第28話 神聖なる冷気と、台無しにされた快感
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第28話は、猛暑に苦しむ魔王領と、駄女神のわがままから生まれた「魔導エアコン」を巡る勘違いコメディです。信徒の感謝を横取りしようとする駄女神と、現実的なオタク魔族、そして相変わらず冷めた目の凛の温度差をお楽しみください!
駄女神が床でジタバタと暴れ泣き叫び、朝から晩までねだり倒した結果、ジト目の凛はついに根負けした。そして、高さ20メートルを誇る女神大聖堂の内部に「温度調整石(魔導エアコン)」を設置してやったのだった。
そしてまさにその日……外はカンカン照りの猛暑、気温38度。あらゆるものをこんがり焼きあげる容赦ない暑さが広がっていた。
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【親切な獣人と、涼しい大聖堂】
魔王領へ食材を密輸してきた例の人間の商人。彼は額から滝のように流れる汗を拭い、絞れそうなほど湿った服を気にも留めず、身体の埃を払いながら辛そうに愚痴をこぼしていた。
「あ、暑すぎる……ちょっと荷物を届けに来ただけなのに、暑さで脳みそが溶けそうだ……!」
近くで警備に当たっていた狼族の魔族兵がその愚痴を聞きつけ、同情の視線を向けながら、街の中央に一際目立つ豪華な大理石の建物を指さした。
「おい商人! 暑くてたまらんのなら、あそこの女神大聖堂に入って休んでいくといい。中はめちゃくちゃ快適だぞ」
人間の商人は眉をひそめて困惑した。(女神大聖堂だと? 魔王城の城下町に女神大聖堂が建っているだと!?)
しかし、命にかかわるレベルの激暑に背に腹は代えられず、彼は慌てて頷くと吸い寄せられるように聖堂の中へと駆け込んだ。
フゥゥゥゥゥン……。
扉をくぐった瞬間、24度に保たれた涼しく心地よい風が商人の顔を直撃した!
全身を包んでいた熱気と汗が一瞬で吹き飛び、まるで真冬の雪山の頂に立っているかのような爽快感が広がる!
商人は荷物を床に放り出し、その場に膝をついて目を丸くした。そして天から授かったかのような感動に打ち震えながら叫んだ。
「な、なんだこれは……!? この神聖なる冷気! 冷たき水蒸気の風! ひ、ひぃぃ……これは絶対に『光の女神様の加護』に違いない! 女神様が信徒の暑さを和らげるために奇跡を賜ったのだ! なんという慈愛に満ちた神よぉぉぉっ!」
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【ライブ配信と、一瞬でぶち壊された快感】
一方、次元の狭間……駄女神の自室にて。
日頃から「信仰感知システム」をオンにしている駄女神の元には、人間が自分を賛美したり信仰したりすると、即座にホログラムのライブストリーミング画面がポップアップする仕組みになっていた。
ピコン!
【システム通知:大聖堂にて、あなたの冷気の加護を賛美する人間を検知しました】
ポテトチップスを片手に画面分割プレイでゲームを楽しんでいた駄女神は、ぴたりと手を止めた!
ホログラム画面を開くと、そこには自分の神像に向かって涙を流しながら必死に祈りを捧げる商人の姿が映っていた。
駄女神は胸を張り、これ以上ないほど誇らしげに鼻を鳴らした!
(フフフン! 聞いたかしら魔王凛! 私の大聖堂の冷気を褒めちぎる人間が現れたわよ! 凛に泣きついて350万金貨もかけて建てさせた甲斐があったわ! さあ、もっと私を讃えなさい! 崇め奉りなさい!)
しかし……駄女神が快感で天にも昇る心地になっていた、まさにその瞬間。
商人の隣のベンチで冷たいお茶を飲みながらくつろいでいたオーク族の魔族が、呆れたような目で商人を見つめ、あっさりと現実を突きつけた。
「女神の加護なんかじゃないぞ」
商人はピクッと動きを止めた。「えっ? なんですって?」
「この涼しい風はだな……そんな女神の加護とかいう大層なものじゃない。魔王凛様が壁に『温度調整石エアコン』を取り付けてくださったおかげだ」
オーク兵は、大理石の柱に取り付けられた青く輝く魔導石を指さした。
場面は再び次元の狭間へ!
駄女神の手からゲームコントローラーがカチャンとこぼれ落ちた! ポテトチップスの袋も床へと転がり落ちる!
駄女神は目を限界まで見開き、顔を青くしたり赤くしたりしながら、一人で抱き枕をボカボカと殴りつけて発狂した!
「キーーーーーーーッ!! この余計なこと言うオークめぇぇぇ! なんでいいところで冷や水を浴びせるのよぉ! あと少しで最高に気持ちよくなれたのに! また魔王凛にいいところを全部持ってかれたじゃないのよぉぉぉっ!」
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【商人の提案と、凛の心の声】
大聖堂にて……オークの説明を聞いた人間の商人は衝撃を受けた!
頭の中で超高速の計算が始まり、その瞳にドルマークが浮かび上がる。彼はすぐさま警備兵に頼み込み、魔王凛との謁見を取り付けた。
魔王の執務室にて――。
人間の商人は、書類に目を通している凛の前に即座にひれ伏し、興奮気味に声を張り上げた。
「魔王様! あの温度調整石……あれを人間の貴族どもに売り出せば、恐ろしいほどの巨万の富が得られますぞ!」
銀髪に二色の瞳を持つ凛は、静かにティーカップを机に置いた。
ジト目(死んだ魚のような目)で淡々と商人を見つめ、表情ひとつ変えずに応じる。
「元々あれは、部下や住民たちが快適に働けるよう、労働福祉基準に基づいた生産効率向上のために設置したものです。売り物ではありません」
紅茶を一口嗜み、凛は心の中で深いため息をついた。
(それに……あれほどエネルギー効率の高い複雑な魔法陣を書けるのは、私とあのゲーム廃人女神の二人だけです……何千個も手作業で量産して売るなんて、やっていられませんよ……)
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駄女神のドヤ顔が一瞬で撃沈するシーンや、相変わらず労働基準と効率を最優先する凛のスタンスをお楽しみいただけていれば幸いです。
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