再会と距離、変わらない心
第二王子アイキム12歳。
王宮では誕生日を兼ねた交流会が開かれ、
各貴族の子女たちが顔をそろえていた。
実際には“婚約者候補を見極める場”でもあり、
華やかな笑い声と計算された視線が飛び交っていた。
令嬢たちは王子の周りに集まり、
会話と礼儀を磨いた姿を見せようと競い合っている。
アイキムは丁寧に応じながらも、
内心ではどこか落ち着かない感覚を抱いていた。
その時――
人の輪の外から歩み寄る姿があった。
淡いドレスをまとった、9歳の公爵令嬢リディア。
瞳は淡く透き通る薄紫色。
貴族令嬢としての礼節は完璧でありながら、
どこか自然体の空気をまとっていた。
「お誕生日おめでとうございます。
この一年が良き日となりますように。」
それだけ告げると、リディアは人の輪をすり抜け、
礼を終えたあとすぐに退場していった。
教会での出来事を思い出していたアイキムにとって――
そのあっけなさは、少し驚きでもあった。
――虚を突かれた。
アイキムは気づいた。
自分だけが、あの日の記憶を色濃く持ち続けていたのかもしれない。
周囲の視線を避けつつ、王子は静かに席を立ち、
リディアの姿を追った。
王宮の庭の一角。
彼女は傷ついた小鳥を手のひらに乗せ、
小さく詠唱しながら治癒を施していた。
聖魔法の光が淡く揺れ、
鳥はやがて羽を震わせて飛び立っていく。
アイキムはその後ろ姿を見て
ほんの少し表情を緩めた。
「……あの日と、変わらない心だ。」
華やかな交流会の中心からは外れた場所。
けれどそこにあったのは、
人を選ばない優しさ――
幼い頃に教会で感じたものと同じだった。




