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昼休み。私は窓際でぼんやりと外を見ながら溜息をついていた。
「結衣ちゃん~。どうしたの?さっきから溜息ばっかり。」
里穂子ちゃんが隣に来た。今年度も里穂子ちゃんと同じクラスである。どういう確率か倉持君と、林田君も一緒のクラスだ。
「ちょっとゴールデンウィーク中に色々あって…」
「何があったのか三行でよろ。」
「交通事故、彼氏記憶喪失、破局の危機」
「なるほど、わからん。というか聞き捨てならない単語があったね。彼氏って?どういうこと?聞いてないんですけど。秘密とか水臭い。私たちの仲ってその程度?」
里穂子ちゃんには話してないんだよね。彼氏が数か月前までランドセル背負っていたとは言いにくくて。いや、中学生に上がった機会に言おうとは思ったんだよ?ただ先延ばしにしているうちに5月になっちゃって。
「ごめん、ごめん。言いそびれちゃって。相手は里穂子ちゃんも知ってると思うけど、雪夜君。桃花ちゃんの義弟の。今年のホワイトデーに告白されたんだ。」
「えええ?!年下!?」
「ちょっ…声大きい!」
クラスメートがざわざわとこちらに目を向けている。声を潜めた里穂子ちゃんが根掘り葉掘り聞くので出来る範囲で情報を開示する。それから交通事故と記憶喪失とまさかの二股疑惑を話した。それから記憶が戻るまで3人平等の事…
「あのガキ、二股とはいい度胸だな。いっぺん〆る。」
里穂子ちゃんが指をぽきぽき鳴らしている。うう~ん。里穂子ちゃんってこういう性格だっけ?最近以前より逞しくなってる気がする。
「それは何か誤解があるのかもしれないし。あんまり雪夜君を疑いたくない。」
「ふ~ん。で?記憶戻ればいいけど、そうでなきゃ恋人に戻るにはもう一度好きになってもらわなきゃならない訳ねー。」
「うん…でも一年前の雪夜君は私じゃなくて他の人を好きなの知ってるんだ。それに雅さんもあゆみさんも凄く可愛くて美人だし…押しも強くて、私入り込めなさそうって言うか…雪夜君がなんで私みたいなの好きになったのか全然理解できないし。」
「結衣ちゃんこんなにネガティブなキャラだったっけ?調子狂うんだけど…じゃあ諦めるの?雪夜君やめて別の人探す?言っちゃなんだけど結衣ちゃんのスペックならいくらでも別の人探せるとは思うよ?」
別の人か。二宗君の事が頭をかすめた。優しい人だった。格好良かった。でも二宗君から告白された時、その手を拒んだ。私は恋は出来ないと思っていたし、二宗君は私の求めてる人じゃなかったからだ。私が欲しいのは…私が欲しいのは……ひとりだけ。
「……私は雪夜君が好き。雪夜君以外の人なんていらない。雪夜君が私のこと好きじゃなくなっても私は雪夜君が好き。」
里穂子ちゃんがにやりと笑った。
「もう答え出てるじゃん。結衣ちゃんの気持ちが変わらないなら今は不安がる時じゃないよ。戦う時だよ!想い人も他の人も蹴散らしてもう一度雪夜君に好きになってもらわなくちゃ!」
戦う時か。ちょっと弱気になりすぎてたかも。頑張ろう。
「と言っても、結衣ちゃんのこと好きになったって言うならそんなに押しが強い人好きにならないような気がするんだけどね。雪夜君の好みのタイプって聞いたことないの?」
そう言えばバレンタインの時にそんな話をしたこともあるような…確か雪夜君の答えは…
「えーと…私?」
「は?」
「えっと。前に『理想の恋人は?』って質問したことあるんだけど、雪夜君は『今好きな人』って。でもその時雪夜君が好きだったのは私なはずだから…私?」
「私今犬も食わない系の話聞いてる?」
「ごめん。」
「いいけど。なら別に自然体でいいんじゃない?あとはあれだ。結衣ちゃんの必殺技。」
技なんて持ってないけど。特撮ヒーローじゃあるまいし。
「きょとんとしない!料理だよ、特にお菓子!相手の胃袋を掴む!結衣ちゃんの必殺技じゃん。食べた人はメロメロになるし。差し入れは有効だよ。」
う~ん。そんなつもりで料理したことないけど、思い返せば雪夜君に結構手料理とかお菓子食べてもらってるな。ちょっとずつやってみようかな?でも今まで結構「私のお家に来てもらう」というパターンでお菓子食べてもらってたんだよね。記憶が無くなって恋人という関係が疑わしい今、口実が見当たらない。恋人じゃない人を用も無いのに自室に連れ込むのって何げにハードル高い。いっそ場所は例の公園とか?口実になる調理実習とかあれば良かったのに…
「頑張ってみる…」
「おー!頑張れ!あー、私にも恋人できないかなぁ」
ぼやきながらちらっと林田君とじゃれている倉持君を見た。因みに里穂子ちゃんはフリーである。ホワイトデーに倉持君とはいい感じになったらしいが一歩及ばず。恋人には進展していない。倉持君のへたれ。私のドキドキを返せ。ばか。




