イラスト
投稿当時 作中ページに挿絵として乗せていたものを再掲します。
苦手な方は華麗にスルーして頂くようよろしくお願い致します。
第一話挿絵
“彼女にとってその靴は寝物語の中の魔法の靴だった。
きっとこの靴を履けば、自分にも魔法がかかるのだと、半ば本気で考えていたのだ。
ところでこの水晶のビーズがついた靴は、実を言うと少しばかりアデラインには大きかった。
しかし婚約の品として王子から賜ったものを、大きさが違うと返品できようはずもない。
靴は中敷きを増やすことでアデラインの小さな足に、無理矢理調整された。そんな事情があって、実はアデラインの踵はジワジワと痛みを訴えていたのだが、それでもアデラインにとっては大のお気に入りだ。婚約者に会ったら、まず最初に靴のお礼を言おうと決めている。
ルトヴィアス王子はアデラインより2歳年上の10歳。
会うのは今日が初めてだが、正式に婚約が整えば、王子と会う機会も度々あるだろう。
――…仲良くなったら何をして遊ぼう。
アデラインの心は弾んでいた。 人形遊びには付き合ってもらえるだろうか、王家だけが所有を許される天馬は見せてもらえるだろうかと、婚約者との対面をずっと楽しみにしてきたのだ。”
第5話挿絵
“「俺のちょっとばかり立派な見てくれから、さぞやご立派な聖人君子だろうと夢を膨らませてたか?」
「そんな…」
否定しかけて、アデラインは口をつぐんだ
否定は出来ない。
幼い日から10年。神話の中から出てきたようなそれは美しい王子に恋焦がれ続けた日々。才気煥発、優美巧妙、天馬に乗る姿は、まさに神代の聖サクシードの再来だと王子を誉めそやす周囲の言うことを、アデラインは真に受けて期待を膨らませてきた。
「だが現実はこれだ。ざまあみろ」
ルトヴィアス王子の唇が歪み、アデラインを嘲る。
その壮絶な美しさ。
悪魔だ、とアデラインは思った。
人間を惑わし、堕落させ、それを見て高笑いする恐ろしい悪魔。 ”
第8話挿絵
“「すみませんアデライン。今日はこれで失礼します」
ルトヴィアスはさも残念だというふうに美しい顔を歪ませ、席を立った。
「あ、はい。おやすみなさいませ」
アデラインが見送りのために立ち上がろうとすると、ルトヴィアスはそれを制した。
「座っていてください。おやすみなさい。アデライン」
優しく微笑むと、ルトヴィアスは侍官を伴って部屋から出ていった。
――………さすがだわ。
どこからどう見ても、婚約者を気遣う優しい貴公子だ。 ”
第17話挿絵
“「顔を言い訳には、もうしません。確かに私は美しくないけれど…それを補ってみせます。政治も経済も勉強しなおします。公務も、社交も…ド、ドレス選びも…努力します。私が隣に立つことで、二度と貴方に恥はかかせない」
胸の前で固く組んだ両手が、アデラインの決意の固さをあらわすように白くなっている。
「殿下が、この国が、誇れるような立派な妃になります。そしたらきっと、私…自分がそんなに嫌いじゃなくなるから」”
第18話挿絵
“「とりあえず笑え。出来れば俺のことが好きでたまらないって空気を醸し出せ」
「わ、私で大丈夫でしょうか?あの…お付きの女官だと思われないでしょうか?」
アデラインが今日着ている黒衣は、これまでアデラインが着ていた地味なドレスより、更に地味だ。喪服だから仕方がないとはいえ、髪も結局三つ編みだし、女官に間違われる可能性大だ。
ルトヴィアスは微笑んだまま小さく嘆息すると、アデラインの手をギリリと強く握り締めた。
「い?いたっ、い…で、殿下痛…」
「次は鼻だと言ったが、民衆に鼻が赤い婚約者を披露するわけにはいかないからな」
「で、殿下手っ手が…痛いですっ」”
第21話挿絵
“「それこそお前には関係ない」
アデラインの笑顔に亀裂が入る。
「すみません…」
とうとう、アデラインは俯いてしまった。
――…もう、行ってくれ。
ルトヴィアスは拳を握り締める。
早くアデラインに逃げ出してほしかった。これ以上傍にいても、ルトヴィアスの苛立ちをぶつけてしまうだけだ。アデラインは何も悪くないのに。”
第27話挿絵
“ルトヴィアスが舌打ちまじりに毒づく。
「オーリオ一人でも厄介なものを、これ以上増やしてたまるか」
「オーリオが何か?」
小声で、しかも早口だったため、アデラインはルトヴィアスの言ったことが半分も聞き取れず聞き返す。
けれどルトヴィアスが答えてくれる前に、二人の背後に静かな声がかけられた。
「私がどうかなさいましたか?」
アデラインの口から、危うく悲鳴と心臓が飛び出しかける。
「オ、オーリオ!」
「いいえ?何かきこえましたか?オーリオ」
まったく動じた様子を見せることなく、ルトヴィアスは爽やかな微笑みでオーリオを振り返る。
オーリオも、いつもの仏頂面を崩さない。
「左様ですか。私の空耳だったようですね」 ”
第29話挿絵
“「今後、私の婚約者を侮辱する言動をした者は、アデラインが何と言っても王宮から追放する」
「殿下!?」
アデラインは仰天して、ルトヴィアスを見上げた。
「それは…それは私の権限です!」
「貴女が何と言おうと、貴女を傷つける者を私は許す気はない。――自分を含めて」
ルトヴィアスの瞳が、アデラインを至近距離から見つめる。
その切実な色に、アデラインは何も言えなくなった。”
最終話 御礼
“跪いていたルトヴィアスが立ち上がり、長く重い外套を翻して列席者を見据える。祭壇の上の色とりどりの硝子窓から光が差し込み、ルトヴィアスに降り注ぐ。まるで王冠をかぶっているように見えて、アデラインは目を細めた。
「…アデライン・ルトヴィアス・サクシード王太子妃殿下」
アデラインが振り返ると、デオとライルが、アデラインに向かって跪き、剣を捧げていた。そしてミレーも跪き、頭を下げている。
「ご夫君の立太子を、心よりお祝い申し上げます」
深く、彼らは頭を垂れた。”




