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あの夜の窓辺からお送りします  作者: Tehanu


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3/3

履かなかった靴

 履けなかった靴がある。リボンが付いたデニム地のサンダル。側面はカンカン帽みたいな素材で、5センチくらいの厚底のサンダル。大げさに言えば西野カナみたいな平成のサンダル。靴屋さんに立ち寄った時に、母親が「これ、かわいいじゃん!」と見つけてきて、私も気に入ったので父親に頼んで買ってもらったセール品のサンダル。会計が済んで手元に来た時、本当にドキドキしたのを覚えている。だけど、リユースショップに出す今日この日まで、ついに履くことはなかった。


 なぜか。それは周囲の目が本当に怖かったの一言である。周囲というか、母親の目である。当時の私は女の子らしいことが恥ずかしかった。スカートを履いて、かわいい物を欲しがって、髪を伸ばしたいと言って、母親に反対されることや何か言われるかもしれないことが怖かった。

 初めて恋人ができるとやっぱり女の子らしくなりたくなって、自分のお小遣いで初めてスカートを色違いで二着買った。それも母親に何か言われるのではと怖くて履くまでにだいぶ勇気と時間を要した。


 話を戻そう。そのサンダルについては、厳密にいえば履いてはいた。夜、部屋の中でクローゼットの奥から引っ張り出しては試し履きして部屋を歩き回り、いつかこのサンダルで外を颯爽と歩くことを夢見ていたのだ。

 しかし思い返してみれば、「かわいいね」と共有してくれたのは母親なのだから、きっと何も言わなかったし、何も思うことはなかったのではないか。実際スカートを履いた時も髪を伸ばし始めた時も、特に何かを言われた記憶はない。その呆気なさもあってか、サンダルを手にした時のドキドキが、おそらく初めての公認かわいいへのドキドキが、定期的に、ふいに、今も思い返される。


 履けなかったのか、履かなかったのか。あの頃の私が報われないまま、心の奥でずっとそのサンダルを抱きしめている。

時代と流行が移り変わって、子どもっぽさが残ったサンダル。もっと早くに手放そうと思ってはいたのですが、買ってくれた父親に申し訳なくてずっとクローゼットの奥底に眠っていたのでした。

大人になってついに靴箱に移したものの、なかなか履く機会もなく……。一度くらい履いて出かけてみたらよかったなと今では思います。どんな形であれ、他の誰かの下で輝いてくれることを祈っています。

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