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君に捧ぐ  作者: ゆのう
14/21

星に願いを

幼馴染視点になります。

折角お祭りに来たのにまだ何も食べていなかったと思い出して、セツに何か食べたい物があるか聞いてみた。

「セツそろそろ何か食べよう?甘いのがいい?肉もあるぞ?」

「うーん…たくさんあるねぇ。どうしよう?イクスが好きなのは?」

沢山の種類の屋台が並んでいてどれを選んでいいのか分からないというセツが俺に聞いてきた。確かにセツは昔から何かを決めたりするのが苦手だったな。と懐かしく感じた。

「ハハッ。そっか、じゃあ俺が適当に買うから一緒に食べるか!」

確か昔も今と同じようなやり取りをしたなと思い出して嬉しくなった。ここにいるのは本物のセツだが、こういうやり取りをすると戻って来てくれたと実感ができて安心出来る。

揚げ物、肉、スープ、甘い菓子、飲み物と持てるだけ色々な種類を買って町の端にある小さな公園まで歩いて来た。ここにはベンチもないし街灯も少なくて薄暗いからか、あまり人はいない。町の中央の広場には沢山の椅子とテーブルが用意されているが、また面倒な町の連中に会うのは嫌だった。

「こんな暗くて寂しい場所でごめんな。そこの遊具に座って食べようか」

「ううん。ぼく人がすくないところの方が好きだよ」

(はぁ、セツのこういう所。好きだ)

今までどうしてセツのこの対応が普通だと感じていたのか、昔に戻って俺は俺を殴りたい。

セツは俺をさり気なくフォローする天才だ。

俺はそれに気づかずに享受してきたが、今はそれがどれだけ恵まれていたのかが身に沁みて分かる。

セツの居なくなったあの日々は本当に地獄のようだった。


少し思い耽ってしまっていたらセツが心配そうに見ていた。

「だいじょうぶ?おうち帰る?」

「ありがとな。セツとこうやって祭りで好きな物を買って食べるのが嬉しくて噛み締めてたんだ。食べ終わったらまた祭りに戻るぞ!セツは疲れてないか?」

「よかった。ぼくはイクスが抱っこしてくれるし、つかれてないよ」

座っている遊具の上に買って来た食べ物を並べた。

「じゃあ、さっさと食べたらまた祭りに行くぞ!」

「フフッ。イクスもおまつりが好きなんだね」

「ああ。セツと二人だけで祭りが見れるなんて最高だ!」

次に何を見ようかと話しながら二人で分け合って食べすすめていった。


「はぁ…ちょっと食べすぎちゃったみたい。くるしい…」

「珍しいな。でもたまにはこういうのもいいだろう。少し休んだらあの人混みに戻るか」

色んな物を少しずつ食べていたら、思ったよりもお腹がいっぱいになっていたらしい。

ペース配分が下手くそなのもたまらなく可愛い。セツは体を起こしているのも辛いのか、遊具にべったりと寝転がった。

「わぁ。ほしがすごいよ!今日は月が出てないからよく見えるね」

セツの隣に寝転びながら空を見上げてみると、満天の星空が広がっていた。

「本当だな。知ってるか?流れ星が見えたら消える前に3回願い事を唱えると叶えてくれるって」

「そうなの!?ながれ星みつけられるかなぁ?」

「俺も探すから、セツも見つけたら教えてくれよ?」

教えている間に消えそうな気もするが、こういうのは教え合うのも楽しい。

「わかった!みつかるといいなぁ」

「セツは何か願い事があるのか?」

「うん。イクスとおじさんとおばさんが幸せになれますようにって」


俺は泣いた。

これは泣くだろう。なんという不意打ちだ。

願い事にセツ自身が入ってないのも気になるが、これが子供の願い事って信じられるか?

俺がセツくらいの時なら間違いなく「1番強くてでっかい虫を下さい」だったに違いない。俺はそういう奴だ。

セツが驚いて体調を心配してきたが、それどころではない。

俺の感情が荒ぶり過ぎている。ゴートが魔法を使った後からセツに対しての感情がどうしても抑えられなくなってしまっている。しばらくセツを抱き込んで号泣していたが、セツは大人しく腕の中にいてくれた。

ようやく泣き止んでセツを見てみると、すっかりと寝てしまっていた。折角祭りに来たのに、俺のせいで最後まで楽しませてやれなかった。

それを謝ってもきっとセツは気にしていないと言うだろう。

明日こそは最後までセツに楽しんで貰おうと心に誓って帰宅した。


翌日俺は昨日のリベンジだと意気込んで祭りに出かけて、片っ端から屋台を制覇していった。食べ歩きながら買い物もして、食べ終われば遊べる屋台でゲームをする。また飲み物を飲みながら食べ歩き、お土産を買ったりと祭りを満喫した。

「どこか行きたい所はあるか?中央で出し物もやってるぞ?」

中央は危険地帯だが、セツが楽しめるなら行かない選択肢はない。

「ううん。ぼくはもうたくさん楽しんだから。おじさんとおばさんにおみやげわたしに行かなきゃ」

セツの頭の中は常に誰かの事でいっぱいらしい。

昔からそこが好きな所であり、不満な所でもあった。

歪んでいた俺はセツに俺の事だけを考えて欲しくて愚かな態度を取り続けたが、もう同じ過ちは繰り返さない。

「セツは優しいな。でもいいのか?今日で祭りは最後だぞ?」

「はやく帰って少しでもおまつりの気分をおじさんとおばさんに分けてあげたいんだ」

「そうか。沢山話す事があるな!きっと喜ぶぞ!」

両手に沢山のお土産を抱えたセツを抱き上げてゆっくりと家路に着いた。

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無限の可能性を秘めた小説!
2024/11/05 21:44 退会済み
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