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25 漆黒の暗殺者

目を瞑った俺はそのまま寝てしまい、起きたら窓の外はすっかり暗くなっていた。

俺はお風呂を借りようと思い、ベットから立ち上がる。


「……お風呂ってどこだろう」


立ち上がったはいいが、お風呂の場所が分からない俺は思わず口から言葉が漏れる。

仕方ないので部屋から出て歩きながら探すことにした。


「……暗いな」


部屋から出ると廊下は暗く照明などは消されていた。

コツコツと自分の足音がやけに響きわたる中、窓から差し込む月光を頼りに歩き回る。


「……ん?」


すると、廊下の先に微かに開いている扉の間から部屋の光が漏れ出ていた。

近づくと部屋の中から声が聞こえてくる。


「ライフォード、本当にいいのか?」

「あぁ、決めたことだからな」


俺は通り過ぎようとしていたが、扉の隙間からライフォードとマイトより年齢が高く威厳のある執事姿の男との会話が聞こえてきた。

気になってしまい俺は壁にもたれ掛かり息を潜めた。


「……ならいいが、これ以上魔族を擁護するような行動をするとお前が危ない。貴族どもは目を光らせている事を忘れなるなよ」

「わかっているさ、それもこれも”あの計画”を遂行するためには必要な事だからな」

「本当に諦めていないのだな。……無理もないか、それほどまでにマリッサ様は今は亡き王妃様に似ている」

「あぁ、マリッサも直に16歳になる。……まもなく頃合いだろう」


俺は聞いてはいけない話を聞いてしまったような気がして、忍び足でその場から離れた。

小走りで移動すると大広間に出る。


「あれ? 執事……さん?」


そこにいたマイトはいつもの執事服ではなく漆黒の黒装束に深いフードを被った服装だったので、一瞬マイトである事が分からない程だった。

マイトの表情はいつものニコニコした表情ではなく、焦ったような表情をしていた。


「……っ!」


俺に気付いたマイトは腰に下げていたシルバーダガーを抜き瞬時に肉薄して斬りかかってきた――


「えっ!?」


――キィィィン!

咄嗟(とっさ)に俺は空気の壁を展開し、マイトの攻撃を防ぐ。


「……っっ!」


マイトはしゃべる事はなかったが多少なりと動揺している様子だ。

俺はマイトの四方を空気の壁で取り囲み、身動きできないようにした。


「これは……どういう事ですか?」


動きを封じたマイトに俺は問いかけると、観念したのかマイトはフードを脱いで話す。


「……参りました。もう危害は加えませんので解放してくれませんか?」

「事情を話してくれるのなら解放しますが……いかがでしょう?」

「……わかりました。少し場所を変えてもよろしいでしょうか?」

「わかりました」


俺はマイトに展開した空気の壁を解くと外にある中庭へと移動した。


「すぅぅぅ……ふぅ…………どこから話しましょうかね」


マイトは深呼吸をした後でそう呟く。


「……あなたは一体?」

「……私はこの城の執事でもありますが、それは私の所属している組織からの指令で行っている事なんです」

「組織……ですか?」

「はい。バリョッサス帝国領土にある組織で、ちょっと名の知れた組織なんですよ?」

「……バリョッサス帝国って確か、あの高い岩壁の向こうにある国でしたよね」

「はい。その通りです」

「それってつまり……スパイという事ですか?」


マイトは少し考えた後、しれっと答える。


「……そうなりますね」

「……」


俺は今までのマイトがライフォードやマリッサとやり取りをしていた事などを思い返していた。

あれが全て……演技だったのか?


「私はこの8年間、組織からの指令通りに暗殺などを繰り返しているんです」

「……そうだったんですね」

「えぇ、先ほどは急に斬りつけて申し訳ありません。目撃者は消す様にしていましたから条件反射で動いていました」

「いえ、それはもう気にしていません。それで、今日もその帰り……という訳ですか?」

「はは、今日は……(あや)める事ができませんでしたけどね」


マイトは乾いた笑い声をあげながら吐き出す。


「……(あや)める事ができなかった? それは一体誰なんですか?」

「マリッサ・エクリエル……マリッサ様ですよ」


一瞬何を言っているのか理解できなかったが、すぐにどういう事なのか理解できた。


「……え!? そうなんですか!? でも何故マリッサがターゲットに?」

「私も分かりませんよ。……何か組織側の思惑があるのでしょう。でも、寝込みを狙い殺める直前で手が止まったんです。……この感情は何なのでしょうか」

「そんなの簡単ですよ。殺すのではなく、守りたいと思ったのでしょう」

「……守りたい?」

「えぇ、お2人を見ていてとても微笑(ほほえ)ましく思っていました。とても深い信頼関係があるんだな、と」

「……そうでしょうか。いつもお姫様の暴走に巻き込まれているとしか思えなかったのですが」


マイトの表情が次第に緩んでいく。


「はは、それでいいじゃないですか」

「……そう……かもしれないですね」


マイトはもう普段のニコニコ顔に戻っていた。

俺はマイトの返答次第で、戦う事も視野に入れていたがどうやら取り越し苦労だったようだ。


「それでアモン様。この事ですが、どうかライフォード様やマリッサ様には内密にお願いしたいのですが……」

「いいですが……条件があります」

「なんでしょう?」

「困った時は相談する事です」

「……へ?」


マイトは気が抜けたような返答を返す。


「要するに、マイトは今回の暗殺指令を遂行しないとなると、何かしら組織からの動きがあるはずです。その時は必ず相談するようにしてくださいね」

「……そんな事でいいんですか?」

「はい。お願いしますね。……あ! それと、お風呂の場所も教えてくれるのも条件でお願いします」

「……ふふ、本当に変わっている方ですね」


お互いに笑い合い、俺達を優しい空気が包み込んだ。




それからもマイトにお風呂場に案内してもらい、一緒に入る事になる。

お風呂に入りながら俺はマイトからバリョッサス帝国にある組織について聞く事にした。


「マイトはいつから組織所属していたんですか?」

「はい。もう10年以上も前の話になりますね。私は幼い頃の記憶はおぼろげでよく覚えていません。誰かとても大切な人と離れ離れになった事だけは覚えているのですが……」

「その人が誰だったのか覚えていないんですか?」

「覚えてないですね。組織に入ってからは暗殺する為だけの技術を叩きこまれましたから、生き残る為に必死だったんです」


マイトは辛い過去なのか、苦虫を嚙むような表情をしながら話す。


「なるほど……でも、何かのきっかけで思い出すかもしれません。そして、その人ともまた会えるといいですね」

「……そうですね。ありがとうございますアモン様」


程なくして俺達はお風呂から上がる。


「それではアモン様、おやすみなさい」

「はい、マイトもおやすみなさい」


軽くお別れを済ました後、俺は部屋に戻ることにした。

部屋に戻った後、再度ベットに横になる。


「……いろんな人間がいるんだな」


俺はそう呟きながら再び目を瞑るのだった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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