小銭を取り出そうとしたところで、再び嫌なものに出くわしてしまった。さっきのいじめられっ子がうずくまっているのを見つけたのだ。そういえば俺が助けたときに逃げ切れたのか、よかった。
ちなみになぜ嫌なものと思ったのかというと、単純に嫌な予感がしたからである。
「ううっ…ううああっ…」
…本当にどうしよう、これ。このまま通り過ぎるのもいいのだが、それは流石に酷だと思う。そもそも、こんなところでうずくまって何をしているのだろうか?頭を抱えているということは頭痛なのだろうか?ならさっき殴られたところが痛む、ということか。ではなおさら大丈夫なのだろうか…?
俺が例のものを買う時間を削ってまで葛藤している間に、俺の嫌な予感は予想外の形で的中した。
「ゔゔゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」
突然の叫びに俺は少し驚いたが、そんなものとは比にならない程の出来事が起こった。
彼の身体が禍々しい何かを纏ったかと思えば、それが実態へと変貌し、黒い身体に大量の眼をもつ、まさに異形、大きな化物というやつが出現したのだ。化物はズシン、と音を立て、不気味な鳴き声を発しながらこちらを見た。
「ギギギ…ギュルルルルルルル…」
「なんだ、これ…」
瞳孔をかっ開き、尻もちをつく。
恐い。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
息が、詰まる。呼吸が、荒くなる。
恐い。恐い。
「うグッ!!??ゔぁああああああああああッッッ!!!!」
化物の、身体の一部が、俺の、右腕を、抉った。
「ッハァッ…ハァッ…うグッ…」
ポタッ…ポタッ…という、先程まで右腕だったものから滴り落ちる音が、過呼吸音によってかき消される。
痛みがかき消されることも、恐怖がかき消されることも、無かったが。
「はァッ…はァッ…ゔぁッ…あ゙あ゙ッ…ぐッ…」
恐い 恐い 恐い 恐い 恐い 恐い 恐い 恐い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い
いたい
化物は俺の身長を直径としても足りないぐらいの大きな口を開き、
そのまま俺を、飲み込んだ
「ギィィィィァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
とてつもない雄叫びと共に、化物の背中が内側から引き裂かれた。シャァァァァと、血飛沫が雨のように振り注ぐ。
「…冷てえ」
化物の大量の紫色の血飛沫を浴びながら、化物の肉塊を両手に持って、その体内から脱出した俺はそう呟いた。
そして肉塊を放り投げ、口元についた体液を拭い、構える。
「ギィィィァァァ…」
先程の突然の痛みに悶絶する化物だったが、30秒もすると頭を上げ、こちらを認識した。
そして大きく唸り、大きな体で勢いよくこちらに突進してきた。
俺は飛び上がり、すんでのところで回避する。そして、内部の露出した化物の背中側に狙いを定める。
「はあああぁぁぁぁぁッッッ!!」
拳を大きく振り上げ、赤い稲妻を帯びた一撃をお見舞いする。
「ギィィィィィィィィィィィィァァァァァァァァ!!!」
甲高い雄叫びが鳴り響く。直後、小さく「パリン」、という音がして、間もなく化物は倒れ伏し、徐々にその体が少しずつ塵となって崩壊していく。
「こんな真っ昼間からよくやりますねぇ、弟切くんは」
背後から声が聞こえた。振り返ると、なじみのある顔が、そこにはあった。窓のところに年下の女子が足を組んで座っている。真っ白に見える銀髪をロングにした、四芒星の瞳を持ち、いつでも微笑んでいる少女だ。名は…白柳アリア(しろやなぎ アリア)という。
「アリアさんも何してるんですか、こんなところで」
「おや、倒置法返しですか」
「いや意識してないですよ」
最近習ったことをネタにして遊ぶ中学生か。
ちなみにさっき年下と言ったが見た目に反して年上、なんてことも無く普通に1つ下の高1である。つまり俺は高2。
「にしてもやっぱりいいですね、その姿。私にも強化形態が欲しいものです」
「別にあなたには要らないでしょう…」
俺の外見は背が少し低め、普段は紺色に近い黒色の髪で、右目を髪で隠している、といった感じなのだが、今さっきのように一時的に赤の混じり毛が入ってくる事がある。
強化形態…吸血鬼状態だ。
そう、言い忘れていたが俺は吸血鬼なのだ。
俺は過去にある事件に巻き込まれた…というよりがっつり被害を受けた。ある場所で、吸血鬼に襲われたのだ。何を言っているのかと思うかもしれないが、そうなのだ。俺はその時、半吸血鬼化という形で、吸血鬼となった。この半吸血鬼化というのがとても都合がよく、太陽で焼けず、吸血衝動というやつも鉄分摂取でなんとかなる。(トマトジュースの効果は微妙だったが。)それでいて不死身であり回復力が鬼高い。さっき右腕が再生したのもそういうことだ。
これだけ聞くと吸血鬼化にデメリットは無いように思えるだろう。…だが、俺は思うのだ。もし吸血鬼化が進行したら?そもそも不死身なのは人間と言えるだろうか?結論として、俺は普通の人間に戻りたいと思っている。それにだ。俺は覚えている。脳裏に焼きついている。あの時の恐怖を。先程化物と対峙した時の恐怖。あれは演技というやつだが、あれを演技でないとしよう。あれよりも遥か上をゆく恐怖。肌で感じる命の危機。それは当時5歳の幼子の記憶に深く刻み込まれた。
「ほぅ…貴様、面白い。特別に我が眷属としてやろう。そしていつか我の元に来い。そして…我を楽しませろ」
前後の記憶はほとんど無いものの、その言葉を忘れたことはない。ああ、いいぜ。楽しませてやるよ。それが吸血鬼化を解く1つの方法かもしれないしな。
あの吸血鬼を殺す。それが俺の目標。いわば…復讐。
「決意の目をしてますね、病の再発ですか?」
「間接的にイタいって言わないでください…」
そしてこの少女、白柳アリア。彼女だけが、俺が半分吸血鬼であることを知っている。
「ところで弟切くん、そろそろ組まないんですか?霊祓部隊」
この世界には怨体という、人間の負の感情…負力から生まれる化物がいる。さっきののような化物のことだ。それを討伐するのが霊祓師という人たちであり、霊祓師が数人集まって怨体と戦う。それが霊祓部隊なのだが…
「あんたも知っているでしょ。俺と組んだやつが、どうなったか。」
ちなみにアリアさんは俺の教育係というやつで、一応上司である。ただ、5年程前からの付き合いなので、敬語は染み付いていても、敬う気は一切無い。…実力以外は、だが。
その時突然、完全に崩壊しつつあるあの怨体の腕がアリアさんに飛びつく。が、アリアさんは座ったままそれを受け止め、笑顔のまま勢いよく壁に叩きつけた。グチャッと音を立て、体液が辺りに飛び散る。崩壊が加速し、やがて飛び散った体液までも塵となって消えていった。
これで彼女がヤバいことがある程度わかっただろう。俺は内心引きながら、さっきの話を続ける。
「とにかく、俺は誰とも組まない。あんなことになるくらいなら、1人でいい。その方針は変わりませんよ」
俺はさっきのいじめられっ子を保健室へと運び、ようやく買えたカ◯リーメ◯トをやや急ぎで口に入れて言った。
霊祓師になってからも、俺は少し一悶着あったのだ。そのことを思い出して、頭が痛くなる。頭痛で吐き気が出る前に、カ◯リーメ◯トを水で流し込んだ。
「そう言うと思って私が組んでおきましたよ、部隊」
飲み込みかけたそれを盛大に噴き出した。
「はあっ!?ちょ、え、今なんて…」
「組んでおきましたよ、部隊を。はい、大事なことなのでもう一度倒置法で言いました」
「倒置法はもういいんですよ!!何勝手なことしてくれてるんですか!!!」
「今日は私の倒置法デーなんですよ。ただ、それは明日もそうかもしれませんし来週もそうかもしれません」
「そっちに話傾けなくていいんですよ!!そして既に終わっちゃってないですかその倒置法デー!!え?てかあなた俺の過去知ってますよね!!??」
「大丈夫ですよ。吸血鬼の力を使わなくても、弟切くんは強いですから」
「それは嬉しいですけど…」
それでも万が一に対応出来る程ではないと思う。そしてやっぱ倒置法デーはさっき終わったみたいだ。
「というわけで明日の放課後この学校の裏門に集合してください」
「急すぎる!!」
「別に弟切くんに予定など無いでしょう?」
「すごい失礼だな!!悪魔ですか!!」
「いいえ、アリアちゃんです」
「答えになってない!!」
「ふふ。では明日に」
「ちょまっ…」
そう言うと、彼女は消えるように一瞬でその場から居なくなった。
ん?ちょっと待て。今何分…
『キーンコーンカーンコーン』
その音を聞いた時、完全に理解した。迷惑にも、単に彼女は嫌がらせをしに来ていたのだ。自分はすぐ戻れるからと、限界まで遅延行為をくらった。
まんまと、あの少女にしてやられたというわけだ。
間もなく、俺は畜生とけして大きくはない声で叫びながら猛ダッシュで教室へと戻るのだった。
これは、吸血鬼化を解くための物語。復讐の物語。そして…終わりを見つける物語。
はじめまして!わっしといいます!これは友達と漫画を描こうという話が出た時に、少々妄想がはかどったので暇つぶしに投稿しようというものでございます(もうすぐ受験生というのになにしてんだ)
ともかく、読んでいただき、ありがとうございます!なにせ始めてやることなので、感想やここをこうしたらいい、みたいなのがあったら教えていただけたらなとぉいます!では、次の機会に!(それっぽい挨拶)




