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27.裏で暗躍していた者


最終局面です。

もう少し、この物語にお付き合い下さい。

宜しくお願い致します。




瀕死の重傷だと思われていたシエルが、ピンピンしています。

流れ出た大量の血液は、いったいどうなっているのか、ドラゴンの摩訶不思議な力でシエルの身体に戻っていきました。

『え・・・えええー・・・』と、若干引いてしまったのは、内緒です・・・

そして、そんな摩訶不思議なドラゴンのお肉を食べてしまった私の身体は大丈夫なのでしょうか・・・?

一抹の不安が残りますが・・・

考えないようにしましょう・・・


とにもかくにも、あとはリリー嬢をお縄にかければ一件落着です。

後始末は王様とレイン様にお任せしましょう!

私がそう考え油断しきっていた時でした。

それはひっそりと始まっていたのです。








「ああ、お嬢様こんなお姿になって・・・」


突然の声に驚き、その場にいた全員が一斉にリリー嬢が倒れている場所に目を向けました。

その人は忽然と現れていたのです。


「あれ・・・あの人は・・・」


その人は、床に倒れ伏しているリリー嬢を仰向けにし、綺麗な姿勢に横たえています。


彼は確か・・・リリー・ローズ嬢の執事・・・

名前は・・・そう、ノーマンさんです。

名前がセバスチャンではないことが残念で、鮮明に記憶に残っています。

彼が何故ここに?

リリー・ローズ嬢に着いてきていたのでしょうか・・・

そう疑問に思い、黙ってお二人を見ていると、ノーマンさんが凍えるような冷たい眼差しでリリー・ローズ嬢を見下ろしているのに気が付きました。

背筋がゾクリと震えます。

すると、ノーマンさんはおもむろにリリー・ローズ嬢の頬をパンッ!と強く平手打ちしました。

あれは痛そうです。


「いたっ!な・・・なに?!!」


その衝撃でリリー・ローズ嬢は意識を取り戻されたようです。

ですが、私たちは皆、一様に驚いていました。

執事が自分の仕えているお嬢様に手を挙げるなんて信じられません。


「ノー・・・マン?貴方なにして・・・」


ぶたれた頬を片手で押さえながら、リリー・ローズ嬢がヨロヨロと起き上がります。

すると、ノーマンさんは彼女の髪を掴み、乱暴に引き上げました。


「きゃあ!いたいっ!」

「あんな下民にやられてしまうとは、本当に情けない・・・様は貴女に失望しております」

「ノーマン?!何をするの!やめて!痛いわ、お願い、離して!!」


ジタバタ暴れているリリー・ローズ嬢の髪を掴んだまま、ノーマンさんはズルズルと彼女を部屋の中心に連れていきます。

私たちは、ノーマンさんの行為に驚き、彼のやることに口を出せずにいました。


「貴女は役にたたないクズなのです。でしたら、違う使い方をしましょう」

「いや!離して!離してぇ!」


そう言うと、ノーマンさんは聴いたことのない言葉をその口から紡ぎ出していきます。

どこの言語で発音しているのか全く聞き取れませんが、ノーマンさんが紡いだ言葉は視認できる文字となり、地面に魔法陣を描いていきます。


「あの呪文は・・・!」


シエルはどうやらあの言葉がわかるようです。

さすが、ドラゴンの王!

うちの子は凄いですね!

ですが、シエルは眉を顰め、険しい表情をしています。

途中で途切れてしまった呟きが気になった私は、シエルに問いかけようとしましたが・・・

突如リリー・ローズ嬢の絶叫が室内に響き渡りました。



「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ・・!!!!いたいいたいいたいいたいいたいいたあああああああああああああああああああああああああああああたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけっっ!!ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


物凄い悲鳴にビクリと身体が飛び跳ねます。


彼女の悲鳴が漏れた瞬間から、辺りに黒い靄が立ち込めはじめました。

何がおこっているのでしょう・・・


「まさか、彼奴きゃつが裏で手を引いていたのか・・・」


ボソリと呟くシエル。

彼奴とは・・・?

いったい誰のことを言っているのですか。

私は不安になりシエルを見つめていると、シエルは私の手を力強くギュッと握りました。


そして気が付くと、いつの間にかリリー・ローズ嬢の声はプツリと途絶えており、辺りはシン・・・と静まり返っています。


「シエル・・・いったい何がおこってー・・・」


私が不安気にシエルに問いかけると、シエルは私を自身の背後に庇います。


「シエル・・・?」

「来るっ!!!!」

「えーーーーー?」


誰が?とは聞けませんでした。

室内には重く黒い霧が立ち込め、身体が普段の数倍重く感じられます。


「なに・・・これ・・・?」


シエルに掴まりながら、ようやくのていで立っていると、レイン様やミカエルさんたちは片膝をついているのが見えました。

室内にいる人のなかには、五体立地状態の方もいます・・・

もの凄い重圧が部屋中にかかっているようでした。


そしてその声は、靄の向こうから突然聞こえてきたのです。






『ああーーーーー・・・こちらの世界は本当に久しいな』

「?!!」


リリー嬢とノーマンさんがいた場所から聞こえてくる第三者・・・の声。

それは、男性とも女性ともつかない不思議な声でした。

そしてその声に合わせ、靄がサッと引いていきます。

真っ暗だった室内が、急に光を取り戻しました。

その人の回り以外は・・・


「主様、お待ちしておりました」

『ノーマン、そのおバカさんは予想以上に使えなかったねえ』

「私がついていながら、大変申し訳ありません」

『まあ、滑稽で面白かったから、いいけどね』


ノーマンさんが床に膝をつき、こうべを垂れている相手・・・

それは、まさに「闇」を型にしたといえるような人型をしたかでした。


『私をこちらに呼び寄せる力の媒介となったことに関してだけは、ちょっとだけ使えたけどね』


そう言った漆黒の何かは、足元に転がる人影を踏みつけます。

あれはー・・・


「リリー・ローズ嬢・・・?」


私は震える声で、変わり果ては彼女の姿を視界に映しました。

彼女は・・・

彼女は、骨と皮だけになっていました。

なのに、肉のない胸が上下しています・・・

まさか、あの状態で生きているのかと私は驚愕してしまいました。


「酷い・・・」


シエルを傷つけた憎い少女です。

ですが、あんな体にされてしまうだなんて!!

あまりにも酷すぎます・・・


「メル、下がれ!それに、お前たちもだ!彼奴は危険だ!」


シエルがレイン様たちにも声を投げかけます。

ですが、王を守る騎士の方々はシエルの言葉に耳を傾けてくれませんでした。


「王、危険です、こちらへ!」

みな怯むな!一斉にかかるんだ!!」







そうして、漆黒の何かに立ち向かった騎士たちはー・・・


「・・・・・・そんな・・・」


ミカエルさんの掠れた声が聞こえてきます。

私たちの目の前には、干からびてミイラになった騎士たちが無数に転がっていました。


「いったい、何がおきたのだ・・・」


茫然と呟くレイン様。

私は言葉が出てきません。



一瞬の出来事でした。

漆黒の何かから霧状のものが発生したかと思うと、騎士たちを取り囲み・・・

次の瞬間には騎士たちは床にくずおれていたのです。

攻撃をおこなった者、全員が命を奪われていましたーーーーー・・・

人知を超えた力によって。


「主様に攻撃を仕掛けるなど・・・無礼な者たちですね」

『ははは・・・良い良い。ちょうど腹も減っていたしな。少しは我の糧になった』


漆黒の何かは、美しく微笑むとペロリと舌を舐めました。

妖しく美しい人外の者


「シエル・・・シエル、アレは何ですか、何なんですか?!」


私は唯一、あれの正体を知っているだろうシエルに問います。

シエルの肩を掴む私の手は震えていました。


「メル・・・アレはー・・・・・・」


シエルは逡巡した末に、観念したように睫毛を伏せ、重い口を開きます。


「アレはー・・・・・・悪魔たちのなかの悪魔。悪魔王だ」

「あく・・・ま・・・?」


この世界に魔王がいるのは知っています。

けれど、魔王とは別に悪魔までいたんですか?!初耳ですよ?!!

しかし、確かにあれからは尋常ではない気配を感じます。

あれが悪魔・・・


『はは、竜王。すんなり我の正体をバラすなよ』


悪魔の王様が明るく話しかけてきます。

その言葉に驚いたのは、レイン様たちでした。


「竜王?!!シエルが?!!」

「知りませんでしたわよ、わたくし?!!」

「なん・・・だと・・・」

「えええええー!え?えええええ?!」


レイン様・アリア嬢・ミカエルさん

それにラファエルさんたちも、それぞれ驚いています。

あーーーーー・・・

結構長いこと一緒に旅していましたが、そういえばシエルの正体を教えていませんでしたね。

まあ、とくに話していなくても不都合はありませんでしたし。

うちの子であることには変わりないので。

だから、その、ミカエルさん。

そんなに私を恨めし気に睨まないでください。


「悪魔王、我の今の名はシエルだ。貴様もサラッと我の正体をバラすでない!」

『おあいこではないか。それにしても、お前小さくなったなあ』

「煩い」

『ハハハ!それにしても名をもらったのか、それは良いな!』


悪魔王はその美しい顔に微笑みを浮かべ、笑っています。

しかし突然、シエルに向けていた眼差しを、ツイッと私へ動かしました。

見られている!

見られている!!

見られている?!!

何故、村人たる私を?!!

全身から冷や汗が噴き出していますよ?!


『ふむ・・・お前に名を授けたのは、そこの娘か』


私は何も答えることが出来ず、だらだら汗を流しながら言葉を発することができず口をパクパクしていると、シエルが庇ってくれました。


「我の番を見るな、減る!」

「・・・・・・」


え、私は減っていくものなのですか?

いえ、精神的な物はガリゴリ減っていますがね?!





再登場の執事と、新キャラの悪魔王が物語に新加入です。

もう少しで終わると思うんだけどなー?

ちょっとまだ執筆中なので、続き頑張って書いてきます。


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