第七話 不思議な世界
この不思議な世界を散策することにしたメジロは、ヨウの肩に乗りながらキョロキョロと周りを見渡します。
建物は平安時代から現代までの外装と内装がゴチャゴチャに混じっていて、人々の服装は着物に似ていますが少しだけ違うデザインをしています。
お店に売っている物も、やはり統一感がないというか色んな時代の物が置いてありました。
「ヨウが住んでいる場所って、見れば見るほど何か不思議な世界だ……」
「ボクからしてみれば、しゃべる鳥にメチャクチャ小さい女の子も不思議な存在だけどね。それにしてもツバキは大丈夫なのか? 最初に出会った時もグッタリしてたけど……」
ツバキは、また激しい頭痛に襲われてヨウの家で休んでいました。
「たしかに心配だけど、少しでも記憶の手がかりを探したい。それがツバキの願いだからな。それで、この世界にしかない物があったら教えて欲しい」
「この世界にしかない物ね〜。そもそも、この場所は向こうの世界に影響されてできたモノだし、そんなに広くもない。……う〜ん。何かあったかな?」
「……お父さん、また鳥さんとお話してるの?」と、一緒についてきたモナカが不思議そうに尋ねます。
「そうそう。鳥さんと話してるんだ。なんか、ここにしかない物を探してるんだってさ」
「それなら、ちょうどいいのがあるじゃん」
「へっ?」
「ほら、あの花畑の花だよ。たぶん、あの花はこの世界にしか咲いてない。お父さんがくれた向こうの世界の植物図鑑を調べてて気付いたんだ」
「あの花畑って、ヨウと初めて出会った場所か。……たしか十九年目の満月がどうとか、花びらが銀色に変わるとか言ってたな」
「ああ〜、あの花か。知らなかったな〜。そういや、名前なんだっけ?」
「陽月花だよ。普段は色がない真っ白な花だけど、太陽か月か、どちらかの浴びた光の違いで別な色に染まるからそう呼ばれてるみたい。……でもこれ、お父さんから聞いたはずなんだけど」
「…………なんか五歳のモナカの方がお前より頼りになるな」
「ははははは。否定できないな。モナカはかなり賢い子なんだよ。ほら、そんなことより花畑に行ってみるか?」
「……でもよく考えたら、ツバキも陽月花の存在を知ってたな。前に来た時、あの花の上に落ちたから。それで何も思い出せなかったみたいだし、無駄足になるだけかも。……やっぱり帰ろうかな」
「いいのか?」
「ああ。ツバキが心配だし、あの場所にいるとツバキの頭痛が酷くなって苦しむから、できるだけ連れて行きたくない」
「……そうか。分かった。それじゃあ、酒とモナカのおやつだけ買って帰るか」
「……酒。お前が飲むのか?」
「当たり前だろ?」
「なあ、ヨウって、いくつなんだ? 前に会った時から数年経ってるのは分かってる。でも、今もどう見ても十六か、十七くらいにしか見えないんだが」
「いくつだったかな〜。まあ、けっこう年をとってることは間違いないよ。……質問を返すようで悪いんだが、そういうお前こそ、普通のメジロの寿命をとっくに超えてるんじゃないのか?」
ヨウの指摘に、メジロは思わず固まります。
「……そうだよな。考えてみればそうなんだよな。オレって本当にメジロなのか?」と、まるで答えを求めるような視線から、ヨウは目を逸らすと静かに言います。
「……けっきょく考えても分からない。何も変わらない。どうすることもできない時、僕ならあえて何も考えない。迷いや悩みに囚われて自分を見失うわけにはいかないからね。守りたいものがあるなら尚更」
「……守りたいものか。そうだな。オレが自分のことでグダグダ悩んだところでツバキの記憶が戻るわけでもないしな」
「そうそう。どっちも心が折れたら共倒れするしかないし何も変わらず終わるだけ。あきらめなければ道は開くかもよ?」




