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11.猫さんとシエル 前編


前後編の前編になります。

後編は明日更新予定です。

読んで頂けると嬉しいです。






最近、お腹の膨れた成猫が庭先にやってきます。


ある日ひょっこり現れたグレーの毛並の猫さん。

ホッソリとしたガリガリ気味の体形なのに、お腹だけがふっくらしている姿が印象的でした。

私は猫さんのお腹に子どもがいるんだ!とピンときて、ご飯の用意をしたのですが、猫さんは警戒してかなかなか近づいてきてくれません。

魔の森の側です。

警戒しないと生きていけませんよね・・・

けれど、猫さんはもうフラフラです。

私は猫さんが気になり、毎日せっせとご飯を用意していました。

いつかは私を信用して、ご飯を食べてくれるようになると信じて。

そしてある日、猫さんは耐えかねたようにようやく、ご飯を一口食べてくれました。

お腹が空いて、とても飢えていたのでしょう。

安全なご飯だとわかると、猫さんは器に盛られた大盛りのご飯をペロリとたいらげました。

その日以降、猫さんは家に来た時に外から「ニャーン」と声を掛けてくれるようになりました。

まるで『来たよー。ご飯ちょうだーい』と言っているようで、可愛くて、私は今日も猫さんのご飯の準備をします。

もうすぐお母さんになる猫さんには、元気な仔を生んでもらわないとですからね!

お腹いっぱい食べれて安心できる場所を提供してあげたいです。


そしてそんな猫さんは、今日も庭先にやってきて、家の中にいる私に声を掛けます。


「ニャーン」

「はいはい、猫さん、いらっしゃい」

「ニャー」

「はい、ご飯ですね、ちょっと待っていてくださいね」


私がいそいそと庭先に出ると、シエルも一緒についてきます。

今日は人型ですね。

最近シエルはよく人型の姿でいることが多くなっています。


「猫さん、お待たせしました、どうぞ」

「ウナーン」


ご飯を食べ始めた猫さんを見ていたのですが、スススと近づいてきたシエルがべったりとくっついて離れないので、横目でチラリとシエルを見ます。


「シエル?どうしたんですか?」

「こやつの腹もだいぶ膨れてきたな・・・」

「そうですね。そろそろ生まれますかねぇ。仔猫、可愛いでしょうね」


私がほんわか答えますが、シエルはムスッとしています。

あらあら?


「シエル・・・もしかして、猫さんに嫉妬しているんですか?」

「・・・・・・」

「そうですね。最近は猫さんばかりにかまっていましたから・・・寂しい思いをさせて、ごめんなさい、シエル」

「・・・しかたがない。相手は身重なのだ。だが、しばらくの間だけだ。仔が生まれたら、また余を一番にかまえよ」


頬を膨らませて、拗ねているシエル・・・

ヤバい。

うちの子可愛い。

ヤバいヤバいヤバい

シエル可愛いいいいいい!!!!


そう思っていても、表情には出しません。

シエルがますます拗ねてしまいますからね。


「はい。シエルを一番にかまいます」

「・・・わかれば良い」


少し機嫌がなおったのか、しょんぼりしていた顔に微笑みが浮かんでいます。

あああ、はにかみ顔も可愛いいいいいい!!!!

なんでしょう、この可愛い生き物は!

辛抱たまらず、シエルの頭を撫で撫でします。

すると、シエルも私に顔を近づけスリスリしてきました。

相変わらず、お肌すべすべですね・・・

髪も手触り最高です。

シエルに勝っているところが一つもない残念女子な私・・・

思わず、顔がスンッとなってしまいました。



「ニャー」

「あ、もう食べ終わりましたか?お腹はいっぱいですか?」

「ウナーー」

「はい、ご馳走様です」


猫さんは口の回りを小さな舌でペロペロ舐めています。

今日も満足して頂いたようです。


猫さんは自分の手で顔をくしくし洗っています。

体をぺろぺろ綺麗に舐めおえた猫さんは、お尻をあげて伸びをすると、ゆっくりと歩きだしました。

そして満足げな表情で繁みのなかに消えていきます。

その後ろ姿を見ながら、感慨にふけります。

猫さんの体はもうガリガリではありません。

私は、健康的にふっくらしてきた猫さんの後ろ姿を微笑みながら見送ります。

元気な赤ちゃんが生まれますように・・・

そう願いながら、私とシエルは家に戻りました。



「お腹が空きましたね。私たちも、お昼ご飯にしましょうか、シエル」

「うむ!今日のご飯も楽しみだ。メルの作るものは何でも旨い」

「今日のお昼は、キノコと野菜とお肉たっぷりのシチューですよ」

「なに!シチューか!大好きだ!」

「いっぱい食べてくださいね」

「うむ!」




畑に出ていた父を呼び、みんなでお昼ご飯です。

食卓につく私たち。

母がシチューを運んでくれていたので、テーブルの上には美味しそうなご飯が並んでいます。

暖かなシチューに、ふわふわのパンに、色鮮やかなサラダ

テーブルを囲むのは、父・母・私・シエルと、もう1人・・・

あれ、おかしいですね。

人数が多いです。

1人お呼びしていないお客様がいるのですが・・・?


「いただきます!」

「・・・ちょっと、待ってください」

「どうされましたか?」

「何故、あなたがシレッとうちの食卓についているのでしょうか、勇者様?」


そう・・・

食卓の椅子に座っている人物・・・

それは・・・サンドイッチの勇者様でした。


「美味しそうな匂いがしたものですから!」

「だからといって、無断で家に侵入してくるなんて非常識です!」

「貴方と私の仲ではありませんか」

「どんな仲ですか?!」

「お母様は、どうぞと言って下さいましたよ!こうして僕の分のご飯も準備してくれました!」

「お母さん?!!」


怖い怖い怖い

この勇者様、思い込みが激しすぎではありませんか?!


「あら、メルのお知り合いではなかったの?」

「二度会った程度で、知り合いという程の人ではありません!」


母が、のほほんと話しかけてきますが、危機管理がありません。

母も怖い。


「メル、この男に近寄るな」


シエルが私を引き寄せ、庇ってくれます。

おお・・・婚約者っぽいですね・・・

そして私はなんだかヒロインっぽいですね・・・

なんでしょう・・・

ドラゴンの婚約者がいて・・・

勇者様にプロポーズされ・・・

魔王に可愛がられている・・・

平民の私・・・

これはあれでしょうか。

もしかして、ハーレムというやつでしょうか。

男に好かれても全く嬉しくありません。

それより、これ以上濃いキャラクターの人物が増えないことを祈るばかりです。


「あなたは、彼女の婚約者の・・・」

「我はシエル。メルの番だ」

「ふふ・・・婚約者がいるからと言って僕は諦めませんよ!」


いや、諦めてください。

何故そんなに諦めが悪いんですか、勇者様。

そして、父と母よ・・・

騒ぎに慣れすぎているからといって、いつも通りに食事を始めないで下さい。


「メルが作ったシチュー美味しいわー」

「みんなも冷めないうちに食べなさい」

「うぬ!メルのシチューが冷めてしまう!これはいかん!」

「ああ、メルさんとおっしゃるんですね。僕は、レインと申します。さて、自己紹介が終わったところで僕もシチューを頂きます」


え、ええー・・・

えええええー・・・

ツッコミどころがありすぎませんか・・・?

どうしてこうなるのでしょう。

こうしていつも私は置き去りにされるのです・・・




サンドイッチの勇者様再び!

お名前は、レインさんです。

また登場予定です。



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