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第百九十三話 社交辞令は一歩間違えればただの煽り

「あの……本当によろしいのでしょうか。 私達何もできていないのですが……」


現在、昼過ぎーーーー

生活を営むに程よい温もりが舞い降りる時間。

パイモンを合わせた四人は、国へ帰るために城の門前にいた。

それを見送るために海斗を始め、バルやシウニー、ルシファーが出てきていた。


「大丈夫ですよ〜。 感謝の言葉だけで大丈夫ですから。 そういった感情を表してくれるだけでこちらは満足です」


「そうですよ。 何も問題ないです」


パイモンは、この国の魔王である海斗と同衾するという御礼の内容を提案した。

しかしそれを海斗が断ってしまったがために、彼女は悩んでいた。

支援に対し、十分な御礼ができていないのではないか、と。


だがバルとシウニーは、そんなもの心配するに値しないと言い飛ばした。


「本当……でしょうか……?」


「本当です本当です。 支援を受けるのに自分達を犠牲にすることなんてないんですよ。 魔王様に純潔なんて捧げなくていいんですから」


「うん……まぁ、まぁそうだな。 それは間違っちゃいないな、うん」


バルが気に留めなくていいと、言い方を強めた。

ただそれは海斗に遠回しに攻撃しているに同等ーーーーチクリと彼の心にダメージが蓄積された。


「ガチですよ。 こんな男に乙女の純潔を捧げるなんて言語道断。 そんな価値ないです」


「そこまで言う!? 二度に渡って貧乳をいじられたから!? まな板としてのレベル上がったから!?」


傷心し、なんとか自力で癒そうとしたのもつかの間。

今度はシウニーがより強い威力を持った言葉を放ってきた。

チクリとかいうもんじゃない。

破壊光線とかそこらへんの抉られ方だった。


「魔王様に純潔を捧げる価値が無いのは本当のことで置いておくとして、国の管理はしっかりとするのですよパイモン」


「俺としては置いとけないんだけどォッ! 修復不可能なところまできてるよォ!? 俺の心!! 心的外傷一歩手前だよ!!」


そして傷を増させるが如く覆いかぶさってきたルシファー。

海斗にクリティカル、効果は大変な程に絶大だ。


そんなやりとりを見て、パイモンはクスリと笑った。


「はい……国の営みに全力を注ぎます、ルシファー様。 バルバロッサ様もシウニーさんも、そう言ってくださり心が楽になりましたーーーーありがとうございます」


表情は明るく、小さな笑顔を作り出した。

赤い髪色がその顔をより引き立たせている様に思われた。


「魔王様も……優しく接して頂き、感謝の言葉もございません。 身体を委ねても良いと、私は確かに思いました。 流石はこの国を救った救世主です」


その上海斗に対する感謝も忘れなかった。

女神のような彼女の言葉遣いと表情に、海斗の傷つけられた心は幾らか癒された感覚がした。


「ほらァッ! 分かる人には分かるんだよ! 俺の価値が! やっぱりパイモンは違うなァ! ポンコツとかまな板とか!? なにを企んでるか分からん奴とは大違いだわ!」


「社交辞令ですよ魔王様。 大人の対応をして下さっているだけですよ」


喜ぶ海斗。

それを見て、また小さく微笑むパイモン。

なだらかな時間の進みがここにあるようだった。


「我が国も、支援に頼る割合を減らすために食物の研究をしております。 自立を目指し、これからはあまりご迷惑をかけないよう努力しますので、どうか、その時までご協力をお願い致します」


その後、二日間の滞在をお許し頂きありがとうございました、と続け、彼女は頭を下げた。

続き後ろの三人も頭を下げーーーー二、三秒それを保った。


それを最後の別れの挨拶とし、背中を向け、歩き出した。

そして彼女達の進行方向に黒く歪んだ空間が現れるーーーー海斗が人間界から巻きに来る時と同等の移動方法だ。

彼女達はそこを通過し、国へと帰って行った。


海斗は若干の名残惜しさを覚えつつ、それまでの彼女達を見送ったーーーー頭で違う事を考えながら。



ーーーーーーーー


ーーーー



『元天界の住民?』


『はい、その翠仙すいせんという男の魔力と、パイモン女王の国で検知した魔力は同等のもの、だという結果が出ました』


自分が調べた限りでの事実を発したブリュンヒルデ。

さも当然のように、淡々と口から出されたその事実ーーーー海斗はこれを疑う事こそしなかったが、疑問を出してしまった。


何故、元天界という言葉が出てきたのか。


『魔王様は、悪魔は元は天界に住む天使、だったという事は知ってますよね? 『ルシファー』 や『サタン』 などの、今となっては名の知れた悪魔も元は天界の住民です。 これと同じ事ですよ。 その男性も元は天界にいて、現在は魔界に堕ちているという事です』


その疑問を完全に汲み取ったかのように、バルが説明を吐いた。


『で、その検知した魔力は、全体の一部である事も判明しました。 この事より、地中には巨大な魔法陣が組まれていると推測されます』


『魔法陣? そんな大掛かりな事しといてよく少ししか検出されなかったな……!』


『えぇ、私もそう思います。 相手はとても巧みに魔力を使用しているのでしょう。 その国で生活している者でも検知されなかった程ですからね』


一驚する海斗。

魔力を扱えないとはいえ、その巧みさは十分に伝わってきたのだ。

相手の得体の知れない能力に、この部屋の温度が下がったように思われた。


『ただ……相手にも落ち度がありました。 検知された後、私はさらなる情報を追って中央街に行ってみたんです。 すると……ビンゴでした。 中央街の至る所に、その魔力の残滓が存在したんです。 数にすると十五カ所。 これを元に、翠仙という魔力の保有者を割り出せることに成功したんです』


『つーこたぁ、その翠仙の居城は中央街?』


『恐らく……多分、ですけどね。 ただ、これだけ残滓が確認できているのにも関わらず、居場所を把握できていないとなれば……中央街の中にはないのかもしれません』


ヒルデはまだ真実を全て掴み切っていない歯痒さからか、少しだけ悔しそうな表情をした。


『ですが……これが分かってから、連鎖的に新たな事にも辿り着きました。 それはーーーー』


と、同時に、何か希望的な確信を得たようだった。










『あの土地は、元から植物が育ち難い場所では無かったという可能性を示唆している、ということです』



ーーーー


ーーーーーーーー



「……じゃあ、こっちもここを出るか」


「そうですね〜」


彼らはヒルデからの情報を聞き、自分達が及ぶところまで考察していた。

そしてパイモンを見送る前にそれ相応の準備を完了させていたのだ。

訪れた問題。

それを知らずに抱えるパイモン。


彼らはヒルデを呼び出し、中央街へと向かったーーーー


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