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蠱毒の鬼 -シンギュラリティオブオーガ-  作者: 高美濃四間
第三章 鬼の鼓動
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鬼の城

 その鬼は夢を見ていた。自身は戦士となり両手の『トンファ―』で迫り来るバケモノ共を駆逐していく。トンファ―の切っ先から飛び出すドリルは的確に獲物の心臓を穿った。自らが先頭に立ち、背後には多くの仲間がいる。順調すぎるぐらいの戦果だった。

 やがて、華麗で壮大な城へと辿り着くと、一旦息を整えてから一斉に突入する。城のエントランスで待ち構えていたのは、高級そうな白のスーツを優雅に着こなした銀髪オールバックの青年。その圧倒的な覇気を前に、戦士たちは怯みながらも勇猛果敢に立ち向かう。

 結果、ものの数分で全滅した。


 ……………………………


 薫、雅人、由夢の三人は合流してから敵の城へと向かう。皆、仮面はもう外していた。桐崎の情報ではパークに突入していた飛鳥の部隊はほぼ全滅し、後方の部隊もパークの入口で負傷者の治療に専念しているところだ。

 パークの城は、西洋風の雰囲気で外装は純白に輝き三角の屋根は漆黒。城の頂上には黄色い旗がちょこんと立っていた。入口の扉は、華麗な装飾が施され高さは三メートルほど。雅人がドアノブのボタンを押すと、自動でゆっくりと開き始めた。扉の隙間から内部に滞留していた空気が三人の顔へ叩きつけられる。

 扉が開き内部の光景を目の当たりにした三人は、衝撃に息を呑んだ。解き放たれたのは、生暖かい空気と、血の臭いと、強烈な覇気だった。豪勢に輝くエントランスには、幾多もの戦闘員の死体が転がっている。中央の階段よりも前、大広間の中央で余裕の笑みを浮かべながら立っているのは、真っ白なスーツを鮮血で真っ赤に染めた『亮』だった。その目の前に転がっているは、飛鳥第二班長『新海潤』の死体。


『雅人くんは前、薫くんはその後ろ、由夢くんは柱の後ろへ』


 桐崎が冷静に指示を出す。我に帰った雅人、薫、由夢はすぐに配置についた。雅人は緊張に顔を強張らせながら、不敵に微笑む亮へ問う。


「おい、答えろ。影仁はどこにいる」


 亮は「くくく」と笑いを堪えるように顔を伏せると、肩を小刻みに震わせながら告げた。


「彼は死んだよ」


「ふざけないで!」


 あまりにも軽々しい言葉に薫が叫んだ。眉を吊り上げ憎々しげに睨みつけている。亮は顔の表情を消し薫を見た。


「ふざけてないよ。影仁くんは僕らのリーダーに殺されたんだ」


「てめぇ……」


 雅人が鬼の形相で拳を握りしめた。右腕からは熱気が立っている。薫は顔面蒼白にしながら首を振った。


「影仁さんが簡単に死ぬわけがない……」


「薫の言う通りだ。影仁が死ぬわけねぇ。さっさとてめぇを倒してその軽い口を割らせてやる」


「まったく愚かだねぇ。合理的じゃない。君たちはたった一人のために死にに来たのかい?」


 亮は大仰に手を広げ、大きく口を開けて笑った。


「……うるさい――」


 ――バンッ!


 最初に口火を切ったのは由夢だった。城の扉付近にある柱の影から狙撃した。亮の心臓目掛けて。亮は冷静に手を振り上げると銃弾は軌道を変え天井に刺さった。手の甲で弾いたのだ。同時に雅人と薫も飛び出した。雅人が全力で右ストレートを放つ。亮は慌てることなく両手を重ね雅人の一撃を受け止めた。衝撃が全身を駆け抜けるものの、その一撃は受け切られていた。


「なんだとっ!?」


 雅人が驚愕に目を見開くが、彼は陽動としての役割を果たした。亮の背後で閃光が走る。

 しかし、薫の細剣に斬られる直前に亮は消えた。


「――物分かりが悪いね」


 気付くと、亮は城の入口に立っていた。外から迷い込む風が彼のスーツを揺らしている。


「僕は全能タイプ。全ての能力が特化型と同レベルなんだよ。半端者の君らに勝てるものか」


 亮は瞬時に由夢の目の前に移動すると蹴りを放った。由夢はその挙動を見ることは出来ていたものの、体が追いつかずライフルを盾にすることでダメージを軽減しようとした。だがその威力は想像を絶するもので、由夢は抱えたライフルごと柱を砕いて吹き飛ばされた。


「由夢っ!」


 叫ぶ薫。由夢は奥の壁に叩きつけられ激痛に呻いた。


「――人の心配をしている場合かい?」


 亮の顔は既に薫の目前にあった。慌てて後方に跳び退く。瞬時にかなりの距離を跳ぶが――


「それ、僕の方が速いや」


 亮との距離は1ミリも変わらなかった。薫の腹へ亮の拳がめり込む。手加減されているのか、強い衝撃が走ったものの貫通はしなかった。


「かはっ!」


「野郎ぉぉぉ!」


 雅人が遅れて駆け出すが、亮は既に背後にいた。雅人の後頭部を掴み、床に叩きつける。コンクリートが弾け飛び、雅人の額からドクドクと血が流れ出した。


『雅人くん! 薫くん! 由夢くん!』


 桐崎が必死に叫ぶが、彼らの耳に遠く響くだけだ。亮はエントランスの中央階段の踊り場まで一瞬で跳び上がると、倒れ伏す彼らを見下ろした。そして軽快な笑い声をホールに響かせる。


「滑稽だねぇ」

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