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第七十五話 でもやっぱり主人公も大事

「……と、とにかく……何か書かないと……!」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



だが、いつまでもエミの死を悲しんではいられない。

いつしかは前を向いて歩かなければならない。


それはおそらく今だーーーー今しかない。


エミ達がここで生活を強いられるようになったのは、何か原因があるはず……


俺はそれを突き止めるために動かないとーーーー


ここに来た意味がない。



エミに……俺に温かい時間をくれた恩返しをしねえとな……!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「い、いい感じじゃねえかな……?」


最高の修復ではないだろうが、なんとか軌道修正はできたはず……!

これでバルに向けて転送すればいいだけだ!



ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー



三十分後ーーーー転送装置からノートが送られてきた。


もう皆書いたのか……早いな。


「……」


無言でノートを開き、それぞれが書いた物語を黙読していくーーーーーー



ーーーーーーー


ーーーーーーー



恩返ししたいとか思ってもまず何をすればいいのかわからない。


自分はここからどう脱出すればいいのか見当もつかないし、そこまで体力がもつのかも怪しい。



『……確かに……』



でも丁度良い、遂にこのドリルを使う時が来た。



『ド……ドリル……?』



もしもの時に、左手をドリルに改造していたのだ。



『えええええ!! まじかよこいつ!! この主人公初っ端から左手ドリルだったの!? ドリルの手を持ちながらスライムにビビってたの!?』



これで上に向かって掘り進めていけば外に出られる。

遂に異世界の太陽を拝めるのだ。



『いやそこ異世界じゃなく普通の世界! お前が落ちたの異世界に通じる穴じゃなくてマンホール! 拝めるのはいつも上にあった太陽!』



そして必ずや……! この世界を包む闇をこのドリルで穿ってみせる!



『待てええ!! 終わるのはまだ早いいいい!』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「終わったよ! バルの番終わってしまったよ!」


やばいぞ……!

どんどん変な方向に向かって行ってる!


ここでまた修正をかけないと取り返しのつかないことになる!


次はベルフェ……! 頼むぞ! マジで頼むぞ!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



……あぁ、クソみたいだ……


最初は順調に掘り進めていたが……もはや不可能だ。



『え、なに!? なにが起こったの!?』



人間がドリルを使って、上に掘り進んでいくことはできない……

重力があるからだ。



『ここで現実を叩きつけてきたァ!?』



もう項垂れることしかできない……ごめんな、エミ。



『いやさっきまで現実無視してたじゃん! なんで今になって重力とか気にし始めてんの!?』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「終わったんかい! 早えよ! 相変わらずベルフェはやる気なしだよ!」


どうすんだよこれェ!


もうどうあがいてもまともな終わり方しねえよ!

くそったれ……誰か……誰か悲しみの連鎖を止めてくれええ!!!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



いや待てよ……俺の足を思い出せ……


そうだ、俺の両足はーーーーー



エンジンを積んでいるんだった……!



『ーーーーァァァ……カァァァ……ッ!』



エンジンをぶっ放し、その推進力とドリルの掘削力を合わせればいけるんじゃないのか!?

そう思いーーーーーエンジンのスイッチを押し、地上に向かって進んでいった。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「もっと変な絵面になったああああ!!!」

「どうすんだこれ! どう修正していけばいいかわかんねえぞこれ!」


「ていうかこいつ全身魔改造しすぎだろォ! 最初っから全然普通の高校生じゃねえよ!」


これはもうダメだ。

誰がどう付け加えても直すことができない。


次はシウニーだけどもう無理だ……期待しないでおこうーーーーー



ーーーーーーー


ーーーーーーー



十分くらい掘り進めただろうか……俺は新たな空間に出ることができた。

一瞬地上かーー? と期待したがそこはエミとあった場所と大差なかった。


つまり先ほどいた場所と同じだったのだ。



とにかく、やっと足を地面につけることができるーーーーそんな不思議な安堵が体を覆い、俺はエンジンのスイッチを切った。



「おやおや……変な移動手段を持つお方だ……」


「ーーー!?」



後ろから声がしたーーーー耳だけの情報では、優しそうなご老人が頭に浮かんだ。

だがそんな時だろうと、緊張感を保ちつつ顔を合わせなくてはいけないーーーーーーー


なんせここは異世界なのだから。


そう心に刻みつつ、声の主の方向へと振り向くと



「……どうしましたかな? 目が恐ろしいことになっておりますぞ」



姿は俺が思い浮かんだ通り、優しそうなご老人だった。



「ーーーいえ……少し驚いただけで……」


「そうですか……いやはや、ここにも貴方のような格好をしている方がいらっしゃるとは……」



ご老人は悲しげにそう言った。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「すげえ……すげえぞこれは……!」

「結構修正できたんじゃねえか!? 流石シウニー! こういう時は頼りになる!」


次はエリメーーーーー

もしかしたら……もしかしたらあるのかもしれねえぞ!


グッドエンドが!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「……それは、どういうことですか」


「うむ……どういうことなのか……あまり説明はできませんが」

「もうここと地上につながる道は閉ざされたものだと思っていたのです」


「……詳しく」


「ここは単に貧乏人がたどり着く場所ではありません……地上で起きる戦争から逃げるためにここへやってきたのです」

「しかし悪環境すぎるここでは、戦争の飛び火が無くとも死んでいく者もいます」


「……」


「ですから、貴方のような服装をした人は珍しいーーーー皆、布をかぶっていますからね」


確かに言う通り、ご老人も言われた通りの格好をしている。

その下には普通の服も着ているが……


「……そうですか」


「……」

「………なぜか貴方を見ていると、地上の風景が頭に浮かびますな……」



「……決めましたぞ……もう一度私は地上が見たい」

「見て、また平和な日常に戻りたい」


そうご老人は俺に投げかけた。


俺もその言葉に賛同し、改めて地上に向かう決心を固めた。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「すごい! 純粋にすごい!」

「よくあそこからここまで立て直せたもんだ!」


よっしゃ!このままグッドエンドに突入だ!

頼むぞサタン!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



どんな過程でこうなってしまったのだろう……

俺にはわからない。


本当に一瞬だった。


勇は手を合わせーーーー拝んだ。


その手の少し先には、ご老人の写真が



『………なんか見たことあるぞこれ……』



そう、ご老人は死んだのだ。



『ええええええええええええ!!』

『なんでだよ! どこに死ぬ要素あった!?』



どうやら話すことにすべての体力を使ってしまったらしい。



『ひ弱すぎんだろおおお!!』



どうか安らかに眠れーーーーーー



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「ここで終わるんかいいい!」

「なんで立て続けに登場人物が死ぬんだ! サタン人殺しすぎだろ!!」


次俺の番だぞ!

どう書けばいいんだ!


……クッソ……悩んでても始まらねえ……! 覚悟を決めるかしかねえんだ……!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



俺が会った人が連続で死んじまった。

俺は不幸の神とでもいうのか。


やはり糞だな……元の世界も異世界も……

嫌悪感の塊だ。


何のために体を改造したんだ……

何も守れず仕舞いじゃないか。


ーーーまた寂しい一人歩き……そう思ったが……


「よう(あん)ちゃん、なに悲しげな顔をしてんだ?」


前から声が発せられた。

発生源を見るとそれは屈強な男性でーーーー


「ああ、このまま話しかけちゃあ不審者だな」

「俺の名前はクダン、よろしくな」


その男は、俺に握手を求めてきた。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「ーーーーーよしっ……!ここまでいきゃあ十分だろ……あとは待つだけ……!」



ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー



三十分後ーーーーノートが転送される。

それを早速開ける海斗。


どんな続きが書かれているのか……



ーーーーーーー


ーーーーーーー



どんな過程でこうなってしまったのだろう……

俺にはわからない。


本当に一瞬だった。


勇は手を合わせーーーー拝んだ。


その手の少し先には、屈強な男性の写真が



『…………』



そう、屈強な男性は死んだのだ。



『お前もかいいいいいい!!』

『今度こそわからん! どんな過程で死んだんだ!』



名前を他人に明かすことが死に繋がるという呪いにかかっていたのだ。



『呪いかよ! くだらねえ呪いだよ!』



なんにせよ、安らかに眠れーーーーーーー



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「クッソォ……バルもこれかよ……!」


せっかく登場人物を増やしたのにご覧の有様だよ!


連続で読むしかねえ……こういう休憩を挟んじゃダメだ!

速攻で終わらさねえと!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



とりあえず腹ごしらえだ、悲しみに暮れてばかりいては体力も磨耗する。


そう思った俺は、辺りを見回した。

すると目の前に売店が存在していたのだ。



『売店!? 下水道の中に売店あるの!?』



「いらっしゃいませ〜」


元気に挨拶してくる店員ーーーー品揃えも豊富。

かなりいい店を引き当てたようだ。



『引き当てたとかいうレベルじゃねえよ! どうなってんだこの世界!』



まずは食料、腹を満たさなくてはーーーー

俺はおにぎりを二個買った。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



あとは装備が必要だよな……

異世界となればこの先頻繁に魔物と出くわすだろうし、この格好じゃあ戦えない。


そういう訳で店員に、何か装備品は売っていないかと尋ねたところ


「装備品かーーーー装備品ならコン■ームがあるぞ、一個六十円だ」



『そっちの装備じゃねえええええ!!』



俺は迷うことなくコン■ームと呼ばれる装備を買った。

すると店員が


「装備品は手に入れるだけじゃ効果を発揮することはできない、ちゃんとメニューから装備するように」



『最低だよこの店員! 何冒険しようとしてる奴にコン■ーム買わせてんだよ! いや、ある意味それを付けて洞窟の中へ冒険するようなもんだけども!』


俺はそれを装備し、再び地上へ向かった。



『どんなバトンの渡し方だよ!』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



それから十匹程度のスライムが現れ、俺は左ドリルでなぎ払っていった。

コン■ームによるむずむずしさが、あともう少し大きければ負けそうだったが。



『結局コンドーム役立ってないんかい!』



しかし疲れてきた……地上を見るという決心も折れかけている。

なので俺は、その棒を折らないようにするためーーーーその代わりに股間にぶら下がる棒を


道の曲がり角で折った。



『ついに主人公コン■ームと一緒に逝ったアアアアアア!!!』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



もうすぐ未来が見えるはずーーーー

俺はその期待を胸に歩き出す。



『もう見えねえよ! 皆目見当つかねえよ!』



すると前から


「おっす! 見ねえ顔だな! よろしくな!」


と気さくに話しかけてくる男性が現れた。



『お! シウニーがネタを作ってくれたぞ! もうここで畳み掛けるしかねえだろ!」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



俺はその気さくさに腹が立ったので


その男の股間にぶら下がる汚い塔をーーーーー


へし折った。



『エリメエエエエエエエ!!』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



すると男は死んだ。



『サタン適当すぎんだろ! この1行で終わったよ!!』



ーーーーーーー


ーーーーーーー



チクショウ……!

こうなったらなんとか俺が終わらせないと!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



いろいろあったが、俺は地上へ出るという当時の目標を思い出した。

そうなってしまったらあとは簡単ーーーーこの体を駆使し地上へ出る。


遂にーーーー遂にその時がやってきた。

俺は地上へ出ることに成功したのだ!



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「これでいいだろう……!」


なんとか終わらせてくれよ……みんな!



ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー



三十分後ーーーーー


もう大丈夫だろ。

あそこまで書いたんだーーーーあとは終わりに持っていくだけ……



ーーーーーーー


ーーーーーーー



しかしそこはーーーー俺が期待したものではなかった。


見回す限りの荒野。

そこには文明の残り香さえも嗅ぎとることができなかったのだ。



『………?』


なぜだ……なぜこんなことに……

そう思案していると


「……どう感じましたかな……貴方は」


後ろから聞いたことのある声が聞こえた。

その主は前会ったご老人。


「なぜ……貴方が……」


死んだはずではーーーーーそう口に出そうとしたが


「私は人間ではないからですよ」


そう答えてくれた。


人間ではない……それが意味するものが何なのかわからなかった。


「……エミさんが倒したヘドロスライム……と言えばわかりますかな?」


ヘドロスライム……!

ご老人はヘドロスライムだったのか!


「でも、なぜ……爆発四散したはずじゃあ……」


「それは私が答えるわ」


声が増えた。

またしても聞き覚えのあるそれーーーー


見ればエミだった。


エミは驚きの顔を作る俺を放って話し出した。



「ここは人間が支配する世界……貴方と同じような世界よ」

「でも魔物がいる、それだけが唯一の違う点」


「ならばこうなったのも魔物が……?」


「違う、これは人がやったこと」

「この世界の人間がが行き着いた場所がこの有様っていうこと……」


「確かにことの発端は魔物だったのかもしれぬ……だが、魔物の進行に恐れを抱いた国々が我先にと、他国の資源を略奪していった……」

「自国を守るためにな」


「こう聞けばあなたもわかるでしょう……? どう終わったのか」




「そうよーーーー人間は自分達の作り上げた文明を、自分て血で手放す結果になった」

「これが現状、変えられない惨劇」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「私たちはこれをあなたに見せたかった……だから無理矢理こちら側に……ごめんなさい」


「でもな、月見勇……いや、高村海斗」

「人の王はこうなってしまったーーーーーーお前も人の子」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「果たしてお前は、今のままの平和な王でい続けられるか?」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「決して略奪の道を選ばず、自分の道を進めるか?」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「今まで通りの、笑いあえる人間でいられるか?」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「私を助けてくれた時のように、優しいあなたでいてくれますか?」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「ずっと、私達の王でいてくれるかーーーーー?」



ーーーーーーー


ーーーーーーー



「……」


これは決して、物語の中の人物の言葉じゃない。

みんなの言葉なんだろう。


俺が間違った王にならないように、投げかけてきている声なんだろう。


ならば俺は、人間としてーーーー王として書かなくてはならない。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



俺は、そんな王にはならない。



ーーーーーーー


ーーーーーーー



その一文だけを書き記し、転送機に置いたーーーーーー




ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー



翌日ーーーーノートを持ったバル達が部屋に訪れてきた。


「いや〜、良かったですねこれ!」


「あぁ……一時はどうなるかと思ったけどな……」


「うまい具合にまとまりましたね」


みんなが笑う。

こんな風に終わることができて良かったーーーそう思える。


するとバルが



「あ、あと魔王様」















「これ、普通のノートじゃなくーーーー契約書ですからね?」


「…………は?」


契約書……?


「果たしてお前は、今のままの平和な王でい続けられるか?」



「決して略奪の道を選ばず、自分の道を進めるか?」



「今まで通りの、笑いあえる人間でいられるか?」



「私を助けてくれた時のように、優しいあなたでいてくれますか?」



「ずっと、私達の王でいてくれるかーーーーー?」


次々と口に出していく。


「これ全部守ってくださいね」


「………へ?」


「守らないと罰金が課せられます」


「……」
















「またはめられたああああ!!!!」






















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