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69 クルブトレク城でのひと時

俺はホビトに部屋に案内される。


「アモン様、こちらになります」

「ありがとうございます。……いい部屋ですね」


エクリエル王国の部屋とまではいかないが十分手入れが行き届いている広い部屋なのを確認する。


「アモン様、武器や防具は入り口付近の(かご)に入れてくださいませ」

「わかりました」


俺はすぐそばにある籠に視線を向ける。


「後ほど担当の者が回収に周り、武器や防具の強化を行わせて頂きます。強化が終わり次第、報告させて頂きます。強化が完了するまではクルブトレク城内に大浴場など完備しておりますのでご自由にご利用くださいませ。……それでは、お連れの方もご案内致します」


ホビトはエアリア達に視線を向ける。


「はい。お願い致しますね」


エアリアはホビトにそう言うと俺にニコっと微笑みを向けてくる。


「アモンさん、また後で」

「うん。エアリア達も旅の疲れを取るといいよ」


俺はエアリア達と軽くお別れを済ますと、扉はパタンと閉まり室内には静寂が訪れる。

ホビトが言っていた通り、俺は装備していた軽装を脱ぎ(かご)に入れると、用意されていた純白なローブを体に羽織る。


――ぱふっ

俺は奥にあるふかふかのベットに近づき腰を落とす。

エクリエル王国の部屋程ではないが、とても柔らかく相当寝心地の良い材質を使われているようだ。


「……ふぅ。まさか、また城の部屋を貸してくれるとはな」


ドワーフ族のアンディ王は相当テキサリッドを信頼しているのだろう。

そうでなければ、見ず知らずの俺達にこんなに良くしてくれるはずがない。


「細かい事はいいか……一先ず俺も疲れを取ろうっと」


そう呟くと俺はそのまま後ろ方向に倒れ込み、天井を見上げる。

俺は疲れが溜まっていたのか、自然と瞼を閉じるとスッと意識が途切れた。




――ガバッ!

ハッとして目を開けて起き上がると、窓の外は既に暗くなっていた。

入り口付近の軽装を入れていた(かご)を見ると、既に軽装はなくなっており担当の者が回収したのだろう。


「……寝てしまったのか。……えっと、確かお風呂があるって言っていたよな……」


俺はそう呟きながら立ち上がり、廊下へと出る。

廊下は薄暗い照明が灯っているだけで、窓の外から見える工業施設の明かりが廊下は明るく照らしていた。


「……へぇ、こんな夜まで頑張っているんだな」


俺は1人関心しながら窓から見える夜景を横目に風呂場を探した。


「お! あれか」


少し歩くと、一目で分かるような浴場の入り口が見えたので薄暗い照明を頼りに入る。

中に入り照明のスイッチを押すと、一気に視界は明るくなり脱衣所がハッキリと視界に広がる。


「ここも広いな」


俺は脱衣所の奥へ進み大浴場への入り口を開けると、中はものすごい湯気が上がっていた。


「……よし、入れそうだ」


視界は悪いが湯は張られている事が確認出来た俺は、大浴場の入り口を閉じると羽織っていたローブを籠に入れて大浴場に入る。

すぐに体を洗い終わり、張られていた湯船につかると丁度いい温度で旅の疲れが吹き飛ぶほどの安らぎ感を感じてしまう。


「はぁ……休まる…………最高だな」


しばらく湯船を堪能していると、浴槽の入り口が開く音が聞こえる。

俺は入り口付近に視線を向けるが、湯気で視界が悪く確認が出来なかった。

誰なのか声を掛けようとしたその時――


「へぇ、私の城と比べたらあまり広くないわね!」

「……マリッサさん、使わせて貰っているのであまりそういう事言わない方がいいと思いますよ?」


一瞬でマリッサとエアリアの声だと分かった俺は、一気に安らぎ感は吹き飛ぶ。

……混浴かよ!


「……っ!」


俺は1人焦り始め、奥に避難すると湯を排出している大きな湯口(ゆぐち)の陰に隠れる事にした。

咄嗟(とっさ)に俺は隠れてしまったが、自分の行動が間違っていた事に気付く。

なせなら――


「待つにゃ~! お風呂には私が先に入るにゃ!」

「……走るでないぞキャスティ! 湯船につかるのは体を洗ってからじゃ!」

「うぅ……わ、わかったにゃ!」


――2人に続いてキャスティとディアマトも入ってきたからだ。

俺はタイミング悪く風呂に入ってしまった事に後悔しつつも、バレないように息を潜める。


「……それにしても、いつ見てもマリッサさんのお腹の痣って目立ちますね」

「そうかしら? ……でもエアリアこそ、ウエスタンで魔物に貫かれた傷が残っているわね」

「あはは……そうですね。でも、いいんです! ……この傷はマリッサさんやアモンさんが私を助けてくれた証のようなものですから」

「……エアリア……そうねっ! あの時はエアリアに魔法を教えて貰ってて本当に良かったと思ったわよ!」

「はい! あの時は、本当にありがとうございます、マリッサさん」

「いいのよ! ……でも、その傷よりも目立ってるところがあるけどね!」

「キャッ! ……もう、マリッサさん! 急に揉まないでくださいよ!」

「あぁ! 私も混ぜるにゃ~!」

「もう、キャスティさんまでっ!」

「……お主達は落ち着いて体を洗えないのかの……」


湯気でまともに見えないのでバレる事は無かったが、エアリア達のワイワイした会話が聞こえてくる。

俺はその会話を聞きつつ1人悶々としながら時間が過ぎるのを待つのだった。




しばらくすると、体を洗い終えたのか俺が入っている湯船の方に近づいてくる足音が聞こえてくる。

……ヤバい!!


「……すぅ~~~~~」


――ザブンッ

俺は思いっきり息を吸い込み、更に空気の壁で大量の空気を囲い俺と一緒に潜水させた。



……だが、その行動も間違っていた事がすぐにわかった。

何故なら、湯の中には湯気はなく湯船に入ってきたエアリア達の下半身が鮮明に見えてしまったからだ。


「……!!」


俺は良くないと思ったのですぐに顔だけを湯船からだし、湯船の隅っこで息を潜める事にした。

……一体何をしているんだろう、俺。


「エアリア、そういえばエレナはどうしているのよ?」

「確か、ラルクさんと稽古しているから後で入るって言ってましたよ」

「あ~なるほどね。……双子かぁ……私には兄弟がいないからよくわからないわ」

「……私も一人っ子なので、兄弟や姉妹にはちょっと憧れちゃいますね」

「あら、エアリアも一人っ子なのね! お揃いね、エアリア!」

「キャッ! もう……マリッサさん、急に抱き着かないでください!」

「キャスティも! 一人っ子にゃ、一緒にゃ~!」

「あぅ~キャスティさんも湯船で暴れないでくださ~い!!!」

「……相変わらずお主達は湯船の中でも元気じゃの」


終始冷静なディアマトと対照的に湯船につかってもワイワイするエアリア達だったが、俺は湯気でまともに見えなかったので静かに時間が過ぎるのを待った。




しばらくすると、エレナの声が入り口から響き渡る。


「あなた達! クルブトレクの王様が晩御飯を用意してくれたらしいわ。出たらすぐに大食堂に集まってほしいそうよ」

「え、本当っ!? それじゃ早速向かいましょう! もうお腹ペコペコだわ!」


――ザパァッ

マリッサはエアリアの手を引き湯船から出ていく。


「あぁ、マリッサさん、待ってください」

「私も行くにゃ!」

「……それでは我も向かうとするかの」


次々と湯船から出て行った皆は脱衣所へと姿を消していった。


「……ふぅ」


俺は一先(ひとま)ず危ない状態からは脱する事が出来て安心する。

……だが、入り口付近から俺が潜んでいる湯船の方へ歩み寄ってくるエレナ。


「……っ!?」

「……まだ皆着替えている最中だからもう少し、そのままでいなさい」


何故か俺の存在に気付いていたエレナは俺に聞こえるほどの声で呟く。

しばらくすると、脱衣所にいたマリッサ達がいなくなる。


「そろそろいいわね」

「……エレナ、何で俺がここに隠れてるってわかったの?」


俺は体を手で隠しながら問いかける。

エレナは頬を赤くしながらそっぽを向きながら答える。


「えと……ラルクと稽古している最中に私のスキルの話になってね。……実際に使ってエアリア達を見てみたらアモンが隠れているのが見えたのよ。……大方、アモンの事だから先に入っててエアリア達が入ってきて出るに出れなくなったんじゃないの?」


その通りすぎて、何も言い返せなかった。


「……う、まぁ……でも、すごく助かったよ。ありがとう、エレナ」

「いいのよ。……それじゃ! 私はもう行くから、上がったらアモンも大食堂に来なさいよ!」


エレナはプイっと背を向けて呟く。


「わかったよ」


俺は背を向けたエレナに答えると、エレナは脱衣所へと姿を消していった。

エレナがいなくなった後、俺は一気に脱力する。


「ふぁ……疲れた……」


俺は疲れた気力を回復するかのようにもう一度湯船でゆっくりしてから大浴場を後にするのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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