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68 ラインセルの技術協力

俺が皆に号令を伝えた後、テキサリッドが手を上げて俺に声を掛けてくる。


「アモン殿。一つ提案なのだが、我が国ラインセルには強靭な武器防具がある。国王に報告も兼ねて皆さんに武器防具を提供できるやもしれぬ。是非、わが国・ラインセルにある工業都市クルブトレクに寄っては頂けないだろうか」

「クルブトレクか……。ラインセルの国王が協力をしてくれるのなら俺は良いと思うが……ラルクはどうだろう?」


俺はラルクに確認を取る。


「……そうだな。今出来る限り戦力を上げておきたいところだ。テキサリッド殿、お願いできるだろうか」

「ありがたい。それではアモン殿。クルブトレクまでは私が案内しよう」

「よろしく頼むよ。ディアマト、そういう事だからまずはラインセルまで移動お願いできるかな?」

「分かったのじゃ、主様!」

「よし! それじゃすぐに向かおうか!」


皆は頷くと、俺達はディアマトが飛び立てる城門前まで移動することにした。




城門前に到着すると、ラルクがセバストに向かって声を掛ける。


「セバスト、お前は城に残れ」

「……で、ですがラルク様」

「これからは危ない戦いになる。……セバストまで危険な場へいく必要はない。どうか、後は俺達に任せて城に残っていてくれないだろうか」

「……ラルク様」

「ラフィーロに逃げろだの、城に残っていろだの自分勝手なのは重々承知だが……どうか分かってほしい」

「……いえ、私の事を思っての事だとは理解しております。……わかりました、アモンさんがお傍にいるのであれば問題はないでしょうが……ラルク様、どうかご無事で」

「あぁ、少し留守にするがその間はファランザを頼むぞ、セバスト」

「畏まりました。いってらっしゃいませ!」


ラルクはセバストをお別れをした後、俺達に近づいてくる。


「待たせた。移動はアモン殿達が乗っていたドラゴンで向かうのか?」

「あぁ、その通りだ。……セバスト、ここまでありがとう!」


俺は城門前で俺達を見守るセバストに手を振りお礼を伝える。


「いえ! 私もアモンさん達にこのファランザ城まで連れ戻して頂き、とても感謝しております。本当にありがとうございました!」


俺はセバストに笑顔を浮かべつつ、ディアマトに視線を移す。


「それじゃディアマト、お願いできるか?」

「わかったのじゃ! ……少し離れておれ、準備をするのじゃ!」


俺達はディアマトから距離をおくと、ディアマトは白く光り輝いて瞬く間にドラゴンに変化する。

ドラゴン化したディアマトにラルクは驚いていた。


「これは……すごいな」

「さ、主様。乗ってくれるかの」


ディアマトは大きな手を近づけて俺達に向かって問いかける。


「それじゃ皆も乗ってくれ」


俺達はディアマトの手に乗り、背中へと移動する。


「それじゃテキサリッド、ラインセルの王がいるクルブトレクまで案内お願いできるか?」

「了解した! クルブトレクはラビスタットから南東にある」

「聞いていたかディアマト? 南東まで向かってくれ!」

「わかったのじゃ!」


それからディアマトは徐々に翼を羽ばたかせ空に浮いた後、ラインセルのある南東方角へと勢いよく向かっていった。




しばらく進むと、森が少なくなっていきラビスタット領を抜けた事がわかった。

そしていくつかの小さな村を抜けた後、一段と高い外壁に囲まれ中からもくもくと煙を立ち昇らせる大きな大都市が見えた。


「テキサリッド、あれか?」

「はい! あれが工業都市クルブトレクです。あの厚く閉ざされた外壁の中にある城に我が王・アンディ様がいらっしゃいます」

「……よし、ディアマト。そのままあの街に向かってくれ」

「任せるのじゃ!」


それからディアマトはクルブトレクの門前に着地して俺達を地面におろしてくれた。

テキサリッドが門前に駆け寄ると、ドラゴンに驚いていた門兵はテキサリッドに尋ねる。


「テ、テキサリッド様!? 先ほど、テキサリッド様が引き連れていた兵たちが戻ったのですが……なぜテキサリッド様だけドラゴンにお乗りになられているのですか!?」

「すまないが詳しく話している暇はないのだ! 王に会いたい。通してくれるか?」

「か、畏まりました! おい、門を開けろ!」


門兵は声を上げると、固く閉ざされていた扉はすぐに開く。

頑丈な門がテキサリッドの一言で開いたことに俺は驚いていた


「……へぇ、テキサリッドって顔が広いんだ」


俺は感心しながらテキサリッドに問いかける。


「はい。兵士の中で私を知らない者はいません。さ、付いてきてください」


門が開き終わると、テキサリッドは俺達を門の中へと誘導する。

中に入ると、街の外からでも確認ができた煙を排出している工業施設が確認できた。


「……すごい工業施設だね」

「アモン!! あの建物の中では何をしているのかしら!」

「そうにゃ! 中はどうなっているのかにゃ!?」


パイプが至る所に張り巡らされており、所々でガスが噴射していたり、俺もワクワクしていたが同様にマリッサやキャスティも興奮気味に街並みを眺めていた。


「あの建物内で我らの身を守る武器防具や化学兵器を作っているのです」


興奮気味な俺達をほほ笑みながら眺めていたテキサリッドは答える。


「なるほどね、あそこでいろいろ開発を進めているんだ」

「はい。……さ、アモン殿。城はこちらです」

「……っとごめんごめん。案内をお願いするよ」


それからテキサリッドに案内され、俺達は城門前に到着する。

すると、城門を守護していた兵士がテキサリッドに気付く。


「おぉ! テキサリッド様もお戻りになりましたか!」

「その様子だと、私の兵士達はもう戻っているのだな?」

「はい。少し前に兵士達は戻っておりますので事情は聞いております。さ、王が待っておられます。中へどうぞ」


すると、城門が開かれる。


「皆さん、中へどうぞ」


俺は門兵に軽く会釈をしながらテキサリッドと共に城内に入る。

城内に入ると案内された場所は王室間で、テキサリッドは奥に座っている低い身長ながらも豪勢な服を着た国王らしき人物に声を掛ける。


「ただいま戻りました、アンディ様」

「テキサリッドか!? 今、戻ってきた兵士達からお主がラビスタットに向かったと聞いておったのだが?」


そう話すアンディ王の前ではドワーフ族の村で会ったドワーフの兵士達がアンディ王の前に(ひざまず)いていた。

どうやらディアマトの移動速度が速すぎたようで、俺達がラビスタットでラルク達と話を付けてクルブトレクに来る間に、テキサリッドの兵士達はやっとクルブトレクに到着していたようだ。


「王よ。ディアマト殿はドラゴン種でございまして、ドラゴンに乗って移動を行っていたのです。既にラビスタットでの話は終えております」


すると、ラルクが一歩前に出る。


「お初にお目にかかる。俺はラビスタットの国王ラルク・ファランザと申す者だ。今回はせ参じた理由だが――」


それからラルクは俺達の事やグラインボルトの現状をアンディ王と共有する。


「――といった状況により、グラインボルトに向かおうとしていたのだが、テキサリッド殿からの提案により武器防具の提供を求めてこのクルブトレクに足を運んだ次第だ」


ラルクが説明を終えると、一度アンディは頷きテキサリッドに視線を向ける。


「状況は分かった。……ご苦労であったな、テキサリッド」

「いえ!」


テキサリッドはすぐにアンディ王に跪く。

アンディ王は俺達に視線を戻す。


「……じゃが、残念だが防具は我らドラーフの体格に適したものしかないのだ。少し時間を頂ければ、お主達に個別に特化した武器防具を新調できるが、どうだろう?」


アンディの提案にラルクは少し考えて答える。


「時間はおしいが……戦力を上げられるのなら致し方ないだろう。少しの間、待たせて頂こう」


ラルクは俺に視線を向ける。


「アモン殿、それで問題ないだろうか?」

「うん。俺も異論はないよ。長旅で俺達の武器防具も痛んでいたところだからね」


俺はエレナやキャスティの装備品を見ながら答える。


「そうね。そろそろ手入れも必要だと思っていたし、私も異論はないわ」

「私もにゃ! ……でも、この防具はアモンさん達が用意してくれたものだから、愛着があるにゃ……」


キャスティは自身の服を見ながら答える。


「……それなら、今装備している素材を元に強化することもできる。それで問題ないか?」


アンディ王は俯くキャスティにそんな提案をすると、キャスティはパァっと表情が明るくなる。


「本当かにゃ!? 是非、お願いしたいにゃ!」

「あぁ、構わない。それでは武器防具が新調できるまで皆の者に部屋を用意しよう。……ゆっくり体を休ませると良い」


アンディの申し出は非常に有難かった。

実際のところ、ウエスタンから出発してずっと動きっぱなしだったので、体が悲鳴を上げていたところだったのだ。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」


アンディは俺の返答を聞くと傍に控えていたドワーフ族のメイドに視線を向ける。


「ではホビト、アモン殿達を部屋へ案内を頼めるか?」

「畏まりました。アンディ様」


ホビトというドワーフ族の女性メイドは返事をすると、俺達の傍へ歩み寄ってくる。


「私はホビト・クルーザーと申します。この城のメイド長をしております。どうぞ、よろしくお願い致します。……さ、皆さまお疲れでしょう。私に付いてきてくださいませ」

「……これはご丁寧にありがとうございます。お願いします」


それから俺達は疲れ切った体を休ませる為、ホビトに部屋を案内してもらうのだった。

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