第十一話 買い物祭り その二
僕たちの装備を買ったのち、アンナやルマの装備を買いに行った。そしてみんな分の装備を備えることができたらしい。安堵している。次はいよいよ武器を見に行く事となる。だが、その前に一つだけ話をすることになった。
ケイルは武器は別にいらないとのことで、宣言通り食材を探しに行くらしい。みんなから注文を聞いていた。
「とりあえず、保存用と今食いたいもん言ってけ。」
あのケイルがメモ帳を見ているのはとても新鮮だった。何気に。キョロキョロと目線をずらして皆に目配せしている。さっさと言えと言わんばかりに。
リーダーであるレオンがまず、保存用の食材を上げていく。カチカチの干し肉、乾パン。まぁ、そこら辺は賞味期限が長いものを上げていた。この世界に、レトルト食品は存在しないのが、何とも惜しい。まぁ、米があるだけ助かった。
その他には調味料。日持ちはしないがここ数日の食事を楽しめそうな食材、野菜系だったり。やはり異世界人とは思えないほど冷静かつ、計画的だ。
ある程度言い終えると、最後にぼそっと言う。
「……久々にクロワッサン食べたい。」
久々にって、なんだよこの人。急に素直になってやがる。僕は目を丸くせざるおえなかった。まぁ、別にいいのだがクロワッサンか。この世界には普通にパンがある。それも、種類豊富だと過ごしていてわかった。
例えばアンパン。あんこがあることにも驚いたのだが、パンもセットとは思うまい。まぁ、僕の思考回路を用いて作られた世界だからだろうか。ある程度こちら側の世界ににている。
一方でないパンもある。それは、チョコチップパンだ。この世界にはクリームは存在するけど、チョコはない。残念だ、クレープもチョコがないなんて。そもそもお菓子はクッキーや、カップケーキぐらいで甘いか甘くないかという違いしかない。
完全に僕の知識不足である。調べればいいといわれてしまうかもだが、実際調べるのは大変である。まあ、やる気がないだけでもあるけどさ。
そういうことを考えていると、ケイルがいきなり僕の肩に手を置いた。相変わらず、ボディタッチの多い男だ。
「リヒトは何がいい?というか、何があるかわからない感じか?」
「確かにそうですね。ちなみにおすすめは何でしょう?」
何でもいいとは言わないようにした。だって、聞く側が一番困るものであるから。と、言いつつも実際は何でもいい。この世界の住民が楽しめればそれだけでいい。
しばらくそう達観していると、ケイルは指を立てて言う。
「ハンバーガーはどうだ?食べやすいし、初心者向けだぞ!」
おお、ハンバーガーか。てかそれもパン系……。
僕はそうツッコむことはせず、返事をした。
「じゃあ、それをお願いします。」
「よし、任せろ。俺もそれにするぜ!で、アンナとルマはどうだ?」
「そうね。私はサンドイッチにするわ。」
「じゃあ、僕はええと……」
ルマは顎に手を当てて、考え込んでいる。おなかはみんな空いている。だが、何を食べるかは意外に迷うらしい。レオンがその様子をみて、少しだけ候補を挙げてくれた。
「ルマは甘いもの好きだし、アンパンとかどうだ?」
それにアンナも乗る。
「シナモンロールとかどう?」
「迷うなら二つ買ってもいいぜ。金ならたくさんあるぜ。」
皆の脳裏にはパン屋しかないらしい。僕は異世界の料理がどこまであるかを把握してないため様子をうかがっていた。だが、ルマの視線はなぜか僕に突き刺さる。
「リヒト君は、何がお勧め?」
「ええと、僕あまりこの世界にある料理が理解できていないのですが……」
何気ない本音をこぼしたつもりだった。僕がそういった瞬間、みんなの顔がこちらを向いた。
好奇心。
その文字が顔に浮かんでいるような楽し気な表情だった。
「てことは、私たちが知らない料理があるってこと?」
「そういうことになるな。」
アンナと、意外にもレオンも楽し気にこちらを見ている。ルマも目をキラキラさせて尋ねた。
「好きな食べ物なーに?言ってみて。」
うわ、出たわ。自己紹介の定番中の定番。僕はそう思った。悩みます、普通に。だって食事は作業系の男だもん。確かに好き嫌いはこだわるかもしれないが、ぶっちゃけおなかが膨れるならそれでいい。
しばらく悩んでいると、パッと頭に一つの料理が浮かんだ。
「……焼きそば。」
「ヤキソバ?」
焼きそば。麺を野菜とか肉とかとともにソースを含めて炒めるあの料理。カップ麺が苦手な僕でも、カップ焼きそばが食べられるほど好きだった。この世界に来る前の日の夜ご飯は焼きそばだった気もする。それほど、好きだ。結構珍しい部類だと思うけど。
しばらく沈黙が流れた。もしかして、この世界は麺を知らないのだろうか。
「麺って知ってます?」
「メン?なんだそりゃ。」
やはりそうか。それじゃあ、カップ麺はおろか、ラーメンやうどんすら知らなそうだな。
僕は知っている限りの知識をみんなに話した。小麦粉や強力粉等で作る、麺の話から、ラーメンの味の濃さ。それから、うどんの優しい味わいのこと。つけ麺の魅力とか、何とか。それから、保存食としてのカップラーメンについても一応説明した。専門知識は残念ながら持ち合わせていない。だが、みんなの目がキラキラとしていることから、話は伝わったらしい。
「なんだそれ、おいしそうな料理だな!」
「いいなあ、僕たちの世界ではそんなものないよ。」
羨ましがってはいるが、妬んではいなかった。それだけで、僕はほっとできる気がした。




