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藤城皐月物語 3  作者: 音彌
第8章 修学旅行 準備編
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338 事前学習

 この日の6年4組の教室はみんな落ち着きがなかった。明日から木・金曜日の二日間、京都・奈良への修学旅行が控えているからだ。授業の間の休み時間になると、みんなの声がいつもより大きく、話す声のトーンもいつもより高くなっていた。

 この日の藤城皐月(ふじしろさつき)は斜め前の神谷秀真(かみやしゅうま)の席のところへ行き、岩原比呂志(いわはらひろし)を交えて三人で京都旅行の話ばかりしていた。

 その際、皐月は秀真の隣の席の栗林真理(くりばやしまり)に後ろの席に移動してもらい、自分の席で受験勉強するようお願いした。真理はいつもならこんな身勝手な頼みごとをすると怒るが、この日は機嫌が良かったのか、文句ひとつ言わずに笑顔で皐月の席に移動した。


 3・4時間目に修学旅行の最後の打ち合わせと事前学習が行われた。

 児童たちは席を移動させて修学旅行での行動班ごとに固まった。皐月たちの班は生活班と同じメンバーなので、給食の時と同じ席の配置だ。

 他の班は京都のどの店で買い物をするかとか、何を買おうかと楽しんでいる中、修学旅行の訪問先の予習をしようと、クソ真面目なことを言い出したのは皐月だ。

 皐月たちの班は全員、向学心が高い。オカルト好きの神谷秀真、鉄道オタクの岩原比呂志、仏像好きの二橋絵梨花(にはしえりか)、文学少女の吉口千由紀(よしぐちちゆき)、学校一の秀才の栗林真理。みんな皐月の提案に賛同してくれた。

 この事前学習は皐月と秀真の主導で進められた。二人ともオカルトが好きだからというのが理由だ。


「じゃあ、今から知識の共有を始めよう。まずは清水寺から。ウィキペディアと公式サイトを開いてみて」

 班のみんなは自分のタブレットで皐月の言ったウェブサイトを開いた。

「調べることは寺や神社の由緒くらいでいいかな。他のことはここで調べる時間がないし、キリがない」

「そうだね。由緒だけでも、突っ込んで調べるととんでもないことになる。最低限の知識だけに留めておいた方が無難かも。神仏のことは僕が現地で話すから」

 皐月の方針に秀真が補足説明した。どうやら秀真はみんなに知識を披露できることで張り切っているようだ。

 秀真は神仏に関して元々知識が豊富だ。皐月も修学旅行に備えてある程度は調べたが、まだ知識の定着度がふわふわしていて心もとない。皐月もこれをいい機会だと思い、神社仏閣や神仏の勉強をしなおそうと思った。


「そういう知識のまとめってAI にやらせたらいいんじゃないの?」

 真理は生成AIに興味があるようだ。皐月も生成AIに興味があるし、家ではたまに使うことがある。

「俺、それやったことある。いい感じにまとめてくれるけど、それじゃあ全然楽しくないじゃん。面倒かもしれないけど、公式サイトを見たり、ウィキペディアで調べたりしてみない?」

「うぇ〜っ、タイパ悪っ!」

 真理が露骨に嫌な顔をした。


「真理ちゃん。周辺情報に面白いことが書いてあるかもしれないよ? 藤城さんの言うようにやってみない?」

 絵梨花が真理を諭すように助け船を出してくれた。真理は昔から皐月の言うことをあまり聞かない。幼馴染同士だと、従った方が負けのような気分になる。

「でも、時間がないじゃない。そりゃ、私だって詳しく調べられるものなら調べてみたいけどさ……」

「だから、情報源を公式サイトとウィキペディアに限定したんでしょ。そういうことだよね? 藤城さん」

「まあ、そうだね……」

 皐月があまり深く考えないで言ったことを、絵梨花は深読みしてまとめてくれた。しかも、自分のことを立ててくれた。こんな気遣いをされると、絵梨花のことを好きになってしまいそうだ。


「まあ、詳しいことは現地に行ってからのお楽しみでいいんじゃないのかな? 僕も皐月(こーげつ)も勉強しておくからさ」

 秀真は真理のキツい言葉に恐れをなして逃げようとしているが、上手いことを言うな、と皐月は感心した。確かに現地で実物を見ながら話をした方がいい。ただし、修学旅行に行くまでに知識を固めておかなければならない。

「そういうわけで、まずは公式サイトに載っている神社や寺の由緒と、ウィキペディアの創建伝承のところを読もうよ。それで、意見や疑問があったらみんなで考えてみない?」

「そうそう。時間がないから、さっさと勉強しちゃおうぜ」

「そうだね……。こんなところで議論しても仕方がないか。じゃあ、読む」

 真理は皐月の示したところを黙読し始めた。真理に続いて他のメンバーも公式サイトとウィキペディアを読み始めた。皐月と秀真はすでに何度も読んでいたので、内容はだいたい頭に入っている。


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