閑話―13.5話―
想いを繋げて松岡家へ戻った健臣と真子は、晃政の目の前に座っている。
真子は澄ました顔で、健臣は緊張のせいか顔が真っ赤になっている。
健臣は背をぴんと張って深呼吸をした。
そして覚悟を決めて言葉を発する。
「真子のお父さん」
晃政の瞳がかっと見開かれて、腰を浮かした。
「お父さんと呼ぶな!」
「す、すみません……」
健臣はわずかにうしろに仰け反り、顔を青くした。
なんて呼べばいいのだろうか。
『おじさん』『お父様』『父上』と名称が次々に思い浮かぶ。
しかしどれもしっくりとこない。
真子がわずかに顔をしかめる。
「お父さん、話が進まないから少し黙ってて」
「……そうだな。ごめん」
晃政がしゅんと大人しくなり、浮かべた腰を落とした。
真子が健臣をちらりと見る。
瞳が「気にしなくていいから続けて」と言っている。
健臣は覚悟を決め直して晃政を見た。
「真子さんとおつきあいさせてください」
健臣は頭を下げた。
晃政の瞳が鋭く光る。あまり恐怖を感じない。
そうかと健臣はひとつの理由に思い至った。
悠里の視線の方が断然怖い。野生の肉食獣を感じさせる悠里の睨みに比べたら、晃政のそれはまだ人間味を帯びている。
心の片隅で悠里に感謝した。
健臣は真剣な瞳で晃政を見つめる。すると晃政の方が先に折れた。
「君の誠意はよくわかった」
晃政はうなずいた。健臣は驚いたように瞳を丸くする。
お礼を言おうとすると晃政が先に口を開いた。
「だが、認めたわけではない」
晃政はそう腕を組み、まるで魔王のごとく高笑いをした。
「その笑い方やめて」
真子が眉をひそめて言うと晃政は笑いをぴたりと止めた。
「はい……」
晃政はそう小さく言ってうつむいた。
この人も結局は『真子ばか』か。健臣はそう悟った。
前途は多難そうだが、なんとかなるような気がした。




