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腐女子異世界見聞録(改)  作者: 宵月
〇二日目〇
6/6

目覚めですよ



 目覚めは快適、とは言い難かった。昔からパジャマはズボン派できた。理由は単純明確。ワンピースは寝ている内に捲れてしまうから。同様に浴衣も駄目。最終的に帯の所で丸まってるだけの邪魔な代物になってしまう。っていうのを忘れていた。


「うわぁ……肋骨痛い……」


 スマホのアラームを止めて起きれば、裾が捲れたワンピースがアンダーバストの辺りでもたついて跡がついている。自分の体重で押さえつけられていたから、肋骨が圧迫されて痛い……。


 とは言え、それ以外は快適な目覚めそのもの。アラームを切ったスマホは再び電源を切って鞄に仕舞い込む。現在時刻朝の六時。ルートさんが部屋に迎えに来てくれるのが八時だと言っていたから、まだ二時間も有るという事になる。流石に少し早く起き過ぎたかもしれない。だがまぁ、起きてしまったものは仕方ないしね。


 手櫛で髪の毛を溶かして適当にまとめ、クローゼットの前に仁王立ちする。朝食は外で食べると言っていたし、保護局で何時間掛かるか分からない。そうなると動きやすい恰好が良いよね。


 靴は……昨日も履いていたレース柄のスリッポンか、トランクの中の焦げ茶色の革のブーティー。こちらの世界の服装により合う方を選べばブーティーだろうけど、朝食を食べる場所や保護局までどれだけ歩くかも不明だし。スリッポンの方が歩きやすいし疲れにくい。


 じゃあ靴はスリッポンで決まり。スカートは靴が隠せるマキシ丈が理想。マキシ丈、マキシ丈……昨日見た気がするな。クローゼットを開け、ずらりと並んだ服を一枚一枚見ていく。


「あ、これ良いな。ネイビーでフレアスカート」


 その中の一枚、軽やかな生地をたっぷり使ったフレアスカートが目に入る。


 体に合わせてみたら丈もくるぶしくらいまであるし、理想通りってやつですよ。スカートが長い分、トップスは腕が見える長さが素敵かな。


 と、なると……白い綿ブラウス、これにしよう。七分袖のボタンがシェルボタンでキラキラしてて可愛いし。昨日も感じたけれどこの世界の気候は、どうやら穏やかみたいだ。ブラウス一枚でも充分な筈、だけど……カーディガンも羽織ろう。途中で寒くなるかもしれないし。


 ベッドを整えパジャマも畳んでその上へ。干していた下着、昨日着ていた服はトランクに仕舞い、代わりにメイク道具を取り出す。


 昨日は限りなく薄付けのメイクだったけど、今日はしっかり目にしたい。保護局なる役所に行かねばならんのだ。なるべく大人っぽく、理知的に見せたい。ケバくならない程度に、しかしちゃんとして見える様にって……そんなにメイクの腕前良くないので、あくまで私のできる範囲内で、だけどね。


 ドレッサーにメイク道具を広げ、化粧水と乳液を塗り込みながら思案してみる。紫外線の概念が有るかは不明だとしても、紫外線予防は大事なので下地はしっかりと塗っていく。


 ファンデーションはパウダーでふんわりと乗せるだけ。食事したり喋ったりするんだったら、これくらいが丁度良い。


 チークは淡いオレンジで薄っすらと。眉は基本自眉派なので何もしない。アイメイクはマスカラは無しのビューラー有り。アイライン代わりにダークブルーのアイシャドーを睫毛際に。アイホールはクリーム色をメイン、目尻にほんのりとブルーを差し色で。


 リップは唇に馴染むオレンジピンクの色付きリップだけ。


 はい、完了。リップとファンデーション、携帯用のスプレーボトル入り化粧水だけをポーチに入れて、それ以外はトランクにさようなら。


 鞄もルートさんのお姉さんのをお借りしよう。クローゼットの鞄の中から小さな焦げ茶色のポシェットを拝借し、メイクポーチとメモ帳とボールペン、ハンカチとティッシュを仕舞い込んで……現在七時、と。


「あと一時間あるって暇やん……」


 やはり早く起き過ぎた。暇である。


 何の気無しに一度仕舞ったメモ帳とボールペンを取り出す。暫くは意味の無い落書きばかりを書き連ねていたが、ふと思い立つ。


 そうだ、京都へ行こう。じゃない。そうだ、この世界について資料をまとめようと。


 昨日ルートさん達に教わった事。保護局の大まかな役割と成り立ち。服装について。電気は未発達な事。でも魔法のお蔭で家電(この場合は家魔とでも呼ぶべきなのかしら?)が有る事。一日は地球と同じで二十四時間あるって事。


「そういや、一月って何日あるんだろ? 一年は? 季節はどうなんだろう」


 疑問は尽きないし、日本での知識がある分、こっちの世界の知識の覚える量にげんなりしてしまう。若干項垂れつつ丁寧にメモしていき、それが終わると今度こそポシェットに仕舞ってしまう。


 歴史なんかもある程度知らないと困るし、地理なんかも必須だよね。まぁ文字が読めなきゃ文字学習からという小学一年生レベルからのスタートになってしまうわけなんですが。


 あとは算数的なの? 魔法についても知りたいよね。私にも使えたりしないかなー世界が違うと使えないかなー。王政君主国だったら貴族も居るのかな? 貴族と言えば豪華絢爛なドレスだよね!


 大通りでちらほらと見掛けたドレスはバッスルスタイルだった。バッスルスタイルも勿論素敵だけど、エンパイアやアールデコ、ロココも憧れちゃう。因みに私は着たいより、着せたい派です。もっと言うなら描くとか作る方が良い。


 きっとルートさんドレスの貴婦人の隣に並んでも違和感無いんだろうね。いや、寧ろぴったり? 軍服の様な黒いストイックなタイプでも、アニメの王子様が着てるようなタイプでも似合う。絶対。まぁどっちにしても、王道イケメンだったら白タイツでも萌えられると思います。



 ある日、姉のエスコート役で行った舞踏会で出会った、麗しき青年。僕は彼にどうしようもなく惹かれた。その、澄んだ青い瞳に強く焦がれたんだ……。



 みたいな煽り文句のブロマンスが読みたい。同じ貴族の姉弟という関係で仲良くなり、親友になっていく二人。


 最初はただの友人だったのに、いつしか芽生えてしまう、どうしようもない独占欲が。恋なんかじゃない。なのに自分以外の誰かがアイツの隣に居るなんて許せない。


 そんな二人のお話が読みたい。それがメインの話でも良いし、ミステリーでも良い。なにこれめっちゃ萌える。


「セーラさん? ルートです」


「あ、はい!」


「おはようございます、昨日はよく眠れましたか?」


「はい、大きなベッドで寝心地も良かったので、朝までぐっすりでした。あの、保護局に行く時に自分の荷物は全て持って行った方が良いですか?」


「荷物でしたら、置いて行って大丈夫ですよ。鍵は昨日セーラさんにお渡ししたので全てですし」


「ではお言葉に甘えて、荷物置かせていただきますね」


「はい。では行きましょうか」


 昨日入って来た扉から大通りに出る。朝だというのに人通りは相変わらず多いし、道行く人々は皆背が高く、それに合わせて建物も高い。まるで小人気分だ。


 王道イケメンルートさんは私に合わせて歩きながら、昨日に引き続いて色々話してくれる。例えば私の知りたかった月日について。


 時間は二十四時間。一週間は六日。一月は三十日。一年は十二か月。一年の中で季節は四つ。命が芽吹く季節はルビア、暑さを感じるアックマーリ、実りのツァイト、寒さを感じるアメジェスト。日本風に言えば、春夏秋冬ってところか。


 しかしこの国は春と秋が長くて、夏と冬が短いらしい。夏も冬も一月くらいしか無いっていうんだから、とても過ごしやすい国で有難い。


 他にも曜日は色で表していて、週初めから白・赤・黄・緑・青・黒。基本的には黒は休みの日とされているので、商店なんかもお休みの日が多い。


 生鮮食品を扱うお店や飲食店もお休みな場所が殆どなので。青の日と白の日はどこも混むそうだ。買い物するなら黒の日に備えて売り切りたい青の日が値段的にはお買い得で、新鮮な物が欲しいなら白の日。


 これは良いことを聞いた。青の日はお買い得デーなのか。




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