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76 立ちはだかる障害

螺旋階段を上り続けっていると、エレナが声を掛けてくる。


「アモン……誰かいるわよ」

「ん?」


エレナは吹き抜けの対角線上にある螺旋階段を指さす。

すると、そこには人が2人並んだぐらいの横幅と2m以上は背丈がある大きな体格をした熊型の亜人族の兵士が俯きながら待機していた。


「……本当だな」


このまま螺旋階段を進んでいると亜人族の兵士とご対面してしまう。

俺は階段を上る速度を緩めて後ろにいるボレサスに尋る事にした。


「ボレサス、あいつも王直属の護衛兵ってやつなのか?」


ボレサスも相手の存在に気付いているようで答える。


「仰る通りですアモン殿。あの者もヒュードリと同様に王直属の護衛兵でバムーダ・グリエルという者です。見ての通り巨体から繰りだされる攻撃は強力で耐えられる者は少ないです」

「あいつも王直属の護衛兵なのか……」


俺達は戻る訳にもいかず、階段に座り込む大きな亜人族の兵士の元まで到着する。

巨体の兵士は階段に座りながら俯いて動こうとしない。


「……あの、通して貰いたいんですけど」


俺の声に反応したのか相手はゆっくり顔を上げるが、瞳孔は白く光っておりヒュードリと同様な状況だとすぐに理解できた。


「……バムーダさんまでも」


小さく呟くボレサスを横目に俺はバムーダを見据える。

バムーダはゆっくりと立ち上がる。


「……侵入者よ。サミル様の元へ行きたければ私を倒して進むことだな」


相手は両手を広げて戦闘態勢になると、階段の幅を埋め尽くすほどの幅となり強行突破は出来る隙間もなかった。

バムーダの両手には鋭い爪が付いたナックルが装備されており、黒い(もや)がまとっている。


「あの(もや)……確かラルクがしていたモノと似ているな」


俺が呟くとラルクが答える。


「アモン殿。あの(もや)は武器に闇魔法を付与している状態だ。……おそらく、この兵士には闇属性の耐性があるのだろう」

「なるほど、少し厄介だね。……アブソリュート・シールド!」


俺はバムーダから視線を逸らさず返事を返した後、空気の壁を展開しマナでコーティングしようとするが――


「ゆくぞ」


――ズシャァァァ‼

バムーダのその場が崩れるほどの脚力で巨体からは想像もできない速度で接近し、バムーダは鋭い爪で容赦なく俺を斬りつけてくる。

マナでコーティングが出来ていなかった空気の壁は容易に貫通され、勢いが止まらない鋭い爪が俺に迫ってくる――


「――は、速い」


俺はスキル発動時の硬直で動けず、向かってくる鋭い爪を避ける術がなかった。


――ガキィィィィィンッ!!

すると、瞬時に目の前にマイトは俺の手前に移動し、バムーダの鋭い爪を受け止める。

だが、マイトの体は衝撃を受け止めきれずに俺ごと後方に吹き飛ばされる。


「グッ!!」


――ふわっ

俺は瞬時に壁際に空気の層を展開し、マイトと俺が壁に衝突する衝撃を和らげる。


「うぅ……ごめんマイト、油断した」

「……いえ、無事で何よりです」


俺はバムーダに視線を戻すと、バムーダは俺やマイトを吹き飛ばしても威力は落ちる事がなく腕は振り下ろされ、バムーダの鋭い爪は俺達がいた階段の地面を深く(えぐ)っていた。


「……何てバカ力だ」

「どうした、かかってこないのか?」


バムーダはそう言いながら鋭い爪を地面から取り出すと、鋭い爪をついたナックルには黒い靄はまとわれた状態のままだった。

あの闇魔法が付与された鋭い爪から放たれる攻撃は非常に厄介なようだ。


「アモン殿! ヒュードリにした同様の技を行います」


ラルクは呪文を唱え、そして――


『ブラックリストレイ!』


――ラルクは呪文を唱えると、ラルクから漆黒の物体が瞬く間に放たれバムーダを覆っていく。


「小癪な真似をするな――」


――ズシャァァァ!

……はずだったが、バムーダは漆黒の物体を鋭い爪の一振りでかき消す。


「……か、かき消しただと!? ……アモン殿、この者が武器にまとっている闇魔法の構築量は尋常ではないぞ!」

「そうみたいだな……皆っ! 一旦バムーダから距離を取れ!」


俺達の掛け声と共に俺の傍に後退した仲間達も俺と同様に驚いた表情をバムーダに向けていた。

……ただ、1人を除いて。


「……主様、ここは我に任せて貰えるかの」


ディアマトが一歩前に出る。


「ま、待て! 1人じゃ危ない!」

「大丈夫じゃ、我に任せておれ」


ディアマトは振り返り俺にニコっと笑顔を向ける。


「……ディアマト」

「お前のような子供に何ができるというのだ」


ディアマトはバムーダに視線を戻すと、一気に体から紫色の禍々(まがまが)しいオーラの様なものをあふれ出してくる。

そして、ディアマトは冷たい声でバムーダに返答する。


「案ずるな。……覚悟するがいい、我が主様を傷つけようとした罪……その身で知るで知れっ!」


――ガシッ!

ディアマトはすぐさま片手をドラゴン化させ、瞬時にその手でバムーダを鷲掴みにする。


「……なっ!」


驚くバムーダを他所(よそ)に、ディアマトはそのまま――


――ドゴオオォォォォォンッ!

バムーダを思いっきり壁に叩きつける。


「ググ……ッ! ……おのれ」


バムーダはよろめきながら呟く。


「……ほぅ、まだ歩けるようじゃな」

「これほどの力を隠しておったとは……かくなる上は」


バムーダはそう言うと両手を強固に握りしめて大きく振りかぶった後――


「……な、何をする気じゃ!」

「道連れになって貰う、階段ごと崩れ落ちるがいい」


――バゴオォォォォンッ!

バムーダはものすごい速度で両手を振り下ろし、思いっきり足元の階段を叩きつけた。


ピキ……ピキピキ……ッ!

階段にはバムーダが打ち付けた地点から四方に亀裂が入り、階段自体が崩れ始める。


「……あ、足場がっ!」

「く、崩れるわ! ……ど、どうするのよアモン!」


慌てふためくマリッサを横目に俺はバムーダの近くにいたディアマトの足場が落下しそうな状態に気づき――


「危ないディアマト!」


――ガシッ!

俺はすぐにディアマトを抱き寄せる。


「主様っ……すまぬ、あやつを潰さない程度に力を加減しなければ今頃……」

「はは……あれで加減していたのか。……って答えてる暇はないな」


俺はすぐに皆の所に避難するが、すぐに俺達のいた足場も崩れ落ちてしまう。


「わぁぁぁぁ! 落ちるにゃ~!」

「大丈夫だキャスティ! ……アブソリュート・シールド!!」


――スタっ!

慌てふためくキャスティを横目に俺はすぐに俺達を囲うように空気の壁を展開し、俺は見えない地面に着地する。


「……ふぅ、何とかなったな」

「わわっ! アモンさん! 上からも降ってくるにゃ!!!」


顔を上げると、上にあった螺旋階段も落下してきたが上部にも空気の壁を展開していたので俺達を避けるようも瓦礫が地面に落下していった。


「よ、避けていくにゃ……」

「落ち着いてキャスティ。もう空気の壁で囲っているから大丈夫だよ」

「……危なかったわね、アモン」


エレナも事なきを得た事に安堵していた。


「だね。これで落ちる事はないけど……」


俺は崩れてなくなった上部に視線を向けて続ける。


「……上がる事もできなくなったな」

「アモン、これからどうするのよ!」


マリッサが問いかけてくる。


「……どうしようか」


俺が悩んでいると、抱きかかえていたディアマトが提案してくる。


「……主様、我が上まで連れていってやろうかの」

「え、できるのかディアマト!」


俺は抱きかかえるディアマトに問いかける。


「さっきの応用じゃ、翼部分と腕をドラゴン化すれば飛ぶこともできるし、主様達も手で持って上に向かえる」

「マジか! お願いできるか?」

「お安い御用じゃ!」


俺はすぐに足場以外の空気の壁を解除する。

抱きかかえていたディアマトを見えない地面に降ろすと、ディアマトはすぐに片手と翼部分をドラゴン化させる。


「さ、主様達は手に乗るのじゃ」

「それじゃ、失礼して……」


俺達はディアマトの手に乗り込む。

ディアマトは俺達が落ちないように優しく掴むと翼を羽ばたかせて宙に浮き始める。


「……おぉ、行けそうだな」


俺はディアマトが立っていた空気の壁を解除する。


「それじゃ、このまま最上階まで向かいのじゃ!」

「あぁ、頼むディアマト!」


それから俺達はディアマトに乗って最上階まで向かうのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

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