第12話:魔王、ドワーフの工房で即席麺製造機を注文する(※女神の魔法陣を盗用中)
今回はついに魔王城の「食糧工業化」が始動します!
> ゴツい獣人たちでは繊細なギアが作れないと悟ったリンちゃんが向かったのは、頑固者で知られるドワーフの工房。
> 女神から盗んだ(?)知識とスマホの映像でドワーフたちを圧倒する展開をお楽しみください!
リンが即席麺(カップ麺)の自給自足を決意した後のことである。彼女は人口分布図と周りに控える配下たちを見渡し、静かにため息をついた。
(……獣人族の皆さんは貴重な労働力ですが……筋肉モリモリの皆さんに即席麺を作らせたら、小麦粉が粉砕されてただの灰になっちゃいますよね。歯車を組み合わせるような精密工学には、専門の職人が必要です)
リンは図面から目を離すと、玉座の脇に控えていた側近へ死んだ魚の目で問いかけた。
「ねえ……この魔王領に、ドワーフ族って住んでいましたっけ?」
「はっ、魔王様!」
狼人族の側近ガスカルが即座に頭を下げて報告した。
「南方の鉄鋼洞窟に集落を構えております……ですが率直に申し上げますと、奴らは非常に頭が固く、誇り高い連中です。日夜金づちを振るうばかりで、他者と交わろうともせず、誰の指示にも耳を貸しません」
「ふーん……なら、私が直接話しに行きます」
リンは口元をわずかに吊り上げた。
◇
**【魔王フィルター】発動による交渉**
南方渓谷の中央に位置する鍛冶工房。
カン! カン! と響き渡る金づちの音と、炉から立ち上る凄まじい熱気。白髪混じりの灰色のヒゲをたくわえたドワーフの棟梁バーニムは、汗を拭いながら酒を飲んでくつろいでいた。
バァン――!
その時、工房の重厚な扉が押し開かれ、同時に世界を押し潰すような凄まじい威圧感が雪崩のように流れ込んできた!
リンは【魔王フィルター】を全開状態で発動させていた。
静けさを纏って工房に踏み入るその姿。無表情で冷徹な顔立ち、怪しく輝く赤と青のオッドアイ。薄く展開された絶対的な覇気が、周囲の空間を歪ませている。
「お前たち……ここで一番の棟梁は誰だ?」
低く響く声でリンが問う。
頑固さで知られるドワーフの職人たちが、手にした金づちを落としそうになるほど手を震わせた。棟梁のバーニムに至っては「ヒッ」と息を呑み、先ほどまでの傲慢さを一瞬で投げ捨てて恐々とお辞儀をした。
「は、ははっ! 私めにございます、魔王様! 大いなる闇の覇王様が、我らドワーフにどのようなご用命でしょうか……!?」
相手が素直に服従したのを確認すると、リンはあっさりと厳めしい態度を解除した。
そして女神から押し付けられた愛用のスマホを取り出し、あらかじめダウンロードしておいた「半自動即席麺工場の見学ドキュメンタリー(10分)」の動画を再生すると、その透明なガラス画面を棟梁の目の前に突きつけた。
「これ……こういう機械を作ってほしいんです。魔王城用に小型化して。この動画から構造を読み解いて作れますか?」
まるで木製の椅子でも注文するかのような平然としたトーンで言った。
◇
**魔法のガラス板の奇跡**
手のひらサイズの四角い物体に、超高画質な動く映像が映し出されているのを見て、バーニムの目はこぼれ落ちんばかりに見開かれた。
リンは人差し指と親指で画面を触り、「ピンチアウト(拡大)」の操作をして、生地を伸ばすローラー、ベルトコンベア、高速で麺をカットするスリッターの歯車機構を細部まで拡大してみせた。
「お、おおお……祖先様のヒゲにかけて!」
バーニムは思わず頭を抱えて叫んだ。他のドワーフ職人たちも金づちを放り出し、目を輝かせて群がってくる。
「この魔法のガラス板は凄まじい! 拡大鏡も使わずに小さなネジや歯車が一つ残らず見破れるぞ! しかも指で触れるだけで絵が動くだと……!? しかし魔王様、これは一体どのようなカラクリなのですか!? コンベアの構造と刃物の回転周期……まるで創造神の作品のように完璧だ!」
「即席麺の製造機です」
リンは淡々と説明した。
「小麦粉をシート状に伸ばし、スリッターの刃で縮れ麺にしてから蒸し器を通します。その後、高温の油で揚げて水分を飛ばすことで、腐らせずに何年も保存できるようになります」
それを聞いたドワーフたちは目を爛々と輝かせた。
「機械を用いた神話級の食糧保存技術……! なんという深遠な知恵だ!」
◇
**伝説級の素材アレンジとエネルギー改革**
一通り興奮が収まると、バーニムはリンが切り替えて見せる技術図面に目を細めた。画面上の見慣れぬ文字は、主要構造や攪拌タンクに「ステンレス鋼(Stainless Steel)」という水や塩分、酸に強い素材を使うよう指示していた。
バーニムはフサフサのヒゲをこすりながらしばらく考え込んでいたが、やがてドーンと作業台を叩き、伝説の鍛冶屋らしい自信に満ちた笑みを浮かべた。
「魔王様……『すてんれす』とかいう素材は、この大陸には存在しませんな」
バーニムは胸を張った。
「ですがご安心を! 代わりに『魔銀』か『溶岩焼き入れ鋼』を使いましょう! 耐久性に優れ、サビの心配も皆無! なに、我が族の加工技術を用いれば、向こうの鉄とやらよりも高濃度の調味料や魔法圧力に耐えうる頑丈なマシンに仕上げてみせます!」
素材に関しては申し分ないとリンは満足そうにうなずいた。
しかし、ふと一つの疑問が脳裏をよぎる。
(……待ってください。この動画の工場ラインは、高電圧の電動モーターでコンベアと歯車を動かし、蒸気と高熱で麺を処理しています。火力発電所も送電網もないこのファンタジー世界で、一体どこから動力を調達すれば……?)
その時、リンの脳裏にあの身勝手な女神の阿呆面が思い浮かんだ。
以前、女神の空間に閉じ込められていた頃、女神がゴロゴロ転がりながらコンソールゲームに興じ、傍らでスマホを充電していた時の記憶だ。不思議に思ったリンが「遮断されたこの空間で、どこから電気を引いているんですか?」と尋ねた時のこと――
『あはは! 山で拾える低グレードの“帯電石”を使ってるのよ! 変換魔法陣を描いて電圧を安定させれば、直流バッテリーの出来上がり! この世界でこの裏技を使えるのは私だけなんだから~特別でしょ?』
調子に乗っていた女神の言葉。
――リンと女神はスキルやエネルギーのパスが接続されているため、その【電圧変換魔法陣】のコピペなど、PCでファイルを複製するのと同じくらい容易なことだった。
(自分だけ独占してゲームを楽しんでいたようですが……その秘術、魔王領の即席麺工場に活用させてもらいますね)
リンは期待の眼差しを向けてくるバーニムに向き直った。
「素材はその方針でお願いします……それと、コンベアのモーターと熱源ですが、『帯電石』加工コアを使って電気駆動にしましょう。女神が使っていた【電圧変換魔法陣】の図面を描いて渡しますので、それを機械に組み込んでください」
低グレードの雷石から魔力ではなく“電気”を取り出し、機械の動力にする――その発想を聞いた瞬間、バーニムは口をぐうの音も出ないほど開け、ヒゲを震わせて驚愕した!
「家畜の力ではなく、雷の力で歯車を回すだと……!? おののいた……魔王様! これは発明の歴史を根底から覆す神の領域の発想ですぞ! 我らドワーフ族、全力を挙げてこの製造機を完成させてみせます!」
活気づくドワーフたちが大急ぎで道具を準備し始めるのを、リンは静かに見つめていた。
――魔王軍と難民をソジウム(塩分)で魅了する「即席麺帝国計画」。その第一歩が、いま確実に刻まれたのだった。
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> リンちゃん、ついにドワーフたちを味方につけて即席麺の量産化へ!
> (女神様の裏技をあっさりコピペして産業革命を起こすリンちゃん、さすがです笑)
> ドワーフたちの職人魂と、リンちゃんの200IQ(?)なアイデアで動き出した工場計画!
> 果たしてどんなモンスターマシンが完成するのか……!?
> 今回のお話を楽しんでいただけましたら、ぜひ……
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