第26話:女神の結界、魔王の分身、そして無自覚な勇者
勇者レオンの「深読み」と思わぬ行動が、予想外の絆を生み出す!? 200IQの合理的思考を持つ魔王リン、感情が芽生え始めた「分身」、และ自分の気持ちに無自覚な勇者レオンが織りなす、すれ違いと無邪気な恋模様を描く第26話をお楽しみください!
魔王城の執務室にて、白髪オッドアイの少女——**魔王リン**は、浮かび上がる魔法ウィンドウをジト目でじっと見つめていた。
彼女が稼働させているのは【女神の結界(Goddess Domain)】**。本来は自動防衛システムであり、指定された条件——`[自分への脅威]`または`[宇宙への脅威]`となる存在を隔離空間へ引き込み、**「自動生成された分身」が出撃して即座に撃破する仕組みとなっていた。
通常、この結界に捕らわれるのは太古の魔獣や世界を滅ぼそうとするコスミック級の存在であり、リンの分身の手によって数秒で退治されるのが常であった。
しかし……この結界に頭が痛くなるほど頻繁に引き込まれる存在が、ただ一人だけいた。
それが——**勇者レオン**である。
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### **⚔️ 5秒間の戦闘と、日課となった日常**
最初の遭遇で魔王リンに敗北して以来、「歴史上最強の勇者」と称されるレオンは、一度は途方に暮れたものの、決して諦めてはいなかった。
彼は常に魔王の動向を観察していたが、リンの取る行動のすべてが彼を驚かせた。じっくりと考え抜いた末、彼はある疑問の答えを確かめるべく、再び魔王のもとへと向かったのだった。
——*魔王リンは、本当に恐ろしい存在なのだろうか? 初めて出会った時、自分たちを簡単に全滅させられたはずなのに、彼女は誰ひとり殺さなかった……*
だが、彼が城の警戒領域に近づくたび、その巨大な闘気と殺気が自動的に【女神の結界】を起動させてしまうのだった!
*ドォォォン!!*
重なる次元の中にリンの分身が現れ、わずか5秒でレオンを遥か彼方の空へと吹き飛ばす。
翌日も……
*ドォォォン!!*
再び吹き飛ばされる。
さらに翌日も……
*ドォォォン!!*
相変わらず国境の外へと叩き落とされるのだった!
そしてある日、ボロボロになりながらも地面に手をつき、剣を握りしめるレオン。
「くっ……もう一回だ! 俺はまだ負けてない……!」
漆黒のドレスを纏ったリンの分身は、感情の篭もらない瞳で彼を見下ろし、小さく息を吐いた。
「あなたという人は……本当に諦めが悪いですね」
レオンはピクッと体をこわばらせ、驚きに目を見開いた。なぜなら、あの「魔王」が自分に向かって言葉を発したのは、これが初めてだったからだ。……結局はいつも通り、結界の外へと叩き出されるハメになったのだが。
それ以来、いつしかレオンの日課は「城の前で手を振って結界に引き込まれること」になっていた。彼自身、なぜそんなことをしているのか明確な理由さえ分からぬままに……。
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### ** 勇者労働者Sの誕生**
*ピンポン!*
> **【脅威を検出:勇者レオン】**
*ピンポン!*
> **【脅威を検出:勇者レオン】**
*ピンポン!*
> **【脅威を検出:勇者レオン】**
魔王城の執務室にて、リンは途切れることなく鳴り響くシステム通知ウィンドウを前に、額を押さえていた。
(毎日毎日、こんな通知で作業を妨害されるのは不合理的です)
ジト目のリンは深くため息をつくと、自ら結界空間へと足を運んだ。
白い空間の中では、漆黒のドレスを着た分身と、剣を構えたレオンが対峙していた。
「今日こそは勝つ! 来い——」
「待ちちなさい」
背後から響いたリン本人の淡々とした声に、レオンは驚愕して振り返った。
「えっ……二人!? 分身……!?」
リン本人は分身の隣に並び、冷ややかな視線を勇者に向ける。
「あなたが毎時間のように挑んでくるせいで、私の通知が埋め尽くされているのです。どうせ毎日結界に入って私の分身と戦うつもりなら、順番を待つ間に少しは役に立ったらどうなのですか?」
「役に立つ……?」
リンはホログラム画面を呼び出し、建設中のスマートシティ現場の外に積まれた大量の鉄骨とセメントの映像を映し出した。
「あそこにある資材を、ドワーフたちのところまで運んでください」
レオンはホログラムを見つめ、リンを見つめ、再びホログラムを見つめた。
「……それを全部運んだら、あいつと戦わせてくれるのか?」
「ええ」
「よし、やったる!」
即答であった。リンが彼を結界の外の建設現場へと連れ出すと、レオンは嬉々として巨大な鉄骨を担ぎ上げ、現場へと走り出した。
その背中を見送りながら、リン本人は心の中で呟く。
*(……半ば冗談だったのですが、本当にやるとは思いませんでした)*
隣に立つ分身が、ぽつりと呟いた。
「……彼は、なんだか楽しそうですね」
「ただの筋トレ好きな労働者なのでしょう。タダで労働力を提供してくれるなら好都合です」
リン本人は興味なさそうに答え、執務室へと戻っていった。
しかし、誰も知る由がなかった。レオンが一日中鉄骨を担ぎ続けた本当の理由が、労働好きだからではなく……ただもう一度「彼女」に会うための、唯一の方法だったからだということを。
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### ** すれ違いと、紙袋のお菓子**
数日後。夕暮れ時、作業を終えて汗だくになったレオンが結界の前にやってきた。現場の巡回をしていたリン本人が、偶然通りかかる。
「また来たのですか」
「あっ……おう。今日も『お前』に会いに来たんだ」
レオンは照れくさそうに頬をかいた。
リン本人は自分が言われたのだと勘違いし、眉をひそめる。
「私に……ですか? 一言言っておきますが、私は忙しいのであなたと戯れる時間はありませんよ」
「チ、違う! 俺が言いたいのは——」
*スッ……*
リン本人の背後から、分身が姿を現した。
「レオン様がお会いになりたいのは、私のことです、本体様」
「……あぁ、分身の方ですか」
リン本人は納得したように頷き、嫉妬も動揺もなく淡々と言い放つ。
「なら私には関係ありませんね。ご自由にどうぞ」
そう言い残すと、彼女はそのまま素っ気なく去っていった。
レオンは安堵の息を漏らすと、分身に向き直り、小さな紙袋を差し出した。
「これ……街の店で見かけた菓子だ。美味いらしいから、やるよ」
分身は目を丸くして手元の袋を見つめた。
「……私に、ですか?」
「まあな……俺、毎日お前に迷惑かけてるし」
照れ隠しにブツブツと呟くレオン。
分身は不思議そうに菓子袋を受け取ったが、その胸の奥には、今まで感じたことのない温かな感情が静かに広がっていくのだった。
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### ** 胸の中に響く声**
*ドォォォン!!*
分身の一撃を受け、レオンは時間通り綺麗に空へと吹き飛ばされていく!
夕空の彼方へ消えていく彼の姿を見送りながら、分身はぽつりと呟いた。
「明日も……来てくれるでしょうか……」
分身ははっと息を飲み、自分の言葉に困惑した。
*(……私、どうしてそんなことを気にしているのでしょうか……?)*
それが、彼女が自分自身の「心」の存在に気づいた最初の瞬間だった。
——一方、雲を突き抜けて飛んでいくレオンは、風を切りながら一人微笑んでいた。
「明日こそは……絶対に勝ってみせる……!」
しかし、その笑顔の真意が単なる負けず嫌いではないことを、彼自身が一番よく分かっていた。
*(また……あいつに会いたいな……)*
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分身ちゃんに芽生え始めた小さな「心」と、無自覚に彼女に惹かれていく勇者レオン! 本体のリンちゃんが見事なスルーを決める中、二人の不器用な関係が始まりましたね!
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次回もお楽しみに!




