1.平凡な女の子に生まれ変わりました。
新しい新連載です。
宜しくお願いします。
こんにちわ、平民です。
前世の記憶を持っているだけの、なんの力もないただの平民です。
私が今暮らしているこの世界は地球ではありません。
異世界です。
魔王あり
魔物あり
魔法ありの異世界です。
普通、異世界に転生したとわかったら、ちょっとは期待するじゃないですか?
自分は特別な存在だったんだ!
・・・とか。
もしかするとチートな能力が?!
・・・とか。
だけどね・・・
私にはなーんの力もありません。
特別お金持ちでも容姿がいいわけでもありません。
どこにでもいる平凡な平民です。
しかもー・・・
転生前は男でしたが、今世では・・・
・・・・・っっっ!!!!
性別・・・女・・・です・・・・・・
俺の男の子はっっっ
なくなってしまいましたっっっ!!!!!
泣いた。
それはもうめちゃくちゃ泣きました。
幼い頃に前世の記憶に目覚めた私は、今の自分にちょっぴりガッカリしました。
だって、平民なんです。
どこにでもいる田舎の村の平民に生まれ変わっていたんです。
しかもテレビも電気も何もない不便な暮らし
前世の記憶が目覚めてしまった私には正直辛かったです・・・
あの便利な生活を思い出してしまった私には、今の生活水準の低さは衝撃以外のなにものでもありませんでした。
前世の便利な暮らしを、知っているのといないのとでは全然違います。
私の住まいは、田舎も田舎!
魔物の国との境目にある小さな村
王様が住んでいる王都まで三か月はかかる距離だそうです。
その村の一画にある小さな木造の一軒家で、家族揃って野菜や果物を育てながら慎ましく暮らしています。
父や母は優しく、一人娘の私を大切に育ててくれています。
ですが、日常的に魔物が出る暮らしです。
平穏な毎日ですが、常に危険と隣り合わせ。
頻繁におこる魔物との命のやりとり。
いくら命があっても足りません。
まあ魔物と言っても動物みたいなものなので、殺ったらそのお肉は村や家族で美味しく頂くのですが。
イノシシや熊みたいなものですね。
この村でお肉と言ったら、魔物のお肉です。
そのお肉はとても美味しく、魔物を倒した日の食事は御馳走です!
こうして危険にさらされる日々を送りながらも、家族みんなで元気に暮らしているのでした。
私が運命の出会いを果たしたのは、8歳になったばかりの頃。
私はこの年、森で子ドラゴンを拾ったのですーーー。
私の名前は、メルト・ブランシュ
みんなからは、メルと呼ばれています。
前世、男子
今世、女子の異世界転生者です。
前世も今世も平凡の塊なような人間です。
前世は正直言って、地味メンでした。
どこにでもいる、しがないサラリーマン。
彼女なし・金なしのうえに、ブラック企業に勤め、毎日深夜まで働く日々。
嫌になりますね。
きっと前世の自分は過労死したのだと思います。
うん、きっとそう。
その辺りの記憶は全くないのですが、こう・・・
魂からの心の声が・・・
もう働きたくないと言っています。
重傷ですね。
なので、暮らしは不便ですが、のんびり流れる田舎の空気に癒されています。
今世の容姿は可愛らしい方だと思うのですが、焦げ茶色の髪と茶色の瞳のド平凡な村人です。
あまりにも自分らしくて、笑ってしまいました。
自分には壮大なドラマは起こりえない。
それが新しい生をうけて数年でわかってしまったのです。
生涯、平穏に暮らせればそれでいいやと、私は3才にして達観しておりました。
私が5才の時、なんと勇者が村にやってきました。
初めてみる勇者に私も流石にテンションが上がります!
しかし・・・その時、事件は起きた!
魔王討伐に行くという勇者一行は、なんと今お隣に住むお姉ちゃんに頭を垂れています。
「魔の森近くの村に住む銀髪・碧眼の聖なる少女。王都の教会にて貴方が聖女との信託を受けました。どうか私と共に魔王討伐に向かって頂けませんか?」
なんとぉー?!!
小さい頃からよく遊んでくれていたお隣のお姉ちゃんがまさかの聖女!
確かに子供の目から見ても綺麗で性格が良くて、とても素敵な人だと思っていたのです。
物語のヒロインみたいと思っていたら、まさか本当にそうだったとは!
お隣のお姉ちゃんが聖女様ー!と私は大興奮です。
お姉ちゃんはというと、勇者に手の甲にキスをされ、顔を真っ赤に染めていました。
しかし、その瞳はとてもまっすぐで。
お姉ちゃんは覚悟を決めた眼差しで勇者のことを見ると、彼にはっきりと答えたのです。
「私に出来ることがあるのでしたら、共に行かせて下さい、勇者様」
「・・・!ありがとう!」
こうして勇者一行は、お隣のお姉ちゃんを連れて旅立っていきました。
物語的には、魔王を討伐し、無事に戻ってきた勇者と聖女が結婚して幸せになりました、ちゃんちゃんーーーとなるのでしょうが・・・・・・
1ヶ月後に戻ってきた勇者一行はーーーーー・・・・・・
「うふふ、魔王討伐に失敗しちゃいました」
「面目ない・・・僕は勇者失格だ。このまま王都に戻る事はできない・・・」
ーーーということで、なんと勇者は魔王討伐に失敗していたのです。
ちょっとちょっと、勇者様ー?!と思いましたが、お姉ちゃんと勇者様は何故か幸せそう。
お姉ちゃんに話を聞いてみると、勇者様と恋に落ち、この村で一緒に暮らす事になったのだそうです。
その後、勇者はお隣のお姉ちゃんと結婚し、お姉ちゃんの家に婿養子に入り、今は村で平和に暮らしています。
まあ・・・お姉ちゃんが幸せならいいんですけどね!
魔王の事はどうするのかな?と思っていると、その後も何度か自分は勇者だ!という猛者が村に現れました。
が、その勇者達も魔王にぼろ負けし、その後村に住みつくといった無限ループです。
それで良いのか、勇者たちよ・・・
そして何人勇者がいるんですか?
うーん・・・
続々と村人が増えていきます。
そういえば・・・
この村は何故こんな魔物の国の近くにあるんだろう?危険なのに・・・
と疑問に思っていた私は、両親に聞いてみることにしました。
すると、なんとうちの両親も元々は勇者のパーティの一員だったそうです。
ここは、魔王に負けた勇者たちが集まり出来た村だ・・・と。
父よ、母よ、初耳なのですが?
勇者パーティの一員だったって何ですか?
え、父と母、実は凄い人だったんです?
普段は平和に畑などを耕している家族が?
実は平凡な平民ではなかった・・・と。
衝撃の事実です。
しかし残念ながら私に何の力もないことには変わりがありません。
私だけが平凡です・・・
そして更に驚きの事実が判明しました。
父が会話のなかでポロリとこぼした一言が、驚きのものだったのです。
「お前は知らなかったかもしれないがな、よく魔物のお肉を持ってきてくれるおじちゃんがいるだろう?」
魔物のお肉を持ってきてくれるおじちゃん。
はい、います。
父の飲み友達の、カッコいいおじちゃんが。
私はとても可愛がってもらっています。
お土産だよ、とお花やお菓子を持ってきてくれるおじちゃん
よく高い高いをしたり、頭を撫で撫でしてくれるおじちゃん
そのおじちゃんがどうしたと?
「あのおじちゃんな、実は魔王なんだ」
はっはっは!と豪快に笑う父。
私は盛大に吹き出しました。
「なっ・・・ななななな?!!」
「はっはっはっ!驚いているな!」
「驚いてるよ?!思いっきり驚いてるよ?!なんで言ってくれなかったの?!」
「なんでって・・・聞かれなかったから?」
そ、そんな・・・
私は床に膝と手をつき、orz状態です。
あの、優しいおじちゃんが・・・
優しい笑顔で、私を可愛がってくれるおじちゃんが・・・
ま、魔王・・・
「村の皆も知ってるぞ。なんて言ったって、皆ボッコボコにやられてるからな!」
マジか・・・
この村にそんな秘密が・・・
って、秘密になっていないね、これ。
今までずっと普通の村だと思っていたのに、この村、実は全然普通の村ではない・・・?
私は只々茫然とするのでした。
先日、魔王のおじちゃんがやってきた時、ドラゴンのお肉を持ってきてくれました。
おじちゃんは、自分のお膝に乗せて、お肉を食べさせてくれたのですが・・・
そのお肉がほっぺがとろける程美味しくて、ドラゴンって凄い!美味しい!・・・と感動した翌日。
私はー・・・・・・
魔の森で子ドラゴンを拾いました。
1話では、まだドラゴンが出てきません(苦笑)
今、とりあえず4話くらいまで書いてあるので、ぼちぼち投稿していきます。