れん@パパ活
前回のあらすじ!
バッファローの群れにロードキルされた先生のお見舞いに行くれんちゃん。病院をホテル代わりに使っていた先生は、退院後の住居を探す必要があるという。先生の好意でいっしょに住宅の内見するれんちゃんは、不動産屋に事故物件を案内される。現れた幽霊を除霊し、無事住居問題も解決したれんちゃんだったが、先生は保険金詐欺で訴えられたのだった。
「だんちゃん、ちょっといい?」
「いいよー?」
授業が終わって放課後。
私ことれんちゃんは、さっちゃんから声をかけられていた。
正しくは声をかけられたのは妹のだんちゃんなのだが、だんちゃんには未だ私が憑りついたまま。
返事をするのも私になる。
「せっちゃんがさー、一緒にサファリ行かないって言ってるんだけど、行く?」
「行くー」
〈ちょっとちょっと! なに勝手に返事してるの!〉
が、いつものように返事をすると、だんちゃんに怒られてしまった。
(え? ダメだった?)
〈ダメじゃないけど、サファリってあのサファリよ?
経営者が超魔王に従業員がモンスターなのよ?
もうちょっと考えてからにしなさい〉
(うーん、でも、そんなサファリにさっちゃん達だけで行かせるのもアレだし、この間、ちょーさんの謝罪会見が流れてたし、様子くらい見に行った方がいいかなって)
〈……はあ、もう、変な魔法とか使わないでよ?〉
頭の中で盛大にため息をつくだんちゃん。
なんだかんだ言って、だんちゃんも友達が心配のようだ。
「これからすぐだけど、大丈夫?」
「だいじょうぶー」
機嫌よく返事をして、さっちゃんと一緒に学校の裏へ。
待っていたのは、少し前のカラコンで一緒になったギャルらしき生徒。
せっちゃんだ。
「こっちこっち。あ、だんちゃんも来たんだ。よかったー。
すーちゃんがバイトで来れなくなったから、ちょっと心配だったんだよね」
「え? すーちゃんドタキャン? せっかくのパパ活なのに?」
「それがさ、ちょーさんも結婚してからお嫁さんに財布握られちゃったみたいで、あんまり稼げないし、彼氏はパパ活にいい顔しないし、そろそろ引き際かな、だって」
さっちゃんとせっちゃんがすさまじい会話をしているが、きっと底辺校ではこれが普通なのだろう。
(ていうか、サファリ行くのって、パパ活だったんだ)
〈ああうん、きっとちょーさんが金の代わりにサファリの入場チケットでも渡したんじゃない?〉
投げやりなだんちゃんをよそに、ギャル二人の会話は続く。
この間はオタクが相手だっただの、
カードショップに連れていかれて○かっただの、
鉄オタ相手で山の中から望遠カメラで電車撮る手伝いさせられただの、
自称記者が出てきてパパ活の調査中だからご協力くださいと言われただの、
なかなかバリエーションに飛んだパパ活の話が展開されている。
パパ活初めての私には、まったくついていけない。
〈ああうん、お姉ちゃんは永久についていかなくていいから。
それより、ほら、来たみたいよ?〉
だんちゃんが反応したのは、近づいて来る車の音。
やってきたのは、不良さんを迎えに来たのと同じマイクロバス。
綺麗にせっちゃんとさっちゃんの前に止まると、モンちゃんが出てきた。
「あ、モンちゃんじゃーん。今日はよろしくね?」
「!!(こちらこそ、というように頭を下げている)」
「ちょーさんは? 一緒じゃないの?」
「!!!(一緒じゃないよ! 事務所にいるよ! と首を振っている)」
慣れているのか、さっさとバスに乗り込むギャル二人。
(だんちゃん、どうしよう! パパ活って、私、初めてだよ!)
〈ああうん、これに懲りたら適当に返事しないでね?〉
私も何とかそれに続く。
「?(皆さん乗りましたね? シートベルトも大丈夫ですね? と振り向く)」
「ん? 大丈夫、これでみんな揃ったよ?」
そのまま、さっちゃんの声で走り出すマイクロバスに乗って、私たちはサファリへと向かった。
―――――☆
「!(ではまず、こちらでお楽しみください! とウサギ小屋を指さしている)」
「きゃー可愛い!」
「え? これ餌? あげていいの?」
連れてこられたのは、ウサギ小屋の前。
さっちゃんとせっちゃんが、餌をあげたりして遊んでいる。
兎たちもこの前の(笑)への態度とは大違い、おとなしくギャルに抱かれたり、一生懸命に餌をほおばったりしている。
(ほら、だんちゃん、兎さんだよ? 兎さん! 可愛いね?)
〈ああうん。この間、どこかの誰かが踏んだり蹴ったりされてなかったら、ね?〉
だんちゃんが何か空気の読めないことを言っているが、私はせっちゃんとさっちゃんに混ざって、一緒に餌をあげる。
駆け寄ってきた兎の群れに餌を差し出してみた。
「!?(お、お父さん、お母さん! なんかこの人こわいよ! というように周りの二羽を見ながらフルフル震えている)」
「……(お、落ち着きなさい! だ、大丈夫、ちょっとすごい魔力をお持ちなだけよ! というふうに子兎をなだめている)」
「!!(こ、これも超魔王様のためだ! というふうに子兎を勇気づけている)」
〈お姉ちゃん? なんか兎に怖がられてない?〉
(もう、だんちゃん、そんなわけないじゃない)
ないよね?
兎たちに笑顔を向けてみる。
いっせいに逃げ出す兎たち。
「もー、だんちゃん、怖がらせちゃダメだよ?」
「そうそう、兎さんが可愛そうだよー?」
さっちゃんとせっちゃんは相変わらず兎に囲まれている。
な、なぜ?
〈ああうん。その兎、元モンスターなんでしょ?
カンストステのお姉ちゃんが相手じゃ、そりゃ怖がるんじゃない?〉
酷い。私は何もしてないのに。
こうなったら意地でも戯れてやる。
恐怖におびえて逃げる兎を追いかける私に横で、せっちゃんとさっちゃんは飽きたのかモンちゃんと話し始めた。
「そーいえば、ちょーさんは? いつ来んの?」
「!(実は今日、バッファロー暴走事件の再発防止策を確認するため、役所から抜き打ち検査があったんですよ、というふうに身体を動かしている)」
「うーん、ゴメン、モンちゃん、何言ってるのかわからないよ」
「!!(実は今日、バッファロー暴走事件の再発防止を確認するため、役所から抜き打ち検査があったんですよ、というふうに一生懸命身体を動かしている!)」
「うーん、一生懸命何かを伝えようとしてるのは分かるんだけど……
さっちゃん分かる?」
「分かるわけないじゃない。ていうか、私も毎回適当にうなずいてるだけだし?」
「!!!(なに言っているのかよく分からないけど、とにかく一生懸命身体を動かしている!!)」
みんな酷い。
ここはかわいそうなモンちゃんに、お姉ちゃんが一肌脱いであげよう。
私はなぜか青くなって小刻みに震える兎を抱きながら、二人に話しかけた。
「それはきっと、この間のバッファロー暴走事件で、今、警察の取り調べを受けてるところって言ってるんだよ」
「!?(惜しい! 警察じゃないよ!? 役所の人だよ!? というふうに身体を動かしている!)」
「え? そうなんだ? ヤバくね?」
「ま、大丈夫っしょ?
この間、ちょーさん、開園の再認可はもう下りたって言ってたし?」
「!!(そうだよ! 許可下りてないとサファリに女子高生なんか入れられないよ!? というふうに身体を動かしている!)」
「え? じゃあなんで警察来たの? モンちゃん、知ってる?」
「!!(警察じゃなくて、役所の人が来たんだよ!? 最後の確認のためじゃないかな!? というふうに身体を動かしている!)」
「あー、ゴメン、だんちゃん、通訳、お願い」
「うん、それはきっと、許可とるときに賄賂使ったから、それがバレたって言ってるんだと思うよ?」
「!!(ぜんぜん違うよ! というふうに身体を動かしている!)」
「あー、ちょーさん、なぜかお金持ってるからねー。
昔はどっかの国の政治家だったとか言ってたし?」
「うわ、賄賂とかありそう」
「!!(違うよ! 人間の王国と違って、お金じゃなくて暴力が支配する健全な体制だったよ! というふうに身体を動かしている!)」
「なんとぉ!? それは本当ですかぁ!?」
「!?(うわ、誰だよお前、というふうに驚いている!)」
が、そんな会話を交わしていると、横からボロボロのスーツを来たオジサンが飛び出してきた。おどろくモンちゃんを横に、せっちゃんがボロボロスーツオジサンに話しかける。
「あ、記者のきーちゃんじゃん。この間のパパ活以来だっけ?」
「はいぃ! その通りですぅ! S子さん、お久しぶりですぅ!
あぁ! 他の方は初めましてぇ! 私ぃ! こういうものですぅ!」
そういえば、せっちゃんがパパ活をやっていて取材されたとか言ってたっけ?
どんな記事を書いたのか興味があるところだが、きーちゃんことボロボロスーツオジサンはさっちゃんと私とモンちゃんに名刺を差し出してきた。
「あ、どーもって、名刺がにじんで字が見えないんだけど?
だんちゃん、読める?」
「うーん、だめ、私のもにじんでて読めないや」
「……(まったく、名刺交換は社会人の基本だというのに、という感じでため息をついている)」
私とさっちゃんは名刺を持っていないので、代表してモンちゃんが名刺をボロスーツオジに名刺を渡す。
それを受け取りながら、ボロオジはモンちゃんに取材を始めた。
「申し訳ありませぇん!
なにぶん、夜中に潜入取材しようとこっそりサファリに入ったらぁ!
夜通し猛獣に追いかけまわされましてぇ!」
「!!(無許可でサファリに入るなんて! なんて危ないことをするんだ! というふうに怒っている!)」
「早速ですがぁ! 取材でぇす!
今ぁ! 代表者の方が収賄疑惑で警察の取り調べを受けているというのはぁ!
本当ですかぁ!」
「!!(本当なワケがあるかぁ! というふうに怒っている!)」
「なるほどぉ! 本当なのですねぇ!
では従業員としてのお気持ちはぁ?」
「!?(本当じゃないからぁ! というふうに一生懸命怒っている!)」
「おぉ! 怒りのあまり言葉も出ない、とぉ!?」
「!?(だからそうじゃないからぁ! というふうにすごく怒っている!)」
モンちゃんがしゃべれないのをいいことに、あることないことを次々メモ帳に書き込んでいくボロオジ。
怪しい週刊誌とか新聞の記事って、こうやって作られていくんだね。
そんな感想を浮かべながら眺めていたら、手元の兎さんが小さく動いた。
「!(すみません、あのモンスターは私の上司なんですが、助けてあげてくれませんか、というふうに小さく飛び跳ねている)」
「え? 助けてほしいの? モンちゃんを?」
「!(はい、超魔王様以上の魔力をお持ちの方であれば、モンちゃん様がしゃべれるようにできるのではないかと、というふうにうなずいている)」
「うーん、でも、変に魔法使って暴走したバッファローがモンちゃんやボロオジ轢き殺したら嫌だし……」
「!!(その点は大丈夫です! おい……)」
腕の中の兎さんがさっきおびえて逃げて行った子兎に目くばせする。
子兎はびくつきながらも、小屋の中から小さなダンボールを一生懸命、前足で転がしながら持ってきた。
開けてみると、中に入っていたのは、金色の腕輪。
私がだんちゃんに憑りつくきっかけになったゲームで見たことがある。
確か、魔法使いNPCがみんな身に着けていた腕輪だ。
「!!(この腕輪を付ければ、どんな魔法も制御可能です! 私達の国では、魔法使いはみんな身に着けていました!)」
「ああ、あれってキャラデザが面倒になってデザイン使いまわしただけだと思ってたけど、そういう設定があったんだね?」
感心しながら、取り敢えず腕輪を付けてみる。
なんと、頭の中で使える魔法の一覧が浮かんだ。
〈ちょっと、ホントに使う気じゃないでしょうね?〉
(え? ダメ?)
〈ダメに決まってるでしょ? また変なこと起こったらどうするの?〉
が、しっかりだんちゃんにダメだしされてしまった。
仕方ない、兎さんには諦めてもらおう。
〈え? あれ? お姉ちゃんにしてはあっさり引いたわね?〉
(だって、さっちゃんやせっちゃんやボロオジの前で魔法使うわけにいかないし。
それに――)
「おい、お前何やってる!」
ちょーさんが警備員と、役所の人っぽい人と一緒に来たし。
―――――☆
後日。
もちろん魔法を諦めていない私は、一生懸命だんちゃんを説得して、どうにか休みの日の誰もいないところで実験する許可をもらった。
リビングのテレビで「記者を装った迷惑系○ou○uberがサファリに不法侵入して逮捕された」というニュースが流れるのを横目に見ながら、だんちゃんと一緒に学校の裏山へ向かう。
(始めはついていけなかったけど、ちょーさんもげんきそうだったし、イベントアイテムも貰えたし、パパ活、行ってよかったね?)
〈ああうん、金じゃなくて謎アクセサリーで喜ぶのはパパ活としてはどうかと思うけど?〉
そんな私たちを、お母さんが呼び止めた。
「あら、れんちゃん、お出かけ?」
「うん。ちょっと魔法の実験しようと思って」
「そう。じゃあ、帰ってからでいいから、その腕輪、ちょっとだけお父さんに貸してあげてくれない?
ゲームから出てきた何かがあれば、だんちゃんとれんちゃんも戻せるかもしれないって言ってたから」
次回予告!
ついに、れんちゃんとだんちゃんを元に戻す方法を見つけたお父さん。れんちゃんはその試作品を使い、盗まれたダンボールを追いかけるのだった!
※ 次回は、1/15(水)投稿予定です。




