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藤村晴人の来訪。

夜8時を過ぎたころ、鈴村ひなたの家にやってきた藤村晴人。


アヒルの呪いを解くための第一歩を踏み出します。

晴人はパーカーにスウェットというラフな格好だった。


ひなたは素早い訪問に驚きながらも「いつも思うけど、ラフな格好でも背が高いからかっこいいな。」と思っていた。


「早かったね。」


「ああ、おばさんとおじさんは?」


「お母さんは今日夜勤で、お父さんはまだ帰ってきてないよ。」


「そ、そっか。かけるは?」


「部屋にいると思うけど。」


「あれー?晴兄?どしたの?」


玄関で声がすることに気付いたひなたの弟、駆が自分の部屋から出てきた。


「駆、俺とヒナはちょっと大事な話があるから・・・。」


「え?何?もう別れ話?」


「・・・ちがうよ、駆。進路の話。」


晴人はひなたの顔をちらりと見てから無表情で言った。


「ああ、今月中に提出ってやつか。姉ちゃん悩んでるみたいだもんね。俺、今から下でテレビ見るから、姉ちゃんの部屋で話せば?」


「悪いな、駆。」


「盛り上がんないようにねw」


「駆!」


ひなたは晴人に対する気まずさから黙っていたが、弟の軽口に恥ずかしさが勝り、駆の肩を小突いた。


「ははw でも父ちゃんが帰ってくるまでには帰ったほうがいいと思うよ。最近父ちゃん過敏になってるから。」


「ああ、わかってる。」






ひなたと晴人は階段を上がり、ひなたの部屋に入った。


ひなたの部屋はベッドと勉強机があるだけのシンプルな部屋。


お互いの家の居間にはよく行き来しているが、部屋に入るのは久しぶりだった。


「適当に座ってて。紅茶でいい?淹れてくるね。」


そういって台所に向かおうとするひなたを晴人は止めた。


「いや、いいよ。時間ないから。」


「う、うん。そだね。」


「・・・。」


「・・・すわろっか。」


「ああ。」


晴人はひなたのベッドに浅く腰掛け、両腕を太腿の上に置いて指を組んだ。


ひなたはその横に座った。


「あ、あのね。」


ひなたは晴人の顔が見れず、うつむきながら言った。


「ん。」


「さっき、翔真君から電話きてね。」


「翔真から?」


「うん、ハル君のこと心配してて。」


「俺?」


「うん、様子がおかしかったからって。」


「ああ。」


「でね、ハル君嫌かなって思ったんだけど、ちょっと話してみたんだ。」


「俺たちの事?」


「うん、ごめんね。」


「いや、いいよ。」


「でね、怒られちゃって。」


「翔真に?」


「うん。まずは私の気持をちゃんとハル君に伝えないとだめだって。」


「・・・。」


「私ね、付き合うって決まってからだんだん自分の気持に気付いてきて。」


「・・・。」


ひなたは隣にいる晴人の腕にそっと手を置いた。


「私、自分で思ってたよりもハル君の事が好きみたいなの。」


「は?」


「は?って・・・。」


「あ、いや、やっぱり別れようって話されると思ってたから・・・。」


「ごめん。」


「謝るなよ。不安になる。」


「ごめん。それでね、私、自分から言ったことないでしょ?」


「?」


「ハル君の事、す、」


「す?」


「好きですって・・・。」


「す・・・。」


「は、恥ずかしいね。」


「俺はひなたの事が大好きだ。」


「う、うん。嬉しい。」


ひなたが頬を染めてうつむくと、晴人はそっとひなたを抱きしめた。


「ってことは、俺たち、相思相愛なんだよな?」


晴人がひなたの耳元でささやいた。


ひなたは恥ずかしさで声が出ず、ただ頷いた。


「よ、よかった。」


晴人はひなたには聞こえないぐらいの小さい声で言った。



「ごめんね、不安にさせて。」


「いいよ、もう。好きって言ってくれたから。」


晴人はひなたを抱きしめたままひなたの頭をなでた。


「なんかね、ハル君の好意に付け込むみたいで言いにくかったの。」


「付け込んでいいよ、全然。」


「便乗してるみたいじゃない?」


「俺はしてても全然いい。」


「翔真君に怒られたって言ったでしょ?」


「ああ。」


「ハル君に告白されたから付き合って、自分が遠くに行くから遠距離恋愛するか一旦別れるかはハル君の判断に任せるってのはひどいだろって。」


「・・・。」


「私はね、一度離れてみて、お互いに物理的な距離ができてもお互い好きでいられるかどうかを確認してみたかったの。」


「ん。」


「でね、ああいう風に言っちゃったんだけど。」


「ん。」


「一度も離れないでいると私、ずっと不安なんじゃないかって思って。」


「・・・。」


「でもね、翔真君に言われて気付いたんだけど、ハル君だって不安だよね、私がこんなんじゃ。」


「?」


「はっきり好きとも言えなかったし、別れたくないとも言わなかったし。」


「・・・。」


「でね、私がハル君に、ハル君の事好きって、別れたくないって伝えたら、・・・そしたら私の離れてみたいって気持ももっと理解してもらえるかなって。」


「・・・。」


「翔真君が電話じゃなくて直接顔を見て話さなくちゃダメだって言ってくれて。」


「ヒナが・・・。」


「ん?」


「ヒナが不安なのは俺のせいだよな。俺が口下手で好きって気持ちが伝わりにくいんだろ?」


「あ、ううん、違うよ。ハル君が私を好きって思ってくれてるのは伝わってるよ。けど、その気持ちがいつも近くにいる家族に対して感じる愛着みたいな愛情と恋人としての愛情とは違うんじゃないかって・・・。」


「・・・ヒナ、俺たち相思相愛、だよな?」


「え?う、うん。」


ひなたが返事をすると晴人はひなたの肩を引き寄せそっとひなたの唇にキスをした。


「俺がこういうことしたいと思うのはヒナだけだ。それでも恋人としての愛情じゃないと思う?」


「あ・・・、え・・・と。」


「ホントはもっと色々シチュエーションとか考えてたけど、ごめんな、初めてがこんなで。」


「う、う、ううん。大丈夫。」


「・・・ヒナ、顔真っ赤。」


「は、ハル君だって。」


「初めてのキスだからな。練習とかできてねーし。」


「れ、練習?」


「俺は何でも準備万端で臨みたいタイプだって知ってるだろ?」


「・・・うん。」


「あせって失敗しないかとか色々考えて、もう少し後にしようとか思ってたけど、今、こうするのが一番伝わるかと思って。」


「うん。」


「やべえ。口から心臓でそうだ。」


「うん、私もw」


「・・・何笑ってんだよ。」


「ううん、ハル君の初めてのキスの相手で嬉しいなあって。」


「ヒナだって初めてだろ?」


「うん。私の初めてのキスの相手もハル君で嬉しいよ。」


「ヒナ、俺さ、ヒナがどうしても一度離れてみたいって言うなら離れてみてもいい。」


「・・・ホント?」


「うん、でもさ、別れるのは無理。」


「うん。」


「嫌?」


「ううん、実はちょっとホッとしてる。」


「?」


「もしね、私以外の女の人とハル君が仲良くしたり、お付き合いしたりするんだったら絶対近くにいたくないから、離れている間に試してもらいたいって思ってたけど・・・。」


「ん゛ー。」


「想像してみたら思ってたより怖くなって。しかも、私、ハル君は他の誰かとお付き合いしても最後には戻ってきてくれるって思ってたんだけど、そうじゃない可能性もあるって考えたらね、すごい怖くて。」


「ああ。」


「だから、ハル君が別れないって言ってくれてホッとしてる。なんか、バカだね、私。」


「いや、俺はさ、ヒナが俺以外の男と付き合うとかマジ無理だから。想像するのも無理。」


「うん。」


「俺、離れたら毎日テレビ電話したいって言うかも。」


「うん。」


「月2回ぐらい会いに行くかも。」


「お金もったいないよ?」


「金には変えられないものがあるだろ?」


「うーん、じゃあ、私も長期休暇とかはなるべく帰ってくるようにするね。」


「・・・俺、やっぱ無理かも・・・。」


「あ、でも私合格できないかもいれないし。」


「・・・ヒナ、もう一回キスしていい?」


「・・・うん。」


ふたりはかわいいキスを何度も繰り返した。




二人の意識が現実に戻り、時計を見ると9時を少し回ったところだった。


「あ、俺、帰るな。」


「う、うん。」


「翔真に借り、だな。」


「だね。」


「大好きだよ、ヒナ。」


「うん。私も、大好き。」


晴人はもう一度だけひなたの頬にキスすると


「ヒナの頬、やわらかいな。」


と名残惜しそうに頬を撫でて、立ち上がった。




小田翔真が名付けたこの二人に掛かっている「アヒルの呪い」はキスによって伝わる気持ちで少し、解けたようだった。



翌日、晴人は翔真にしつこくこの夜の事を聞かれ、うんざりするのだが、この日の夜だけは、晴人はもう一人の幼なじみ、小田翔真に感謝したのだった。




まず、初めてのキスをクリアです。


このまま続くとどの程度でR指定なのかとかが不安でちょっと悩んでいます。


とりあえず一度完結として、今後頑張れたらその先に進みたいと思っています。


もしお時間がありましたら今後もお付き合いくださいませ。

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