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雪夜君は3人に平等に関わると言っていたが、普通に生活していれば私と雪夜君に接点は無い。同じ学校に通ってる訳でもなければ、同じ道場に通ってる訳でもない。私があの二人の間にぐいぐい割り込んでいけるとも思えない。このままひっそりと自然消滅するのかもしれない。そう思ったらちょっと涙が出た。
私の気分とは裏腹に携帯が軽快な着信音を鳴らす。
ドキンと心臓が跳ねた。雪夜君からだ。
「は、はい。」
「結衣、今大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
自室のベッドの上なう。
「どうかした?」
「ん~、別に用がある訳じゃないんだけど。携帯の履歴見てた。毎晩オレからか、結衣からか電話してるよね?それでちょっとかけてみたくなっただけ。迷惑だった?」
携帯の履歴か。雅さんとかあゆみさんとかとも電話してるのかなあ。平等に関わるって言ってたからしてるよね。ウジウジ悩んだって仕方無いけど。
「ううん、そんなことないよ。その……声が聞けて嬉しい。」
さりげなく言ったつもりだったけど声が震えた。
「そう?ありがと。それとね、俺の大事な物入れ探ってみたら結衣の写真が出てきたよ。ファンタジアランドの記念写真。あとメイド服とサンタ姿とドレス姿。可愛かった。メイドさん似合ってるね?これどこかの制服?」
「うん。ルティって言う喫茶店の制服なの。そこでアルバイトしてるんだ。桃花ちゃんも同じ所でアルバイトしてるよ。」
雪夜君は桃花ちゃんのメイド姿見たいんじゃないだろうか。いつも私が桃花ちゃんと一緒のローテじゃない日に来てたけど、本当は見たいはずだ。
「あ、そうなんだ?」
「雪夜君も常連さんだよ。」
「へえ?結衣はいつローテ入ってるの?」
「私は月、火、木の17時~22時だよ。桃花ちゃんは月、金だよ。」
「へー。去年からやってるの?お給料いい?」
「うん。時給高いんだ。なんと時給1100円!ここらでは破格だよ!しかもオーナーも超いい人だし、時々新作の味見させてくれるんだ。それがすっごくおいしいの。オーナーはね、ファッション系のお仕事もしてるんだ。ロマンティック且つドレッシーな感じの服を扱ってるよ。雪夜君が見たドレス姿って言うのも、去年の誕生日にオーナーがプレゼントしてくれた私だけの為にデザインされたドレスなんだよ。」
「オーナーって男?」
「うん。ちょっと癖があるけど。格好良いよ。」
「ふぅん。なんかちょっと…妬けるね?ふふ。でもドレスは凄く似合ってた。オーナー趣味いいね。『オレの誕生日。カワイイ結衣お姉ちゃん♪』って書いてあったって事はクリスマスに着たんだよね?オレと一緒に過ごしてたの?」
「うん。夕方ドレスで学校のクリスマスパーティーにちょっと顔出して、夜は雪夜君が家に来てくれたから一緒にケーキ食べてお祝いしたんだ。その写真は雪夜君がクリスマスプレゼントにくれたカメラで記念に撮ったものだよ。」
「そうなんだ。折角パーティーだったのに俺の誕生日で潰してごめんね?」
「それはもう去年さんざん謝られたよ。でもパーティーで過ごすより雪夜君と過ごす方が何倍も楽しいからいいの。それに雪夜君がこの世界に生まれた年に一度しかない記念日だしね。」
「ありがとう。結衣は優しいね。でもこれ『結衣お姉ちゃん』って書いてあるね。まだ結衣って呼んでなかったの?」
「う…うん。その…写真撮った後、雪夜君もう一つ誕生日プレゼントが欲しいって…それで『結衣って呼んでいい?』って…」
「うっはー。オレ恥ずかしい奴~!」
「もう!そんな事言わないで!すっごくドキドキしたんだからね!」
「ふふっ。…オレも今聞いててドキドキしたよ。」
雪夜君にそんな事言われると胸がきゅうっとなる。雪夜君は鋭い上に掴みどころがない。ごく自然な素振りで私の心をかき乱す。
それから、雪夜君とは話を聞きに来た警察の人の話とかをした。やっぱり雪夜君の所にも行ったらしい。特に収穫は無かったようで、「早く記憶戻ると良いですね」って言われたそうだ。まあ雪夜君の記憶が戻れば私よりはるかに有力な手掛かりを覚えてるかもしれない。
雪夜君の勉強の話も聞いた。一応中学の方には事情があり一部記憶が欠損している旨は伝えたが、雪夜君は小学生6年生一年の勉学に関する記憶もまるっとないらしい。中学で新たに習う事と空白の6年生の勉強で実はとても忙しくしてるそうだ。学校でも知らない人間がさも知り合いのように話しかけてくるから困るとか。実際知り合いなら別に構わないんだが、見ず知らずの者が噂を聞きつけ、友達のふりをして騙すというのが流行ってるらしい。迷惑な遊びである。ただ雪夜君は人の嘘が何となくわかるようなので適当にいなしてるとも言う。
私は月絵先輩が俄然張り切りだしちゃって『愛を取り戻せ!!計画』を持ちかけられている事を話した。指先一つでダウンしそうなネーミングである。月絵先輩は私みたいな妹が欲しいらしく、私達の交際を一番喜んでいた人だ。結構強引な手に出そうで怖いと話しておいた。
「そう言えば月絵先輩も時々ルティに来るよ。」
「…ねえ、結衣。今度ルティに行くよ。出来れば結衣が担当だと良いな。」
「よっぽどの事が無ければ雪夜君の担当はいつも私だよ。」
「それは楽しみ。」
雪夜君が笑った。
私達は夜遅くまで話し込んでしまった。記憶が無くても雪夜君の話はいつも楽しい。




