28 突然の急襲
俺は2人を追いかけると、お城の出口付近で話し込んでいた。
「お嬢様! さすがにドレスに着替えてから出かけませんか?」
「いいじゃないこの服で! ドレスだったらもっと目立ってしまうわよ!」
俺は2人の意見を聞き、マリッサの意見に賛同する。
「……確かに、ドレスより今のままの服の方が街では目立たないかもしれませんね」
「ほら、アモンもこう言ってるじゃない! 早く行きましょう!」
「アモン様がそう仰るのであればいいですが……あ、待ってください! お嬢様!」
俺とマイトは駆けだしたマリッサを追いかけて城内から出る。
城下町に繋がる大きな橋の中央でマリッサが大きく背伸びをする。
「ん~! 今回で2回目よ! アモンが来てくれたおかげでまた外に出られたわ! ありがとうねアモン!」
「そうだったんだね。俺が来る前は城からは出たことなかったの?」
「自分の足で出歩くのは無かったわね! 乗り物に乗って出かける事はあったぐらいかしら?」
「へぇ……お嬢様っていうのも大変なんだね」
「そうなのよ! お父様ったら心配しすぎなんだから」
マリッサはため息交じりに答える。
「お嬢様。アリシア様達を探したらすぐに戻りますからね」
「分かってるわよマイト! ほら、2人とも行くわよ!」
マイトがマリッサに釘を刺すのを横目に見ながら俺達は橋を渡りきった。
「それでマイト、アリシア達はどこにいったんだろうね?」
「……確か、出かける時は探索をしてくる、とだけ仰っていただけなの。具体的な場所までは分かりませんね」
「うぅん……そうなると街の人に聞き込みをした方がよさそうだね」
それから俺達は街の人たちに聞き込みをしながらアリシアを探すことにした。
しばらく聞き込みをしてみたが、アリシア達の情報を聞き出すことはできなかった。
「……なかなか見つからないね」
「そうですね。一体どこに行かれたのでしょうか……」
俺がマイトと話していると、俺達から少し離れた場所にある露店商品にマリッサの目が奪われていた。
「ねぇマイト見てよ! これ可愛いわ!」
「はぁ……何ですか、お嬢様?」
マイトはため息交じりにマリッサに近づいていく。
「……っ!!」
次の瞬間、近くを通った馬車の中から何者かの手が伸び、マリッサの口を押えながら連れ去ってしまう。
「お嬢様!!」
マイトはすぐに追いかけるが、馬車はスピードを上げて徐々に引き離していく。
「逃がさない!」
俺は極小の空気の球を馬車の後輪部分に向けて放つ。
――ガガガッ!
空気の球が後輪部分を大破させると、荷台が地面に引きずられて急ブレーキがかける。
「く、くそ!」
中から先ほどマリッサを連れ去った者がマリッサの両手を縄で拘束し、口を布で塞いだ状態で出てくる。
「ん~!!」
必死に暴れるお嬢様だったが、両手を拘束されているので抜け出せずにいた。
「お嬢様!」
「マリッサ!」
「おっと! ……それ以上近づくんじゃねぇぞ? 一歩でも近づいてみろ、お姫様がどうなってもいいのか?」
男は拘束しているマリッサに剣を喉元に突きつける。
「「……っ!!」」
相手の言葉で俺とマイトの足が止める。
すると、馬車の中から数人が出てくる。
「お前達!! ……先に依頼人の元へ行ってろ! 俺も後で合流するからよ」
「は、はい!」
男の声で他の者たちは一斉に走り去ってしまう。
「……このまま逃げ切れると思っているのですか?」
マイトは冷静に男へ問いかける。
「思うね。現にお前達は俺に手も足も出せないだろう?」
確かに手も足も出せない。
……だが、空気操作は出来る。
「マリッサ! 動かないで!」
「……っ!」
マリッサが頷いたのを確認すると、俺は相手が剣を持っている手首に向かって超極小の空気の球を放す。
更に、アリッサの手を拘束していた縄を空気の刃で切り落とした。
――バチンッ!
男の手首に空気の球が当たると手を思いっきり弾き、その反動で剣を地面に落としてしまう。
マリッサは自由になった手で口の布をずらしながら落ちた剣に手を伸ばす。
「その剣頂くわ!」
マリッサは地面に転がった剣をすぐさま拾い上げた。
「こ、この女!!」
男は予備の剣を腰から抜き、間髪入れずに剣を持つマリッサに斬りかかる。
「お嬢様!」
「クッ!」
マイトは駆けだすが間に合わず、俺も空気の壁を展開しようとしたが、一度に2つのスキルを行使したことで上手く制御できずにいた。
このままではマリッサが危ない――
――ガキィィィンッ!
だが、男の振り降ろした剣はマリッサが拾った剣により防がれていた。
「……なっ! なんだと!」
「ふん、ボルティガと比べたら全然軽いわね。それでも本気?」
マリッサはそう言うと、男を剣ごと弾き飛ばす。
――ズサァッ!
弾かれた男は何とか踏ん張り剣を構え直す。
「な、なんだこの女は、剣が扱えるのかよ!」
男はマリッサの剣さばきに驚きを隠せない様子だった。
俺達も少なからず驚いていたが、マリッサはそんな俺達に視線を向ける。
「この男、私が退治するわ! マイト達は見学でもしてなさい!」
「いえ、マリッサ様。……私は少し依頼人とやらにお会いしてきます」
マイトは先ほど逃げ出した者たちの方に鋭い眼光を向ける。
「……アモン様、マリッサ様をお願いできますでしょうか?」
「わかった。でも、あまり乱暴はしないように」
「心得ています。それでは」
マイトはそう言うと、逃げ出した者たちを追いかけ始めた。
俺は視線をマリッサに戻す。
「さぁ、形勢逆転よ! 丁度実戦をしてみたいと思っていたところだったの、かかってらっしゃい!」
「一度俺の剣を止めただけで調子にのるなよ、この女!」
――ガキィィィンッ!
男は再びマリッサに斬りかかるが、マリッサは軽々と受け止める。
「これで2回目よ! 次は私の番!」
俺は不測の事態を回避するべく、マリッサが傷つかないように常に空気の壁を展開できるように用意をしていた。
守る用意をしながらも、俺はマリッサの奮闘ぶりに心底関心していた。
「……稽古を続けてきた結果が出ているんだな」
ふと呟いてしまう程、それからもマリッサは男を圧倒し続け、トドメを刺そうとしたその刹那――
――キィンッ!
俺は空気の壁を展開し、男を守っていた。
そして、空気の球を男にぶつけて男を気絶させる。
「そこまで! 勝負ありですマリッサ」
「え! なんで邪魔するのよアモン!」
「まぁまぁ……この男からいろいろ話を聞きたいからね」
話を聞きたいのは本当だが、それよりもマリッサに人殺しをさせたくなかったのだ。
それから俺はマリッサを拘束していた縄を拾い上げて気絶した男を縛り上げる。
「……こんなもんかな」
男を縛り上げていると、道の向こうからアリシア達が駆けつけてくる。
「アリシア!?」
「アモン!! エレナの千里眼で状況を教えて貰ったわ!」
「そうだったのか! それに皆も!」
アリシアの後ろにはエアリア達も駆け付けてくれていた。
合流したエアリアが俺に話しかけてくる。
「アモンさん! マリッサさんと何で街なんかに?」
「あぁ……ライフォードからアリシアを探してほしいって頼まれたんだよ」
「そうだったんですね……すみませんアモンさん、探していらっしゃったんですね」
「いや、全然いいよ。気にしないで」
俺はエレナに視線を向ける。
「エレナも駆けつけてくれてありがとう」
「……本当ならもっと早く駆け付けられたんだけどね。アモン達も街に遊びに来ているのかな? って思っていたから気にしていなかったんだよ」
「はは、そうだったんだ。アイネも皆と街の探索を楽しんでたのか?」
俺はアイネの方を向いて質問する。
「まぁね。最初はエアリア達に街を案内する予定だったんだけど、いつの間にか甘い食べ物探索に変わっちゃって……時間を忘れて楽しんでいたわ。反省しなくちゃ」
「広い街だからね。仕方ないよ」
「すっごく甘くて美味しいものばっかりで時間を忘れていたにゃ!」
「そうじゃのう。あの至高の食べ物はまた味わいたいものじゃ」
キャスティとディアマトは見事に甘い食べ物に翻弄されていたようだ。
俺が皆と合流している傍ら、アリシアは剣を持っていたマリッサに近づく。
「マリッサ姫すごいわ! いきなり実戦で相手を圧倒させるなんて!」
「ふふん! 日ごろの稽古の結果よ! まだまだ戦えるんだから!」
マリッサはまんざらでもない表情で答える。
「アリシア、後は俺が対処しておくからマリッサと先にお城へ戻っていてください。ライフォードも探していましたよ?」
「そう……わかったわアモン。先に戻っておくわね。それじゃ行きましょうマリッサ姫」
それからアリシアはまだ遊びたいと駄々をこねるマリッサを宥めながらお城の方へと向かった。
「アモンさん、私たちは付き添いますね! もうお腹もいっぱいですから!」
「うん。お願いね」
俺がエアリア達に笑いかけると、先ほど俺が縛り上げた男が目を覚ます。
「……あれ、ここは?」
目を覚ました男に俺は問いかける。
「目が覚めたか、それでは貴方に依頼した依頼人とやらを聞きましょうか?」
「ふん! 誰が答えるかよ!」
「どうしても話さないのか?」
「あぁ、死んでも話さないね!」
「……わかりました」
男は答えようとしなかったので、俺は男に一度死にそうな目にあわせることにした。
俺は男に手をかざすと男の口元から空気を排除する。
「……うっ!!」
すると、急に苦しみだす男。
「答える気になりましたか?」
男は必死に何度も頷く。
俺はすぐさまスキルを解除すると、男は思いっきり深呼吸を繰り返す。
「はぁ……はぁ……はぁ……! お……お前は……一体」
「……さ、その依頼人とやらに案内して貰えますか?」
「わ、わかった話すよ! だから殺さないでくれ!」
俺は男を縛っていた縄を解く。
「それはあなた次第です」
「……こっちだ、付いてきてくれ」
それから俺は依頼人がいる場所へと案内してもらう事になった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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