77 ネクロマンサー・サミル
ディアマトに乗った俺達はそのまま一番上まで移動すると、壁側に螺旋階段が繋がっていたであろう通路まで到着する。
「通路だ! ディアマト、あの通路まで頼む!」
「わかったのじゃ」
俺達はディアマトによって扉付近に移動して、ディアマトの手から慎重に1人ずつ降りる。
「よっと、……さ、皆もゆっくりね」
「さすがディアマトね、あっという間だわ」
「本当にゃ!」
「もう最上階に着いたっちゃわね」
エレナ達が降りたのを確認した後、通路の先に視線を向ける。
「よし、先に進もう!」
通路は徐々に大きくなり、大きな扉が見えてきた。
俺はその扉を勢いよく開け放つ。
「……サミル!!!」
足を踏み入れた部屋は広い謁見の間のような場所で、一番奥の椅子に座っているサミルに向かって俺は叫ぶ。
サミルの後ろには六つの腕を持つ大きな体を持った亜人族が控えていた。
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえているさ。……いや~まさかあの崩落を越えてくるとはね。驚いたよ」
「ムファザ様!!」
ボレサスは一歩前に出てサミルの後ろに控えている大きな亜人族に向かって問いかける。
「はははっ! 無駄だよ。もうこの亜人族の王は俺の支配下だからね」
「貴様! 護衛兵達じゃ飽き足らず、国王までも弄ぶのか!」
「……何をそんなに怒っているんだ? 使える駒は使わないと勿体ないだろ?」
サミルは怒るボレサスに対して笑いながら軽くあしらう。
俺はそんな笑うサミルを見据えて呟く。
「サミル、笑っていられるのも今の内だ。……お前にはこの国から退場してもらう」
笑い終えたサミルは俺に視線を向けて答える。
「……嫌だね。ここまで来てもらって悪いけど、俺っちの任務の為だ。さっさと皆には死んで貰って俺の駒になってもらうよ!」
――パチンッ!
サミルは指を鳴らすと、後ろで待機していたムファザは俺達目掛けて勢いよく襲い掛かってきた。
「……っ! アブソリュート・シールド!」
――キィィィィンッ!
ムファザと俺達の間に空気の壁を展開し、瞳を白く光らせるムファザの足を止める。
6本の腕に様々な剣や斧を装備しているムファザは、ボレサスが言っていた通り1人じゃ到底相手に出来そうな相手ではなかった。
「ん? ……おい、何をしているムファザ! 止まってないで攻撃しろ!」
サミルは動きを止めているムファザに対して声を発する。
どうやら、サミルは状況を理解できていないようで、俺は皆に向けて声を掛ける。
「皆、ムファザは見ての通り既にサミルの支配下にある! 俺とラルクがサミルを倒すまでの間、皆はムファザの足止めをお願いできるか!」
「任せてアモン。サミルを任せたわ」
「やってやるにゃ!」
俺の掛け声でエレナとキャスティが前に出る。
「ふん! やってやろうじゃない!」
「マリッサ様、あまり前に出ないようにお願い致します」
マイトとマリッサも前に出る。
「私も微力ながら加勢させてもらおう」
テキサリッドもエレナ達に加わる。
「ムファザ様……お助けできず、申し訳ありません」
そして、最後にボレサスも背中に抱えていた大剣を取り出して構える。
「あと、エアリアは戦闘に巻き込まれないように通路付近に隠れておくように!」
「(コクコク)」
エアリアの頷きと皆が戦闘態勢になった事を確認した俺は、ムファザに視線を戻す。
「よし! ラルク、いくぞ!」
「あぁ、アモン殿!」
俺は空気の壁を解除すると動き出したムファザの横を抜け、更にラルクも同様に抜けてサミルに向かう。
「……動き出したか。……なんだったんだ? まぁ……でもわかっていた事だけど、数の暴力だよね。俺っちもちょっと加勢するか」
サミルはエレナ達に手を向けようとしていた。
「……っ! アブソリュート・シールド!!」
俺はラルクの背後に部屋を分断するように大きな空気の壁を展開し、サミル・俺・ラルクとエレナ達・ムファザに部屋を分離させた。
「……あれ? 干渉できない!?」
エレナ達に手をかざしても何も起きないサミルは困惑していた。
思った通りで俺は強く握り拳を作る。
なぜなら、ビーストヘルズ城の1階でサミルの魔の手からエアリアを助けた時にサミルのスキルは俺の空気の壁を突破することはできない事が分かっていたからだ。
「……これでエレナ達に手出しはさせない」
「へぇ、黒い兄ちゃんの仕業か?」
「俺はアモンだ!」
「アモンか、面白い、アモン……お前から殺すとしよう」
サミルは俺に手を向けるが、俺はそれよりも早く自身に空気の壁で覆い隠す。
「……やれるもんならやってみろ!」
「……っ!? なぜ、お前にも俺のスキルが効かないんだ!」
困惑するサミルを他所に、俺は空気の壁を展開しながら手に超高範囲の空気を小さな球として手元に圧縮し始める。
そのまま俺はサミルに向かって駆け出す。
「お前はやりすぎた……吹き飛べっ! ウェーブ・キャノン!!!」
「……ひ!?」
俺はサミルに接近し腹部に高密度で圧縮した空気の球をぶつけると、瞬時に拡散し――
「うわぁぁぁぁっ!」
――バゴオオオォォォンッ!
空気の拡散でサミルを後方へ勢いよく吹き飛ばした衝撃で城壁が崩壊し、城外まで押し出されたサミルは見えなくなるまで遥か彼方へ飛んでいき見えなくなった。
「あ……やりすぎちゃった」
その流れを見ていたラルクは開いた口が塞がらない状態で壊れた城壁を眺めていた。
「……そうだ、皆!?」
後ろを振り返るとムファザは動きを止めていた。
俺はすぐにエレナ達に駆けつける。
「あはは……ごめんエレナ。やりすぎちゃった」
「……もう、倒すの早過ぎよアモン。もっとこの王と戦いたかったんだけど?」
「ごめんって……でも、この国からサミルは退場してもらった事だし、一件落着だね」
すると、駆けつけてくるエアリアは俺に声を掛けてくる。
「アモンさん、話せるようになりました!」
エアリアは笑顔を浮かべて報告をしてきた。
「おぉ! よかったじゃないか!」
喜ぶエアリアを横目にムファザの傍に駆け寄るボレサスに近づく。
「ボレサス……」
「アモン殿、やはり……ムファザ様は既に命を落としておりました」
「……そうか」
「これから、この国はどうすれば……」
俯くボレサスに俺が提案する。
「それなら、ボレサスがこれから国を引っ張っていけばいいんじゃないか?」
「私が……ですか?」
「うん。ボレサスだったらこの国を導いていけると思うし、何かあったら俺も協力するよ」
「アモン殿……。わかりました。やってみようと思います!」
「うん」
俺がボレサスと話しているとラルクが正気を取り戻し、駆け寄ってくる。
「アモン殿! 1人でサミルを倒してしまうとは……本当に何者なのですか!?」
「俺もちょっとやりすぎちゃったって反省中だよ」
「はぁ……できれば私の手でサミルに引導を渡してやりたかったですが、仕方ないですね」
「ありがとうラルク。……それで、これからのグラインボルトだけど、ボレサスに引っ張って貰おうかと思っているんだ」
「ボレサス殿にですか?」
「うん。ムファザも既に亡くなってしまった事で統率する者がいなくなるのも住民も困るだろ?」
「……確かにそうですね。……ボレサス殿。その大任を引き受けるというのか?」
ラルクが尋ねると、ボレサスは頷く。
「どこまで出来るかわかりませんが、やろうと思っております」
「……そうか、それでは、これからは種族間の争いごとを無くせるように尽力していきたいものだな」
「そうですね、ラルク殿」
ボレサスとラルクは握手を交わし、そんな2人にテキサリッドも近づいて来る。
「それであれば、この戦況報告をアンディ王にも報告しないといけませんね!」
テキサリッドの提案に受けて、俺は少し考えてから話す。
「……その前に、まずはグラインボルトの民にいままであった事とこれからの事を周知しないとね」
ボレサスは俺の言葉を聞いて頷く。
「そうですね、アモン殿。まずは、この国で起きた事を民たちに伝える必要があります。ラインセルに戦況報告するのはその後でいいでしょう」
「よし! それじゃその手筈で進めよう」
俺はラルク達と話を付けていると、マリッサ達も集まってきた。
「アモン!! もう、私はもっと戦いたかったわ!」
「あはは……それはまた次の機会でお願いするよ」
俺はご立腹のマリッサに苦笑しながらマイトに視線を向ける。
「マイトもお疲れ、一先ず、なんとかなったね」
「……あのサミルを一撃で仕留めるとは、さすがアモン様です」
「ありがとう。これも前にエアリアを守った時、サミルのスキルの干渉から守る事ができた事でもしかしてって思った事を試したらドンピシャだったからだよ。……サミルも驚いていたよ」
「それは何よりです。……ですが、サミルを吹き飛ばしたのはいいですが、まだ生きているのでは?」
マイトは穴が開いた壁を見ながら呟く。
「……まぁ、その時はまた倒せばいいだけだよ。どっちにしてもこの高さから落ちたらただじゃすまないだろうから、すぐに動くって事はできないんじゃないかな」
「仰る通りですね。その時は、私も尽力させて頂きます」
「うん。頼むよマイト」
俺は皆を見渡し、掛け声を上げる。
「皆、ここまでよく頑張った! この後はボレサスの王位継承の為に動くぞ!」
皆の掛け声を聞きながら、俺はサミルが飛んでいった青空を眺めるのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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