第十一話 泉か湖
ミヅハとイソラを探しているメジロとツバキは、ヨウのいる世界に来ていました。
出会った場所である泉で長時間、探し続けていましたが、二人を見つけることができませんでした。
途方にくれた二人は、ヨウを頼ることにしました。なぜなら、ヨウの息子の姿が気になっているからでした。
「いまさらだけどモナカも髪は銀色、瞳は金色だったんだよな。出会った時から気にはなっていたんだが、月みたいな不思議な子だって……」
「……そうだね。それにヨウ、そしてミヅキも満月の光を浴びると銀色の髪になるんだよね。あの二人、よく考えたら普段の髪色と瞳はイソラと同じ色だったし、どう考えても無関係じゃないよね」
「……オレたちを騙してるような感じじゃなかったけどな。でも、どっちも不思議なことばっかり言ってたし、わざと話を誤魔化してた気もしてきた」
「なんだか疑心暗鬼になっちゃうね。少しだけ、話をするのが怖い」
「……でも、話を聞くことしか出来ることがないんだよな。何も分からないから」
そのころ、ヨウの家では幼児の姿から十代後半の姿に成長していたモナカが、ちまちまとリンゴの皮をむいていました。
すると、となりの部屋から、青白い顔をしたヨウがやってきました。体の調子が悪いのかフラフラと足取りがおぼつかない様子です。
「リンゴの皮むきに、どんだけ時間がかかるんだよ。モナカは本当にぶきっちょだな」
「ヨウ、うるさい。 ……よし、なんとかウサギができたぞ。これくらいの量で足りるか?」
「ああ、ありがとう。三人で食うには十分だよ」
「……三人ね。また、オレには見えない友達が来るんだな」
「そういうこと。モナカもよかったら一緒に話を聞くか? もしかしたら、お前の本当の親や自分の正体について知ることができるかもしれないぞ」
「……やめとく。オレの親は、ヨウだけでいい。まあ、本当の親がオレに会いたいと思うなら拒絶もしないけどね」
「……そうか」
「それに自分は何があっても自分だし。過去より今が大事。これからもオレは、やりたいことに向かって迷わず突き進むだけさ。ヨウにヘタクソって言われ続けてもリンゴの皮をウサギの形にむきたいようにね」
そう言いながらモナカは、リンゴのウサギをつまむとヨウに屈託のない笑顔を向けた。
「ははは、すばらしい信念だ。さすが教育者を目指すだけあるな。がんばれよ」
「がんばるさー。さてと、ヨウのお客さんがくる前に、オレは今度の授業で使う教材でも買いに行くかな」
「明日が授業日だったか。それにしても勉強に来る子どもたちが増えてきて、この家だと少し手狭になってきたな」
「そうだな。いつかは、もっと大きい建物で授業したいな。まあ、細々と変えていくよ」
「ところでさ、お前って最近、子どもたちにトオノ先生って呼ばれてるよな? なんで?」
「……たぶん、ヨウが発端かな」
「へ? 何かしたっけ?」
「この家に子どもたちが勉強に来るたび、トーヌップ学校にようこそって、いつもヨウが言ってるだろ。それを、子どもたちがマネして言い出してさ」
「ああ! もしかして、子どもたちがトーヌップの発音が言いづらいとかでトオノになったとか?」
「当たり。たしかトーヌップって、別の世界の言葉で意味は湖の丘だっけ?」
「そうそう。向こうの世界の言葉。この家は湖の近くの丘の上に建ってるだろ。だからボクは、そう呼んだわけだ」
「ふーん。まあ、俺もモナカ先生よりトオノ先生の方がしっくりくるから、その呼び名をわりと気に入ってるよ」
「よかった、よかった。……ゴホゴホ」
ヨウが辛そうに咳込む様子に、モナカが心配そうに声をかける。
「……顔色がかなり悪いけど、本当に大丈夫なのか?」
「すぐ治るから大丈夫だって。前にも話しただろ? ボクは老いることも死ぬこともできないんだ」
「……そうは言っても無理するなよ。父さん」
「父さんか~。久しぶりに呼んでくれたな。いつも、そう呼んでくれたらうれしいのに」
「仕方がないじゃん。ヨウの見た目が、もうオレより年下に見えるようになってきたんだから」
「……そうだな。たしかに周りから見たら変に思われるな」
「……じゃあ、そろそろ行ってくるよ。お友だちによろしくな」
「行ってらっしゃい。……あっ! なあ、モナカ。泉と湖だったら、どっちが好き?」
「急に何だ? ……まあ、湖かな。この場所が好きだし」
「そうか、よかった」
「これ、何の質問?」
「んー。特に意味はないよ。モナカの父親は、やっぱりボクだよねって思いたいだけの質問」
「なんか気になるな〜。……泉は水が湧き出る場所。この湖は、その水を入れて溜めた場所。泉が源流って言いたいのか? つまり、オレの本当の……」
「待った! この質問の答えは取り消せません。モナカは湖を選びました」
「はいはい。オレの父親はヨウですよ。ヨシヨシ」
「ううっ。父親としての威厳が……」




