夏祭り(島崎side)
今回は島崎龍二目線でお送りします
俺は人にどう思われるかを気にして、大事な人を失った。
あれから、後悔をし続けている。
「あなたのせいではない」
いろんな人が、俺にそう言った。
けれど、俺の心が軽くなることはなかった。
俺は他人の目を気にするのをやめた。
他人にどう思われるかを、気にするのをやめた。
大切な人を、大切にできればそれでいい。
必要以上に、他人と馴れ合う必要はない。
そして俺は、1人静かな高校生活を送ることにした。
だったはずなのだが。
いつの間にか、隣に春野つむぎがいた。
こいつも堂々と1人でいた。
俺みたいなやつに、世話を焼いてきた。
そして、俺たちは「1人がラク」と言いながら、2人並んで座るようになった。
お互い口数の多いタイプではないから、わいわい話すわけではないし、お互い黙って黙々と昼飯を食ってる時もよくある。
けど、その沈黙も心地よかった。
「明日から夏休みだねー。島崎くんは何か予定あるの?」
「実家の手伝いするぐらいかな。春野は?」
「美希たちに、今度の日曜の夏祭りに誘われてさ。久しぶりに行ってみようかなって」
「へー、4人で?」
「うん、そうだよ。島崎くんも行く?」
「いや、俺はいいや」
夏祭りか。
浴衣とか着るんだろうか。
あの小林とか言う先輩も行くのか。
その日の下校時。
廊下でだべっている男子軍団から、気になるワードが聞こえてきた。
「小林先輩って2年の?」
俺は、咄嗟に曲がり角に隠れ、耳を潜める。
「そうそう。あの人、女性関係めっちゃ荒れてるらしいぞ」
「聞いたことある。六股してるとか、やりまくってるとか」
「まじ? やべーな」
「俺、今度、夏祭りに女の子紹介してくれる約束してんだー」
「えーいいな。俺にも紹介してほしい」
小林って、春野たちとつるんでるやつか?
いや、でも小林なんてたくさんいるし。
でも、もしそうだったら……
◇◇◇
来てしまった、夏祭り。
あの男子たちが言ってた小林先輩が、春野たちと一緒にいる小林先輩と同一人物かはわかんねーけど、もしそうだったら……
でも、この人混みの中、どうやってあいつらを見つけるか。
適当にぶらぶらしていると、美希が屋台に並んでいるのを見つけた。
隣にいるのは見たことのない女子だが、おそらくあれが春野と同じクラスの佐々木とか言ったっけ。
春野と小林先輩はどこ行ったんだ?
2人っきりでいるのか?
美希とは喧嘩別れみたいになったっきりで、少し気まずい。
声をかけるか迷っていると、美希の方が俺に気づいた。
笑顔で手を振っている。
俺は、そっと近づいた。
「龍二も来てたんだ。1人?」
「あーちょっと近くを通ったから寄ってみただけなんだけどな。お前らは、その、2人で来たのか?」
「むぎちゃんと先輩も一緒よ。ベビーカステラ買いに行ってくれてるわ」
「へー、そっか」
俺は、一呼吸置き、改めて美希の目を見た。
「あと、美希、こないだは怒鳴ってごめん」
「いいえ、謝るのは私の方よ。自分勝手な行動ばかりして、迷惑ってわかっていたのに、本当にごめんなさい。ちゃんと謝らないととは思ってたんだけど、もう話聞いてくれないと思ってたから」
「もういいよ。俺も悪かったから」
美希が少し俯き、呟く。
「龍二は、優しすぎるところが長所で短所よね」
「何?」
「何でもないわ。あ、もしかして、むぎちゃんを夏祭りに誘うつもりだった? 私が先に誘っちゃったから仕方なく1人で来た感じかしら?」
「は? な、なに言ってんだよ。じゃあ俺行くから」
「はいはい、じゃあね」
とりあえず、どうにか自然に2人の居場所を聞けた。
俺は、ベビーカステラの屋台に向かった。
いた、春野だ。
紺色に花柄の浴衣を着て、髪型もいつもと違うから見逃すところだった。
なかなか可愛いじゃん。
ってことは、隣にいるあいつが小林先輩か。
一見好青年に見えるが。
まぁ、見た目じゃ中身はわからねーか。
その時、近くを高校生の男子グループが通りかかった。
「小林先輩、向こうで女子集めて待ってるってよ」
ふとそちらを見ると、あの時廊下で話していた男子たちがいた。
彼らは春野たちの後ろを通り過ぎていった。
やっぱり、小林違いだったか。
ほっと胸を撫で下ろす。
って俺、1人で焦って安心して、一体何してんだ。
春野たちに視線を戻すと、買い物を終え、2人肩を寄せ合い、屋台を後にするところだった。
小林先輩は、悪い奴ではなさそうだ。
そうわかったのに、俺の心は晴れなかった。
次回投稿までしばらく間が開きますが、必ず投稿します。
待ってていただけると嬉しいです。




