70 武器防具の強化
俺は脱衣所を抜けると、薄暗い廊下でエレナが待っていてくれた。
「……やっと出て来たわね」
エレナがジト目で俺を睨んでくる。
あれから俺はゆっくり湯船に入り直していたので、エレナは少し待っていた事になる。
「う……待っていてくれたんだ」
「……ふん、どうせ大食堂の場所が分からないだろうから案内してあげようと思ったのよ」
「そうだったのか……ありがとう、エレナは優しいな」
「……ほら、いいから行くわよ!」
「あ、待ってくれ!」
頬を染めながら大食堂へ早歩きで進むエレナに俺はついていく事にした。
「そういえば、さっきエアリア達が話していたけど、早速ラルクと稽古していたんだって?」
「えぇ。グラインボルトに向かうまでに少し時間も出来ちゃったし、ラルクとの闘いも中途半端だったからね」
「なるほどね。でも、確か武器って部屋で回収されているはずだよね? 組み手でもしていたのか?」
エレナは思い出しながら話す。
「あぁ、木刀を使っていたのよ。中庭に用意されていたから使わせてもらったの。私は短剣でラルクは刺突剣のね」
「……木刀ね。なるほど、それなら安全だ。……それで、勝敗は?」
「それが、勝敗が付く前にアモンに気が付いて……今に至るって感じ」
「あぁ……そっか。すまんな、兄妹水入らずの時に邪魔しちゃったみたいだな」
「いいのよ。またラルクとはタイミングを見て稽古すると思うし……っと、そろそろ着くわ」
エレナと話をしながら進んでいると、大きな扉がある部屋が見えた。
「あそこか」
俺とエレナは扉を開けて中へと入っていった。
すると、大食堂にはボレサスやテキサリッドと先ほど大浴場にいたエアリア達が既に座って俺達を待っていた。
「……もう、あなた達遅いじゃない! いつまで待たせるのよ!」
「ごめん、ちょっと迷っちゃって」
ご立腹なマリッサにとりあえず適当な理由を付けて謝っておいた。
「マリッサ様。まだアンディ様達がお見えになっていません。どちらにしても、まだ食べてはいけませんよ?」
「えぇ~!! いいじゃない、少しぐらい!」
「ダ メ で す」
マリッサは傍で控えていたマイトと痴話げんかを始めたので、俺とエレナはエアリアの近くへと向かった。
「さ、アモンさんにエレナさん。座ってください」
エアリアが隣の空いている席に誘導してくれたので、俺達はお言葉に甘えて座る事にした。
俺とエレナは席に座ると、近くに座っていたキャスティが机に並べられた料理を見ながら唸っていた。
「……じゅる……アモンさん達が来たからもう食べてもいいかにゃ?」
「もう少し待つのじゃキャスティ。……お、どうやら国王が来たみたいじゃぞ」
ディアマトがそう言うと、アンディ王とラルクも大食堂に入ってくる。
俺はラルクに対して疑問をぶつける。
「ラルク、アンディ王と一緒にいたんだ」
「あぁ、少し前までエレナと稽古をしていたんだが、急用ができたと言って去って行ったのでな」
ラルクはエレナに視線を向けていたが、エレナはそっぽを向いていた。
俺の事はラルクには秘密にしていてくれたようだ。
「……それで別れた後にアンディ殿と鉢合わせしてな、今後のラインセルとラビスタットについての関係について話し合っていたところなのだ」
「そうですなラルク殿。……して、アモン殿達もゆっくりしておりますかな?」
「はい。お陰様でグッスリ休むことができました」
俺がお礼を言うと、エアリア達も便乗してくる。
「私達もお風呂も頂きました。とても気持ち良かったです! ありがとうございます!」
「ふむふむ、お気に召したようで良かった。あと……申し訳ないが、まだ武器防具の製作には時間が掛かるようで、空腹だと思い……皆さんに料理を用意させて貰ったのだ」
「ありがとうございます。……それで質問なんですが、武器防具を強化って言っても、具体的にどういった強化をして頂けるんですか?」
俺はお礼を言いつつ、ふと浮かんだ疑問をアンディ王に問いかけた。
「そうですな。全員そろっておりますし、強化内容を共有しておいた方がいいであろう」
すると、アンディとラルクも近くの席に座る。
俺は今にも料理にかぶりつこうとしているキャスティを横目にアンディに提案する。
「あ、はい! えっと……料理を食べながらでもいいですか?」
「あぁ。存分に食べてくれ」
アンディ王の言葉を聞いたキャスティはものすごい勢いで料理を胃袋の中に仕舞っていく。
「……それで、どういった強化内容なんですか?」
俺は視線をアンディに戻して続きを促した。
「あぁ、順番に説明していこうか。まずは防具だが、今まで装備していた装備品を流用する事に伴って強固なオリハルコンの素材に我が国が作り出した特殊素材を混ぜる事で柔軟性を兼ね揃えた強固な素材にしてしたものを防具にコーティングさせる」
「……ちょっと待ってください。オリハルコンを使って頂けるんですか?」
エアリアが驚きながらアンディ王に尋ねる。
「あぁ、わが国もアモン殿達に協力を惜しまないつもりだ。……確認した担当者の話だとエアリア殿の服には貫通した後が残っておったが……これからはそういった敵の攻撃を貫通させることなどは無くなるだろう」
「へぇ……その、コーティング技術によって防具自体の見た目は変わらないけど、防御力が上がるって感じですか?」
「その通りだ。その方法だと、キャスティ殿のような防具に愛着がある方でもご満足いただけるだろう」
「……あ、ありがとうにゃ!」
キャスティは話を聞いていたようで、食べる手を止めてアンディ王にお礼を伝える。
「アモン殿が言う通り、見た目は変わらないが防御力は強固となる。大抵の攻撃は貫かれる事はないからアモン殿達の命を守ってくれるであろう」
「……それはとてもありがたいです。ありがとうございます」
「ただ、ディアマト殿に関しては籠に軽装が入れられてなかったので何もしていないが、よかったのであろうか?」
アンディ王はディアマトに視線を向ける。
「案ずるな、我の服装は全て我の皮膚からできておる。加工など必要ないのじゃ」
「……これは失礼した。ディアマト殿はドラゴンであったな」
「うむ」
一呼吸を置いて、アンディ王は続ける。
「……さて、続いて武器についてだ。武器には世界で最強の高度を持つアダマンタイトを用いて我が国が開発した特殊加工を活用し刀身ごと作り変え、柄に収められている茎ごと作り変える」
「……なるほど、武器の芯部分だけ入れ替えるって感じなんですね」
「その通りだ。切れ味は今までとは比べ物にならないから扱いには十分注意するのだぞ」
「わかりました。ありがとうございます」
アンディ王はエアリアに視線を向ける。
「あと、エアリア殿の杖は専用にミスリスの素材で作り直しておる。これまで以上にマナの構築をサポートしてくれるだろう」
「……え、本当ですか! ありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。我が国の村を守ってくれた恩もある上に戦争が始まれば、わが国も巻き込まれるだろう。そうなる前に、グラインボルトで暗躍している者達を頼みます。アモン殿」
アンディ王は俺に頭を下げてくる。
隣に座っているラルクがアンディ王に語り掛ける。
「アンディ殿。アモン殿は未知なる力をお持ちの方だ。それに他のお連れの方達も強靭な者達ばかり、安心して俺達に任せてくれて構わない!」
「ありがたい……。さ、料理が冷めてしまう前に食べてしまいましょう」
「そうですね。俺も頂かせてもらいますね」
俺達はそれからは他愛もない談笑をしながら夕食を食べ終えた。
食事を済ませた後、俺達は満腹のお腹を休ませる為に夜景が見える中庭に集まっていた。
「うぅ……食べ過ぎたにゃ! ……でも、こんな時は動くに限るにゃ!」
「いいわねキャスティ! 相手なら私がするわ!」
中庭に到着して早々マリッサとキャスティはやる気の様子だ。
「やるなら、木刀があるわ。中庭の隅に用意されているから自由に使っていいらしいわよ」
「それはいいにゃ!! それじゃ早速使わせてもらうにゃ!」
「えぇ、いきましょキャスティ!」
エレナから聞いたキャスティとマリッサは木刀が置かれている場所へ駆けだしていく。
「そうだラルク、お腹が落ち着くまで私たちもさっきの続きしない?」
「……お、いいな。それではやるとするか!」
キャスティ達に触発されたエレナとラルクも木刀が置かれている場所へと駆けていった。
そんな一連の流れを俺は芝生に腰を下ろしてお腹をさすりながら眺めていた。
「……元気だな、あいつら」
「ふふ、良い事じゃないですか」
傍に座っていたエアリアは俺にニコっと微笑みかけてくる。
「……そうだな。俺達はもう少し夜風に当たっていようか」
「はい!」
傍にはマイトやディアマトも同様にキャスティ達を眺めている。
俺もキャスティ達に視線を戻し、夜風を体で感じながら中庭で楽しそうに動き回る皆を見守るのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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