29 依頼人の証言
依頼人の元へ案内された俺は荒れたお屋敷の敷地内に繋がる門まで案内された。
入り口には先ほど逃げて行った者達が門の隅にまとめられ意識を失っており、傍にはマイトが立っていた。
「マイト!」
「アモン様!? それに皆さんも……なぜここに?」
「マイトさん、この方に案内して貰ったんです」
エアリアは案内して貰った男に手を差し伸べて話す。
「そうでしたか」
「私たちは兄さんと一緒に案内してもらったけど、マリッサ姫ならアリシアと一緒にお城に戻ったわ」
「……マリッサ様は無事なんですね」
俺はマイトの傍に近づき、敷地の奥にあるお屋敷の外観を眺めながら呟く。
「あのお屋敷に依頼人が?」
「えぇ、私もこの者達からこのお屋敷を案内してもらったところだったんです」
気絶している者達を見ながら俺は尋ねる。
「マイト、この気絶している人たちは殺してしまったのか?」
「いえ。今は気絶して貰っています」
「そっか。よかった」
マイトと話していると、道案内してくれた男が騒ぎ出す。
「お、俺は案内したぞ! もう解放してくれるんだろ?」
「……こいつ、どうするのアモン?」
エレナは騒ぎ出す男を睨みつけながら俺に確認を取ってくる。
俺は少し考えた後、特に解放しても問題ないと判断する。
「……もちろん解放しますよ。道案内ありがとうございます。そこで気絶している者達もお願いしますね」
男にそう伝えた後、マイトに視線を戻す。
「それじゃマイト、依頼人とやらに会ってみようか」
「はい。アモン様」
マイトは返事を返すと俺達は荒れた屋敷の敷地内へと足を踏み入れる。
手入れの行き届いていない敷地内を進み、お屋敷の入り口まで到着する。
「……見るからに怪しいにゃ。アモンさん、このお屋敷に入るのかにゃ?」
「うん。マリッサを狙った者が誰なのか気になるし」
「それで主様。その者と会った後はどうするのじゃ?」
「まずは連れ去ろうとした理由を聞くかな、それから2度としないように釘を打たなくちゃ」
俺はキャスティ達と会話をしているとマイトが入り口の扉に手をかける。
――ガチャッ
扉には鍵はかかっておらず、そのまま開いた。
中は薄暗く、酷く荒れている様子だった。
「……罠などはなさそうですね。行ってみましょうアモン様」
「わかった。エアリア達も気を付けて」
「はい!」
俺達はお屋敷へと足を踏み入れた。
すると、うす暗い奥からうめき声のようなものが聞こえ始める。
「誰だ!」
俺はうめき声のする方へ問いかけると、うす暗い奥から皮膚が腐敗した者たちが複数体歩み寄ってきた。
それを見たエアリアは非常に驚いた表情をする。
「アンデット!? 何故ここに……」
「……アンデット?」
「アモンさん、気を付けてください。無暗に近づくとアモンさんまでアンデットになってしまいます!」
「でも、どうしたら……元々は人間なんだよね?」
「えぇ、ここは私に任せてください!」
エアリアは一歩前に出ると、呪文を唱え始める。
エアリアの発する光で室内が明るく照らされ――
『ホーリーベル!』
杖をかざした先が光り輝き、アンデット達は糸が切れたようにその場に倒れ込んでいく。
「……え、すごい! すごいよエアリア!」
「ほんとね、やるじゃないエアリア」
「すごいにゃ!!」
「えへへ、クロエさんから教えてもらった魔法が早速役に立ちました!」
エアリアを称賛するのもつかの間、奥から足音が聞こえてくる。
「はぁ……せっかく、作ったっていうのに……こうも簡単に壊されちゃ泣けてくるぜ」
奥から姿を現したのはマイトが昨日着ていたモノと同じような黒装束を着た男だった。
フードに隠れて顔は見えないが、その男はマイトに向かって問いかける。
「よぉ、久しぶりだな」
「……っ」
黒装束の男はマイトに問いかけるが、マイトは黙って相手を睨み続ける。
「……あの、2人はお知り合いなのですか?」
エアリアが恐る恐る確認を取る。
「……ふ、まぁいい」
黒装束の男はほくそ笑むと、俺は黒装束の男に向かって問いかける。
「お前がマリッサをさらうように依頼した依頼人なのか!」
「……いや違うな、それはバルディの差し金だ」
「バルディ? ……なら、何故お前のような男がここにいるんだ」
「……俺は気まぐれなんだよ。このバカでかい屋敷が気に入ったから一時的に好きに使わせて貰っていたんだ。バルディが依頼したやつは上の部屋にいるはずさ」
相手からは明確な敵意は感じられなかったので俺は黒装束の男が指し示す2階へと向かう事にした。
「上だな、急ごうマイト」
「……は、はい」
駆けだそうとすると、黒装束の男が人差し指をマイトに向けて問いかける。
「1つだけ忠告だ! ……グズグズしていたら後悔する事になる、速やかに任務を遂行するように」
「……先を急ぎましょう。アモン様」
「わ、わかった」
俺達は黒装束の男の隣を通って上の階へと向かった。
2階も手入れが行き届いておらず、奥へ進んでいくと大きな一室へと到着する。
「失礼致します」
「く、来るな!」
部屋に入ると貴族のような服を着た男が窓際に逃げながら俺達に言い放つ。
「お嬢様をさらうように指示を出したのは貴方でしょうか?」
マイトは冷静に貴族の男に尋ねる。
「わ、私は黒装束の男に頼まれただけなのだ! マリッサ姫を捕まえる事が出来たら莫大な報酬を貰えると!」
「……それは1階にいた者でしょうか?」
「いや、今朝方に黒装束を着た者が2人尋ねてきて、片方のガタイのでかい者から話を持ち掛けられたのだ。1階にいる者は同行人でこの屋敷を気に入ったらしく、依頼中は護衛をしてくれる話になっていた!」
俺は怯える貴族の男に尋ねる。
「なるほど……それでその依頼主の特徴は何かわかりますか?」
「……黒装束に深いフードを被っていたので顔は確認できなかったが……そうだ! 口元に傷跡があったな」
マイトは少し表情が歪むがすぐに元通りになる。
「口元に傷……わかりました。その者とまた会う約束はしているのでしょうか?」
「あぁ、数日後にまた来ると言っていた」
「わかりました。今回は情報提供をして頂いた代わりに見逃して差し上げますが……次お嬢様に手を出した時は貴方の命は無いと心得てくださいますようお願い致します」
「い、言われるまでもないさ、もう危ない橋は渡らない」
「……あと、このお屋敷からも逃げた方がいいでしょう。……命が惜しくなければ」
「それはどういう――」
マイトは答えることなく部屋から出て行ってしまう。
「ま、待ってくれマイト!」
俺達もマイトを追いかけるように部屋から出る。
「あれ? さっきの黒装束の男がいなくなってる」
1階に戻ると既にアンデットの亡骸と黒装束の男は消えていた。
俺はマイトの傍に駆け寄り、エアリア達に聞こえないように俺はマイトに尋ねた。
「……さっきの男の元に来た黒装束の男に身に覚えがあるのか?」
「はい……組織の者です。まさかもう刺客を送り込んでくるとは思いませんでした」
「やっぱり……マイト、これからどうするの?」
「お嬢様をお守りしなくてはいけません。急いで城に戻りましょう!」
「わかった。俺も協力するよ」
「ありがとうございます。アモン様」
俺達はすぐさまお城へと戻り、マリッサの元へと向かった。
城へ戻った後、エアリア達とは別れて俺とマイトはライフォードからマリッサの居場所を確認する。
図書室でクロエから学問の学んでいると聞き、俺達は図書室へと向かっていた。
――バァンッ!
図書室の扉を勢いよく開けてマイトが叫ぶ。
「お嬢様!」
「わっ! ……マイトにアモンじゃない! 帰ってきたのね」
すると、図書室で机に着きながら眠気眼で学問を学んでいたマリッサが驚いて体を起こす。
「いきなりどういたしましたか2人とも?」
黒板の前に立っていたクロエもこちらを向く。
「お騒がせして申し訳ありません。ただいま戻りましたお嬢様」
「お邪魔してすみません。見学しているので気にせずに続けてください」
それからマリッサの誕生日パーティまで俺とマイトは出来る限りマリッサの傍から離れず護衛をする事となった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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